記事のポイント
ジャネッサ・レオネは初のハンドバッグ投入で急成長を遂げ、ブランドの新たな柱を確立しつつある。
価格疲れが進むラグジュアリー市場では、価値観に共鳴する独立系ブランドへの回帰が起きている。
サブスタックや文化的発信を通じ、アルゴリズム依存から距離を置くブランド戦略が広がっている。


ハンドバッグ分野に参入する以前、ジャネッサ・レオネ氏は、ミニマルな帽子やレザーグッズを軸とした同名アクセサリーブランドで知られていた。2013年に創業し、ロサンゼルスを拠点とする同ブランドは、建築的なシルエット、素材への配慮、デザイン言語を武器に、トレンド主導型ブランドとは一線を画すスローファッションの思想で熱心な支持層を築いてきた。

2024年9月に発表した初のハンドバッグコレクションは、10年以上ぶりとなる大きなカテゴリー拡張だった。レオネ氏が期待していたのは「関心」程度であり、ブレイクアウトではなかった。しかし実際には、バッグがビジネスそのものを塗り替えた。

「とくにハンドバッグは際立っている」と、レオネ氏はGlossyに語った。「2024年は前年比で売上が約200%成長した。2025年のホリデーシーズン後には、それを上回るだろう」。

「レオネ」を柱に、スケールとクラフトマンシップの両立へ



12月ローンチしたヒーロースタイル「ザ・レオネ(The Leoné)」により、レオネ氏は、需要に応じて拡張でき、なおかつ職人技を犠牲にしない恒久的なブランドの柱を確立しようとしている。2026年に向けても、同氏は再び3桁成長を見込んでいる。

新作ハンドバッグは、ふた型のみで、それぞれ3色展開だが、D2Cチャネルおよびニーマン・マーカス(Neiman Marcus)やモーダ・オペランディ(Moda Operandi)といった卸し先で2度完売した。モーダ・オペランディでは、2色が48時間以内に完売している。生産数量は非公開としたが、少量生産の方針を強調した。

価格は1500ドル以下(約22万5000円)で、名門ラグジュアリーハウスと同じイタリア・ヴェネト州の工場で製造されている。価格疲れが進む市場において、現実的で地に足のついた選択肢を提示している。

この勢いは、より大きな市場の変化を映し出している。大手ブランドが価格を極端に引き上げるなか、消費者は価値観の合う小規模ブランドへと目を向けはじめている。たとえばシャネル(Chanel)のクラシック・フラップは、2019年以降で価格が2倍以上に上昇し、5120ドル(約76万8000円)から11320ドル(約169万8000円)にまで達した。

ベイン(Bain)とアルタガンマ(Altagamma)の「2025年ラグジュアリーレポート」で、ベインのパートナー兼ラグジュアリー部門グローバル責任者を務めるフェデリカ・レヴァート氏は、「ラグジュアリー業界は過去2年間で7000万人の顧客を失った。これは顧客基盤の20%以上にあたる」と指摘した。

「非常に裕福な顧客でさえ不満を抱いている。ブランドが提供する創造性、製品に内在する価値、支払う価格とのあいだに、納得できる方程式を見いだせていない」。

10月14日、LVMHは第3四半期決算で、ファッション・レザーグッズ部門が実質ベースで2%減だったと報告した。最高財務責任者のセシル・カバニス氏は、「価格は第2四半期と大きく変わらず、ミックスもおおむね中立的だった」と述べた。プラダ(Prada)では、CEOのアンドレア・グエラ氏が決算説明会で、「最悪期は脱したが、過去10年に見られた成功が近い将来に再現されるとは思わない」と語っている。

トレンド拒否と「誠実な価値」の再構築



レオネ氏は、その失われた方程式を取り戻すことを軸にブランドを築いてきた。

「トレンド主導のことは一切しない。意味のあるデザインと品質にすべてを集中させている」。未加工のレザーを使い、すべての縫製が露わになる設計だ。「粗悪な職人技をごまかす場所はない」と同氏は語る。流通も意図的に絞り、「誠実さを保ち、ストーリーテリングを支える」ためだ。

ローンチにあたり、レオネ氏は敬愛するアーティスト--写真家のソニア・ショスタク氏、クリエイティブディレクターのアマンダ・シャドフォース氏、スタイリストのローラ・ストロロフ氏、写真家のアッシュ・ロバーツ氏--と組み、彼らのSNSでプロモーションを展開した。このキャンペーンにより新規顧客を獲得しつつ、年間のリピート率は43%を維持している。

メティエ(Métier)の台頭も、独立系ブランドの機会を裏付ける。同ブランド創業者のメリッサ・モリス氏は3月、Glossyポッドキャストで、「極限の精度を持つイタリア職人としか仕事をしない。これは絶滅危惧種だ」と語った。顧客は「本物のラグジュアリーと本物の品質」を見抜くようになっているという。

メティエのバッグは、「サクセッション」、「ジ・アンドゥーイング」、「インディ・ジョーンズ」といった作品に自然なかたちで登場してきた。2025年にはニューヨークに米国初店舗を開設し、ロンドン旗艦店に加え、米国内で2〜3店舗の追加を計画している。ニューヨーク・タイムズでは「エレガントな機能性」が評価された。主力商品には、ヴェリテ・シティ、プライベート・アイ、インコグニートがある。

両ブランドに共通するのは、職人技と工場との緊密な関係が、あと付けではなく基盤である点だ。

「感情はあとから生まれる。本質は、倫理と顧客とのつながりを再構築することだ」とレヴァート氏は語る。「信頼でき、価値があり、感情を喚起する提案があれば、人々は新しい創造性を受け入れ、新ブランドに忠誠を持つ」。

アルゴリズムから離れ、直接語る場としてのサブスタック



8月、レオネ氏はブランドのサブスタック(Substack)を立ち上げ、アルゴリズムに左右されず、製造プロセスや哲学を直接顧客に伝えはじめた。イン・モーダ・ヴェリタス(In Moda Veritas、登録者15000人)などのファッション系サブスタックにも寄稿している。

「インスタグラムは取引的に感じる。アルゴリズムの報酬構造は、長期的な関係構築と合わない」。メティエ、デメリエー(DeMellier)、マヌ・アトリエ(Manu Atelier)、ドラゴン・ディフュージョン(Dragon Diffusion)も、同様にサブスタックを通じて存在感を高めている。

ロエベ(Loewe)からロンドン拠点のテック企業ナッシング(Nothing)へ移ったチャーリー・スミス氏の決断は、同社の転換期と重なった。独立系スマートフォンブランドであるナッシングは、評価額13億ドル(約1950億円)に達し、シリーズCで2億ドル(約300億円)を調達したばかりだ。

創業4年の同社は2025年初頭に累計売上10億ドル(約1500億円)を突破し、2024年には150%成長を遂げた。過去10年でスケールに到達した唯一の独立系スマートフォンブランドであり、今後はAIネイティブなOSを構築し、スマートフォン、オーディオ、ウェアラブル、将来のデバイスを横断する「単一のインテリジェントシステム」をめざしている。

「次世代クリエイターのためのブランド」へ



ロエベで7年間、マーケティングおよびコミュニケーション責任者を務めたスミス氏は、スタジオジブリ、オン・ランニング、スナ・フジタとの協業、TikTok戦略、グローバルなセレブリティ施策を率いてきた。

「消費者向けテックは、正直かなり退屈になった。Appleは、デルやヒューレット・パッカードのように感じる」と同氏は語る。一方でナッシングは、「次世代クリエイターのためのブランド」として創造性を取り戻せると見る。

CMOとして、ブランド、イメージ、マーケティング、コミュニケーション、小売を統括し、短期的には第1四半期製品を「刺激的で破壊的、少し反抗的な感覚」でローンチすることに注力している。長期的には、文化的パブリッシャーとして機能させたい考えだ。

スミス氏は、チャーリーXCXのアルバム「Brat」を、現在の若者文化の象徴として挙げた--「髪を整えず、雑然として、楽しむ」。テックがまだ取り込めていないトーンだという。ナッシングのレトロフューチャーなビジュアルと言語は、「テクノロジーを楽しいものにする」という野心と重なる。

小売も同様だ。現在ロンドンに店舗を構えるナッシングは、次はインドでの出店を計画している。スミス氏は、2010年代半ばのナイキ(Nike)のように、創造性をグローバルに分散させることで、エッジを失わずに拡大したいと語る。

「鍵は、世界各地のクリエイター集団に権限を委ねることだ」。同氏によれば、次世代の消費者向けテックにおいて、文化的関連性こそが成長エンジンになるだろう。

ShopMyが「マガジン」をローンチ



ショップマイ(ShopMy)は、年次レビューをまとめた一回限りの「マガジン」を、印刷版とデジタル版で公開する。主流になる前から嗜好をかたち作ってきたクリエイターに光を当てる内容で、「ファースト・トゥ・リンク」リストでは、後にラグジュアリーの注目株となったブランドをいち早く紹介したクリエイターを特集する。

トップ3のテイストメーカーは、ハイスポーツ(High Sport)をいち早く紹介した@LLBaruch(リアット・バルーク氏、フォロワー1100人)、カルマイヤー(Kallmeyer)の@pig.mami(ヘザー・ハースト氏、1900人)、エム・パーソンズ(Emme Parsons)の@valerialipovetsky(ヴァレリア・リポヴェツキー氏、3100人)だ。

このリストは、静かなラグジュアリー、デザイン主導のアクセサリー、次世代ヘリテージブランドにおいて、マイクロクリエイターの直感が需要を動かしていることを示している。

[原文:Luxury Briefing: Why the next hero bags aren’t coming from luxury’s mega houses

Zofia Zwieglinska(翻訳・編集:杉本結美)