「実家のことで、話しておきたいことがあって」月収42万円の29歳男性、月収24万円の28歳婚約者から明かされた驚愕事実。その後、〈将来の義兄〉と初対面した食事の席で腰を抜かしたワケ
結婚目前、婚約者に特別な事情があることを知ったとき、そこには想像もしないハードルが立ちはだかります。実例をみていきましょう。
婚約者の実家の秘密
月収42万円、都内のメーカーで働くユウさん(仮名/29歳)は、現在ため息が止まらない日々を送っています。ユウさんは、交際して1年になる婚約者・チカさん(仮名/28歳)との結婚を控え、幸せの絶頂にいるはずでした。チカさんの月収は24万円。都内に勤務先があるので、新居は交通の便がよい都内の駅近マンションで考えています。2人で暮らすにはいいですが、2人とも子どもを何人か望んでおり、将来のためにも固定費はなるべく抑えたいと、物件探しに難航していました。
しかしある日、旅行先を相談していたときのこと。チカさんの口から信じられない言葉が飛び出しました。
「うちの実家、国の文化財に指定されてるんだよね」
国内の歴史的な観光地を提案したユウさんに対し、チカさんはいいました。
「私、古い街並みはお腹いっぱいかな」
冗談かと思い詳しく聞くと、チカさんの実家は、歴史的集落のなかにある、昔ながらの伝統的建造物だというのです。ユウさんは驚きつつも、「すごい! 歴史ある立派な家なんだな」と、むしろロマンチックな印象さえ抱きました。
しかし、そのロマンが絶望に変わるまで、そう時間はかかりませんでした。
義兄との食事会で明かされた、家族の本当の意味
翌月、ユウさんはチカさんの実家を継いでいる長男で、将来の義兄となるシロウさん(仮名/32歳)と都内で食事をする機会を得ました。シロウさんは現在、両親とともにその文化財の家で暮らし、家業の土産物店を手伝っています。
挨拶もそこそこに、シロウさんは疲れた顔で重い口を開きました。
「2人の結婚は本当に嬉しい。ただ、うちの『家の事情』は聞いてるよね?」
ユウさんが「歴史ある素晴らしいお家だと伺っています」と答えると、シロウさんは首を横に振りました。
「観光客が勝手に庭に入ってくるし、洗濯物も外に干せない。でも、そんなのは些細なことなんだ。一番の問題は『維持費』だよ。うちの家、来年どうしても屋根の葺き替えと基礎の修繕をしなきゃいけないんだけど、景観保護のルールで昔ながらの特殊な職人に頼まないといけない。見積もりがいくらだと思う? ……3,000万円だよ」
ユウさんは腰を抜かしました。地方なら戸建てが買える金額です。
「もちろん国や自治体から補助金は出る。でも、全額じゃない。自己負担だけでも1,000万円を軽く超えるんだ。親父も高齢だし、俺一人の稼ぎじゃ到底ローンは組めない」
そして、シロウさんはユウさんの目を真っ直ぐみて、こう言い放ちました。
「チカもこの家で育った家族だ。家を維持していくために、チカにも自己負担分のうち、300万円は援助してほしい。結婚後も、数年おきの修繕のたびに『実家の維持費』として協力してもらうことになると思う。これは、この家に生まれた人間の義務なんだ」
チカさんは気まずそうに下を向いています。ユウさんの頭の中は真っ白になりました。自分たちの月収を合わせても66万円。これから子どもを育て、自分たちの住宅ローンも組んでいこうというときに、住みもしない「妻の実家」の維持費として、数百万円単位のお金をむしり取られ続ける……。
婚約者の実家の事情を自分の両親に相談したユウさん。チカさんと結婚したいという気持ちもありますが、親にも反対され、まだ決断しきれずにいます。
「特殊な実家」がもたらすリスク
「世界遺産」や「文化財」と聞くと素晴らしいものに思えますが、現実の所有者にとっては、経済的にも精神的にも重い負担を強いられるケースが少なくありません。
伝統的建造物群保存地区や世界遺産に指定されているエリアの住宅は、景観を守るために極めて厳しい条例やルールが敷かれています。「屋根の形を変えてはいけない」「現代の安い建材(アルミサッシやスレート屋根など)を使ってはいけない」といった制限があるため、修繕には特殊な技術を持つ職人と材料が必要になり、一般的な住宅の何倍もの費用がかかります。補助金制度はありますが、全額がカバーされるわけではなく、数百万円〜数千万円の自己負担が発生するのは珍しいことではありません。
ユウさんの事例は「実家が国の文化財」という特殊なケースにみえるでしょう。しかし、問題の本質は「維持費がかかりすぎる実家(負動産)」と「家族間での資金援助の強要」です。これは、多くの夫婦が直面しうる非常に身近なトラブルです。
地方にある広大すぎる実家や、老朽化が進む空き家、あるいは親の無計画なリフォーム費用など、結婚相手の実家が抱える「見えない負債」が、新しい家庭の家計を直撃するケースは少なくありません。通常の不動産であれば売却して手放すことも可能ですが、地方の古い家は買い手がつきにくく、結果的に「親族の誰かがお金を出して維持し続けるしかない」という泥沼に陥りがちです。
ここで厄介なのが、「実家を守るためなのだから、離れて暮らす兄弟もお金を出すのが当たり前」という身内ならではのプレッシャーです。今回の義兄のように、実家に住んでいない兄弟に対しても、屋根の修繕費や固定資産税などを「家族の義務」として請求されるケースは珍しくありません。相手が親や兄弟であるため無碍に断れず、結果として自分たちのマイホーム購入や子育てといったライフプランが根底から破綻してしまうのです。
万が一、実家から多額の資金援助を求められたとき、配偶者は「自分たちの新しい生活」を優先するのか、それとも「実家を支えること」に重きを置くのか。これ自体に良い・悪いはなく、それぞれが持つ家族観の違いにすぎません。しかし、この価値観が夫婦間で決定的にズレていると、家計やライフプランに大きな溝を生むことになります。家族愛の裏に隠された「実家リスク」に対し、お互いがどこまでなら許容できるのか。入籍前に腹を割って話し合っておくことこそが、将来の自分たちを守る最大の防衛策といえるでしょう。
