中1男子が「1600万円」を盗んだ昭和の衝撃事件 新潟でスキー、デートクラブ利用、スーツ姿で歌舞伎町サウナの「豪遊ぶり」
1600万円を盗んだ13歳
小学校・中学校・高校における暴力行為の発生件数は12万8859件で過去最多――文科省が発表した令和6年(2024年)度調査の結果から衝撃的な事実が浮き彫りになった。いじめや長期欠席、自死の件数も増加しており、子供たちと教育現場に赤信号が灯っている。
【写真】重大事件続きの80年代…82年には「前代未聞のホテル火災」でパニックに
70年代後半から80年代にかけても、校内暴力と子供たちの非行が社会問題となっていた。暴走族、ツッパリ、「積木くずし」といった言葉が世にあふれていたころだ。当時の大人たちは対応に手を焼いていたが、一方ではスポーツを通じて立ち直る実話など、社会や大人との関係性を再構築して更生する例もあった。

正しい道を説こうとする大人もいれば、食い物にする悪人もいる。40年前とは問題の要因や大人たちの対応も異なるが、環境によって子供の人生が容易に左右される事実は変わらない。1983年、東京で1600万円を盗んだ13歳の事件も、子供と大人の関係を見つめ直す好例だったといえるだろう。その顛末を「週刊新潮」のバックナンバーで振り返る。
(全2回の第1回:以下、「週刊新潮」1983年4月21日号「豪遊『中学1年生』が盗んだ1600万円をめぐる『綺譚』」を再編集しました)
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紺のスーツに黒のサングラス
渋谷区の路上に駐車されていた会社社長の車から、13歳の少年が1600万円の預金通帳と印鑑を盗んだのは1983年2月2日のことだった。社長は6日後の8日、被害にあったことを知って警察署に届け出たが、時すでに遅し。少年は7日、三和銀行新橋支店で全額を引き出していた。
それから1カ月後の3月7日、少年は新宿・歌舞伎町のサウナで補導された。その店のマネジャーによれば、少年が姿を現したのは午前2時ごろのこと。
「紺のスーツに黒のサングラスをかけて手ぶらでした。一目見て中学生と分かるような人は(店に)入れないけど、(少年は)上背があるし気がつかなかった。入浴し、寝に来たという感じでした。ウチは朝10時がラストなんだけど、その時間まで残っていたのは、彼と常連さん4人だけだった」
少年が化粧台に向かってサングラスを外した顔をみて、マネジャーは「おやっ」と思った。「こういうのが来たらすぐ連絡してください」と、新宿署から見せられた写真にそっくりだったのだ。受付の女性にも確認してもらった上で、新宿署に通報した。
「ところが、署の人がなかなか来ない。そのうち少年は帰ろうとする。常連の人に協力してもらって、『鍵がなくなった』とか言って時間稼ぎをしたり大変でした。写真では全くの子供という感じだったけど、その時は髪に軽くパーマをかけて、年齢よりは大人っぽい感じでしたね」
新潟へ3週間近くスキー旅行
警察の捜査は少年が盗んだ1600万円の使途に重点が置かれた。結果、少年は2月8日から25日まで新潟の苗場プリンスホテルと湯沢国際ホテルに泊まり、スキーをしていたことが分かった。少年は宿帳に本名と、前に住んでいたマンションの番地を記入していた。
湯沢国際ホテルのマネジャーによると、
「『東京のドラ息子が、受験疲れかなんかで来たんじゃないかね』と皆で話してたんですよ。しかし、13歳には見えなかった。彫りの深い顔で、身長も170センチちょっと。ガッチリしているし、17、8歳には見えましたね。字もしっかりしているし、おびえているような不審な素振りは全然なかったですね」
ホテル2軒での支払いは合わせて60万円弱。このほか、地元のスポーツ用品店から、ブランドもののスキー板や靴、ストックなどを買い込んだ総額は2、30万円。2月26日の帰京後は高級ホテルに泊まったが、補導された3月7日時点の所持金は15万9000円だった。
さて、1600万円の金は、どこにどう消えてしまったのか――。
少年は「300万円はスキー場で紛失」「1000万円は地下鉄・赤坂見附駅のコインロッカーに入れたが、鍵をなくしてしまった」と供述した。が、警察が問題のコインロッカーを調べると中はカラッボだった。
少年に近づいたデートクラブ経営者
少年がウソをつき、金をどこかに隠していることも考えられる。しかし警察は4月9日、西新宿でデートクラブを経営するAとその妻Bを売春防止法違反で逮捕。歌舞伎町と四谷でデートクラブ2軒を経営するCと、氏名不詳の愛人で通称「ママさん」の2人についても、売防法違反の逮捕状をとった。
警察は、この4人が1000万円蒸発事件と関係があるとニラんだらしい。では、4人はどのようにして少年と接触したのか。
2月28日、新潟から戻っていた少年は、宿泊中の新宿プリンスホテルからCの経営するデートクラブに「女性を紹介してほしい」と連絡し、待ち合わせたデートクラブの女性と一夜を過ごした。少年は翌3月1日にも同じデートクラブに連絡する。Cは先の女性から「金持ちの若いカモがいる」と耳打ちされていたのか、愛人の「ママさん」らとホテルに出かけて少年に声をかけ、買い物に同行するなどして接近した。
「その1日の夜はCのデートクラブで女性の都合がつかず、Aのクラブから回してもらった女性を少年のところに送り込んだんです」
と、さる捜査関係者はいう。その女性は18歳のE。デートクラブの相場は2時間3万円だが、少年はEを20万円で借り切りにした。そして翌2日の朝、少年の部屋にCから電話が入った。
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1000万円を預けたコインロッカーの鍵がなくなった――。第2回【盗んだ1600万円で豪遊の「中1男子」 接近した「夜の世界の大人たち」と「消えた1000万円」の謎】では、Cたちと合流した少年の行動などを伝える。
デイリー新潮編集部
