駅のエスカレーターで女性の後ろ姿を盗撮。その場で通報されなかったが、女性は気づいており…後日逮捕される可能性はある?【弁護士が解説】
盗撮は犯罪行為です。たまたまその場で通報されなかったとしても、後日被害者が被害届を出せば、警察から呼び出され、然るべき罰を受ける可能性もあります。そこで、実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」へよせられた質問をもとに、後ろ姿の盗撮と後日逮捕される可能性について、上野仁平弁護士に解説していただきました。
女性や駅職員から声を掛けられることはなかったが
相談者は数ヵ月前に、地元の駅前にあるエスカレーターで、成人女性の後ろ姿を盗撮してしまいました。
その際、女性は盗撮されていることに気づくと、すぐにエスカレーターを降り、すぐに誰かに電話をしていました。
相談者は心配になり、その女性の動向を追っていたところ、職員用の入口から駅構内に入り、その後トイレに入っていきました。その後の行方は分かっていません。
相談者はそのとき、その女性や周りにいた第三者、駅職員から声を掛けられることはなく、自宅へ帰宅しました。
相談者は確かに盗撮したものの、スカートの下にスマホを入れる等の不自然な様子はなく、女性に盗撮した際のスマホ画面は見られていないと思っています。
そこで、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の2点について相談しました。
(1)後日、この女性が警察に被害届を提出する可能性はあるのか。後ろ姿の撮影でも罰せられる可能性はあるのか。
(2)万が一警察から呼び出された場合には、応じた方が良いのか。
盗撮の後日逮捕の可能性…後ろ姿でも盗撮になる
(1)その場では逮捕されなかったが、後日逮捕の可能性はある?
駅のエスカレーターでの盗撮は、通常は各都道府県の迷惑防止条例違反に該当します。
今回の件では、「その場を離れられたのだから大丈夫なのでは」と思ってしまいがちですが、結論からいえば、後日逮捕される可能性はあります。
重要なのは、「現行犯でなければ逮捕されない」というわけではない点です。特に駅構内は防犯体制が整っており、エスカレーター周辺や改札付近には多数の防犯カメラが設置されています。
今回のように、被害女性が盗撮に気づいている場合、後日になってから駅員や警察に相談するケースは少なくありません。その際、防犯カメラ映像を基に行動を追跡し、人物を特定することが可能です。被害届も「その場でなければ出せない」というものではなく、数日後、場合によってはそれ以上経ってから提出されることもあります。
捜査が進めば、警察から任意出頭を求められたり、証拠が十分と判断されれば後日逮捕に至ることもあります。また、防犯カメラの確認過程で余罪が発覚し、事態が深刻化するケースも実際に見受けられます。
(2)後ろ姿の撮影でも盗撮になるのか
盗撮事件の相談で非常に多いのが、「後ろから撮っただけ」「顔は一切写っていない」という弁解です。しかし、盗撮かどうかの判断基準は“顔が写っているか”ではありません。
判断のポイントは「どこを・どのような意図で撮ったか」です。多くの都道府県の迷惑防止条例では、正当な理由なく、性的な部位や下着等を撮影する行為を処罰対象としています。
そのため、
●スカート内
●下着や臀部、太ももを強調するようなアングル
●エスカレーター下方からの撮影
といった場合は、後ろ姿であっても盗撮に該当する可能性があります。
実際の捜査・裁判でも、「後ろ姿しか写っていない」「顔が特定できない」という点は、違法性を否定する理由にはなりません。スカート付近が撮られているなど性的意図を感じさせるような撮影態様は、迷惑防止条例違反で処罰される可能性があります。
(3)万が一警察から呼び出されたら応じるべき?
万が一警察から呼び出された際は、「すぐに応じる前に“一度立ち止まる”べき」です。=何も考えずにそのまま出向くのはおすすめできません。盗撮事件では、いきなり逮捕ではなく「お話を聞きたい」「任意で来てほしい」という形で警察から連絡が来るケースが多くあります。
この「任意」という言葉、実はかなり要注意です。警察の呼び出しが「任意」でも、供述内容やスマートフォンの中身次第でそのまま逮捕に切り替わる可能性はあります。実際に、任意で呼ばれ、その日のうちに逮捕というケースは珍しくありません。
一方で、「怖いから行かない」「無視すれば何とかなる」と考えるのも危険です。呼び出しを無視し続けると、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断され、任意ではなく、逮捕という強制手段に切り替えられる可能性が高まります。
重要なのは、出頭するかしないかを独断で決めないことです。警察の要請に応じる前に、まずは刑事事件に強い弁護士へ相談してください。弁護士がみれば、本当に出頭すべきか、出頭する場合はどのような対応を取るべきか、どこまで話すべきかを事前に整理できます。
また、逮捕を回避するための意見書提出や、在宅事件として扱ってもらうための調整が可能になることもあります。取調べに同行してもらうことも可能でしょう。
警察から呼び出されたという事実だけで、結果が決まるわけではありません。他方で、最初の対応を誤ると、不利な証拠を作成したり、余罪を自白してしまったりなど取り返しがつかない結果につながるのも事実です。冷静に状況を見極め、専門家の助言を得たうえで行動することが、自分の身を守るうえで何より重要だといえるでしょう。
盗撮をしてしまったときに取るべき5つの対策
盗撮行為は、たとえ一度であっても刑事責任を問われる可能性があります。
「見つかっていないかもしれない」「その場では何も起きなかった」そう感じていても、後日になって捜査が進むケースは少なくありません。
万が一、盗撮をしてしまった場合、以下の5つの対策が挙げられます。
〇態を軽く考えない
まず重要なのは、「大したことではない」「初犯だから大丈夫」と自己判断しないことです。
盗撮は迷惑防止条例違反や撮影罪として、逮捕・起訴の対象となる犯罪です。特に駅や商業施設など防犯カメラが多い場所では、後日特定されるリスクが高く、軽視することが最も危険な対応といえます。
SNSや周囲に相談しない
不安から、匿名掲示板やSNS、知人に事情を打ち明けてしまう人もいますが、これは避けるべきです。不用意な発言がログとして残り、後に不利な証拠として使われる可能性も否定できません。相談先は、信頼できる専門家に限定する必要があります。
7抻,ら連絡が来る前に弁護士へ相談する
盗撮事件で最も重要なのがこの点です。警察から呼び出されてから動くのではなく、連絡が来る前の段階で弁護士に相談することで、逮捕回避や在宅事件としての処理、不起訴を目指した対応が可能になります。初動で弁護士が関与できるかどうかは、結果を大きく左右します。
ぜ萃瓦拌弍は「準備なし」で臨まない
警察から任意出頭を求められた場合、何も考えずに応じるのは危険です。供述内容やスマートフォンの扱いを誤ると、余罪が発覚し、状況が一気に悪化することがあります。出頭の要否、話す範囲、提出物の対応などは、事前に弁護士と方針を決めたうえで対応すべきです。黙秘することも重要な選択肢です。
ゼ談交渉を積極的に検討する
不起訴処分を獲得するうえで重要視されるのが、示談の成否です。盗撮には被害者とされる女性がいます。たとえば酒に酔っていて加害者の方が出来事を覚えていない場合でも、被害女性の被害申告や防犯カメラ映像等によって有罪立証は可能になります。記憶にはないけれど、どうやら自分が盗撮をしたようなので謝りたいという形の示談交渉もあり得ます。そして示談が成立した場合には、被害者である女性が刑事処罰を望まないと言ってくれているわけですから、検察官としても不起訴処分を下しやすくなります。認める(自白)か否認するかにより示談の目的や内容は変わりますが、積極的に検討をした方が良いポイントです。
盗撮をしてしまった場合、事態を軽視せず、感情的に動かないことが重要です。警察対応や初期供述を誤ると状況は悪化します。早期に刑事事件に強い弁護士へ相談し、適切な初動対応と再発防止の姿勢を示すことが、結果を大きく左右します。
上野 仁平
JIN国際刑事法律事務所
弁護士
