鳥栖を率いる小菊監督。フィロソフィーを貫き、勝利に近づくためのアップデートを模索する。写真:河治良幸

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 サガン鳥栖で2年目の指揮。小菊昭雄監督は何を積み上げ、結果として示そうとしているのか。

「内容」と「勝利」を分けて考えるのではなく、両者を同時に高める道を選び続ける覚悟にある。J2に降格して1年目の昨シーズン、大半の選手が入れ替わるなかで、小菊監督はチームの成長と昇格という二つのタスクに向き合った。

 独特のビルドアップでボールを保持しながら、ゲームの主導権を握っていくのが鳥栖のスタイルだ。その観点で評価すれば、上位対決でも互角以上の内容を見せることが多かった。しかし、そこに十分な結果が付いてこなかったのが現実だ。鳥栖は最終的にリーグ8位で、自動昇格はおろか、昇格プレーオフに回る6位以内に入ることもできなかった。

 ベースで相手を上回るクオリティと勝負の際(きわ)での強さ。「両方大事だと思うんですけど...」と前置きしながら、小菊監督は「いろんな選手を獲得するのに、スタッフと一緒に話をさせてもらって。彼らに伝えたのはとにかく、良いフットボールをして勝ちたい。内容は1つ置いて、勝点だけを取りにいくという考えもありますけど、サガン鳥栖という育成クラブで、そこは私の哲学も含めて外したくない」と主張する。

 もちろん、それで結果が出なければ応援側のストレスは溜まるし、結果としてクラブの目標を逃すことにもなりうる。だからこそ、自分たちの哲学でブレることなく、より勝利に近づくためのアップデートを模索しているのだろう。

 そのトリガーになりうるのが、より流動的なビルドアップの構築だ。昨シーズンに鳥栖は3−4−2−1システムをベースに軸を固めて、安定したボール運びとチャンスメイクを実現した。
 
 自分たちの戦い方として共通理解がしやすかった分、相手側も対策を立てやすいところはあり、夏場に二巡目の対戦が進んでくると、マンツーマンの守備で鳥栖の起点を潰しにくるチームが増えた。

「それを上回れなかった」と小菊監督は素直に認めるが、自分たちのフィロソフィーを変えることなく、現状を打破していくための戦術プランに、新シーズンのキャンプから取り組んでいるという。

「新しいシステムにトライしながら、3なのか、2なのか4なのか。そこから寄るのか、離れるのか。中に入っていくのか。相手から捕まえにくくなる、そういうモビリティを多くしながら、一人ひとりのサッカーIQを高めていく」

 そう語る小菊監督が選手たちと一緒に目ざしているスタイルは、決して簡単なものではない。だからこそ、やりがいがあるトライとも言えるだろう。

 鳥栖は毎シーズン、選手の入れ替わりが大きいクラブだが、小菊監督が1年間で作ってきたベースは残っており、そこに期待の新戦力がプラスアルファを加えることが期待される。

「彼らと一緒に成長したい、このフットボールにトライしたい。そういう波長が合う選手たちが来てくれた。そういう選手たちが切磋琢磨して、同じスタイルを磨いていく。極めていくというのは本当に、彼らの成長スピードを上げるのにもすごく大事なポイントだと思います」と、小菊監督は目を輝かせる。
 
 小菊監督にも1つ“誤算”があった。新川志音の海外移籍だ。昨年は高校3年生ながら、2種登録選手として目覚ましい活躍を見せた新川は10月にプロ契約。小菊監督は半年間の百年構想リーグに向けて、ジョー、鈴木大馳、酒井宣福、そして新川を前線のスカッドとして構想していた。

 しかし、年明けにチームが指導する直前の5日に、海外クラブへの移籍を前提としたチーム離脱がリリースされ、後日、ベルギー1部のシント=トロイデンへの移籍が発表された。

「新川が評価されて、夢を現実にして、もうこれは本当に嬉しいこと」。小菊監督はそう語るが、アタッカーに関しては今いる選手たちのパフォーマンスを見極めながら、同時に2026-27シーズンに向けた、補強の道も探っていくことになる。