記事のポイント 健康・ウェルネス市場は小売各社の重点領域となり、アルタビューティやターゲットなどが新商品を拡充することで競争が激化している。 市場は急成長する一方で飽和状態に近づいており、消費者の「ウェルネス疲れ」が広がって選択が難しくなっている。 ブランドは差別化と棚に残る力が問われており、高価格帯のシンバイオティカのように、主流市場で価値を証明する戦略が重要となっている。


ウェルネスブームは依然として勢いが衰えず、ブランドの商品が店頭に並ぶ機会をさらに生み出している。

全米規模の小売企業は健康ウェルネス商品を拡充することで、この分野の競争をさらに活発化させている。アルタビューティ(Ulta Beauty)は2025年、ウェルネスを重点分野と位置付け、リチュアル(Ritual)やアームラ(ARMRA)といったサプリメントスタートアップの商品をそのラインアップに加えた。ウォルマート(Walmart)もモダンソーダなどのコーナーを新設することで、健康ウェルネスの目的地としての地位を確立している。さらに、ターゲット(Target)は2025年初頭、2000点の新規ウェルネス商品を年内に店頭に投入すると発表している。

多くの場合、これらの商品はサプリメント、カプセル、パウダーなどだが、一部の小売企業はオーラ(Oura)リングのようなフィットネストラッカーも取り入れている。アナリストや業界専門家によれば、小売企業は需要の増加を見込み、健康ウェルネス商品を拡充している。これにより、ウェルネスブランドが店頭に並ぶ機会は増えたが、消費者は新ブランドの数に圧倒されており、勢いを維持するのは難しい分野だ。そうしたなか、ウェルネスブランドは量販店への進出によって、主流市場での訴求力を証明できると期待している。

ウェルネス分野は飽和状態になりつつある



マッキンゼー・アンド・カンパニー(McKinsey & Company)によれば、消費者向けウェルネス分野の年間支出は米国だけで5000億ドル(約75兆4400億円)を超える。世界市場の規模は、ミクロ経済の変動にもかかわらず、2025年前半に2兆ドル(約302兆円)に達した。

この成長は、10月だけでも、量販店に続々と登場している新たなウェルネスブランドを見れば明らかだ。ターゲットが最近導入した新商品には、カチャバ(Ka’Chava)、ポッピー(Poppi)、ブルーム・ニュートリション(Bloom Nutrition)の限定商品が含まれる。ここ数週間では、ボビー・パリッシュ氏が設立した機能性食品ブランドのフラブシティー(FlavCity)が、ストロベリーショートケーキ味プロテインスムージーの独占販売でターゲットに進出した。

また、無糖の植物性グミサプリメントを製造するプラント・ピープル(Plant People)は10月中旬、ターゲットで全米展開を開始した。レベルズ・プロテイン(Levels Protein)はコストコ(Costco)の51店舗で、これまでより価格を抑えた商品の販売を開始する。

グローバル経営コンサルティング企業カーニー(Kearney)の内部シンクタンクであるカーニー消費者研究所(Kearney Consumer Institute)を率いるケイティ・トーマス氏によれば、これらの新商品発売は、ターゲットとそのライバルにとって、ウェルネスブランドや体に良いブランドを大衆に広める取り組みの一環だという。「ウェルネス分野は飽和状態で、競争が激しく、我々はしばしば、体に良い商品を求める消費者の数を過大評価している」。

消費者に漂う「ウェルネス疲れ」



トーマス氏はカーニー消費者研究所の最新調査を引用し、消費者の半数は、構造的な制約により、健康への積極的な取り組みに苦労していると指摘した。「これは多くの場合、彼らがこうした商品を見たり、表示内容を読んだりすらしていないことを意味する」。

健康に関心のある人々は多くの選択肢から選ぶことができ、通常、自身の目的に合う商品の組み合わせを見つけるため、独自に調査を行う。「認知度向上と市場開拓の面で、これからも困難な分野であり続けるだろう」とトーマス氏は述べている。

消費者向けヘルスケア分野の投資を行うマベロン(Maveron)のゼネラルパートナー、アナーギャ・バルダナ氏は、ウェルネス商品の過剰が「ウェルネス疲れ」を生み出していると指摘する。そして、それはさまざまな方面から来ている。「単なるウェルネスサプリメントだけでなく、プロテインや食物繊維のようなものも含まれる」。

つまり、ただ健康を改善する商品を見つけたい消費者のあいだで、多くの混乱が生じているということだ。

コロナ禍が転換期だった



同時に、D2Cファーストのブランドは、デジタルマーケティングコストによるeコマースの限界を考慮すると、規模拡大を続けるには量販店への進出が必要だと気付き始めている。「グリュンズ(Grüns)やデイビッド・プロテイン(David Protein)がAmazonに出店しているように、多くの実例がある」とバルダナ氏は述べ、こう続けた。「小売店の棚に並ぶことが成功を保証するわけではない。ライバルも皆、そこにいるためだ」。

10月中旬、設立6年のサプリメントブランド、シンバイオティカ(Cymbiotika)が1900店舗を超えるターゲットのチェーンで一斉販売を開始した。シンバイオティカにとって、ターゲットは初めての量販店展開だが、すでにスプラウツ(Sprouts)への進出を果たしている。シンバイオティカの共同創業者兼CEOシャハブ・エルミ氏は、「すでに1億ドル(約150億円)相当の小袋が売れた」と話す。シンバイオティカは過去1年間で106%成長しており、ターゲットでの展開により、小売店舗での拠点数は倍増する見込みだ。

エルミ氏によれば、小売企業はトレンドを追いかけ、限定商品による競争を続けているという。「コロナ禍のころ、人々は(ウェルネスの)ゴールドラッシュを目の当たりにした。業界にとって、大きな転換点だった」とエルミ氏は説明する。「それが、我々が競争している世界だ」。

エルミ氏は、ターゲットが主流市場における訴求力の大きな試金石になると見ている。シンバイオティカの課題のひとつは、特に量販店の棚において、価格帯が競合他社よりはるかに高いことだ。シンバイオティカのサプリメントは1カ月分で62ドル〜88ドル(約9350円〜約1万3280円)だ。

「消費者はAmazonやCVSで9.99ドル(約1500円)のビタミンCを目にしている。我々の商品を見ると、なぜこれほど価格差があるのか理解できない」とエルミ氏は話す。「しかし、あなたの体は、我々の商品が本物の食品だとわかると思う。吸収率がはるかに高いためだ」。同氏はその上で、シンバイオティカの商品は、添加物や保存料が一切使われておらず、高濃度の成分が含まれている点を強調した。

商品数が多く差別化が難しい



クレアチンサプリメントブランドのクリエイト(Create)も10月8日、全米のターゲットで販売を開始した。

クリエイトの共同創業者兼CEO、ダニエル・マコーミック氏はModern Retailの取材に対し、「クリエイトの目標は、クレアチンサプリメントを主流の座に押し上げ、誰もが日常的に、より親しみやすく、楽しく、信頼して摂取できるものにすることだ」と語る。

また、マコーミック氏はターゲットについて、「クリエイトの立ち上げを考え始めたその日から夢見ていた小売パートナーだ」と説明した。クリエイトは1年以上前からターゲットとの関係を構築していた。ターゲットが2025年に向けて、ウェルネス商品の拡充を計画した時期と一致する。

「ターゲットのチームはクレアチンカテゴリー、特にクレアチングミの動向に関心を持っていた」とマコーミック氏は振り返る。「そして、我々は彼らと出会うことができた」。そこから、成功を定義し、計画を実行し、ビジネスとサプライチェーンの変革に向けて準備し、ターゲットのチームやブローカーパートナーと緊密に連携するプロセスが始まった。

健康ウェルネスブランドが大型チェーン店を通じて一般消費者へ届くようになるにつれて、店舗の棚にとどまるため、注目を集め、勢いよく売れなければならないというプレッシャーが増している。シンバイオティカにとっての最優先事項は、商品の有効性を明確に伝え、ターゲットの消費者層のうち適切なセグメントにリーチすることだ。

エルミ氏は、商品数があまりに多いため、差別化が難しいと述べている。「残念ながら、サプリメント業界は過去20〜30年、低価格・低品質化の競争が続いてきた。世の中には取るに足らない商品があふれている」。

プライマークが米国で拡大中



アイルランドの衣料家庭用品企業プライマーク(Primark)は、2026年に米国ニューヨークに旗艦店をオープンする準備を進めるなかで、米国におけるブランド認知度上昇の兆しが見られるとModern Retailに語っている。

プライマークは2015年、米国初の店舗をボストンにオープンした。さらなる成長のため、地下鉄広告や看板広告、クリエイター主導のソーシャルメディア動画など、米国でのマーケティング活動を強化している。四半期ごとに最低20人のインフルエンサーと提携し、最近のマーケティングキャンペーンでは、アスレジャーや男性、女性、子ども向けの低価格ファッションに焦点を当てている。

プライマーク米国法人のマーケティング責任者のレネ・フェデリコ氏によれば、米国初のブランドキャンペーンからほぼ1年が経過した今、商品の購入を検討する人が増えているという。「ライバルより優位に立つことができている」とフェデリコ氏は語る。「新規顧客が来店している。こうした状況はとても励みになる。今後は一貫性が成功の大きな原動力となるだろう」。

フェデリコ氏の見解では、この成長の鍵は価値提案に焦点を当てたことにある。プライマークの価値提案は「良質なファッションを手ごろな価格で」だ。プライマークの商品には13ドル(約1960円)のTシャツや30ドル(約4530円)のパンツが含まれる。プライマークは米国でEコマースサイトを提供しておらず、同社の商品を購入できる唯一の場所である店舗展開の強化も差別化に貢献している。「店舗こそが顧客維持の最大の手段だ」とフェデリコ氏は言う。2026年末までに米国で60店舗を展開する計画だ。

米国における次なる展開は、11月から始まるホリデーキャンペーンだ。「必要な贈り物はすべて(我々の)店舗で購入できると消費者に伝えたい」とフェデリコ氏は説明する。キャンペーンのトーンは「この時期によく感じる懐かしさから着想を得たものになる」。ほかの小売企業と同様、自分へのご褒美も重要な要素となる見込みだ。

[原文:Brands Briefing: The wellness wars heat up among retail chains]

Gabriela Barkho(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:島田涼平)