不労所得が得られることで人気の不動産投資。ファイナンシャルプランナーの藤原久敏さんは「現物不動産は高い収益性などの魅力があるが、実際、営業マンに話を聞いてみると、イメージが変わった」という――。
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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ArLawKa AungTun

■現物不動産投資に手を出さない理由とは?

株式、債券、投信信託、FXなど、これまでさまざまな投資に手を出してきた私ですが、いまだ、ワンルームマンション投資や戸建て物件投資といった、「現物不動産投資」には手を出していません(出せていません)。

これは、現物不動産投資に興味がないからではありません。むしろ、優良物件の安定した賃料からの高い利回り、そして値上がりによる莫大な売却益が見込める収益性には、非常に魅力を感じています。そして何より、不動産オーナーとの響きには、大いに惹かれております。

ではなぜ、現物不動産投資には手を出していないのか……それは、「一点ものゆえの怖さ、そして業者への不信感」です。

■利回り10%超の、格安中古物件も

そんな私ですが、かつて、現物不動産投資をやってみようと、いろいろとリサーチしていたことがありました。

当時、「サラリーマンの副業としてのワンルームマンション投資」が注目され、ちょっとした不動産投資ブームだったこともあり、都心の利便性の高い新築マンションや、地方の格安中古マンションなど、多くの物件が出回っていたのでした。

そこで目を付けたのが、たしか札幌郊外にある500万円程度の格安中古物件、そして利回りは10%程度。これなら借金しなくても、なんとか自己資金で購入できそうだと、そして利回り10%はスゴイぞと思い、さっそく仲介業者にコンタクトを取ってみたのでした。

不動産投資業者と会うのは初めてだったので、かなり緊張、そして警戒していたことを覚えています。

こちらの勝手な先入観で、若い、チャラい営業マンがガンガン押してくると身構えていたのですが、担当者は比較的年配の男性、落ち着いた雰囲気で、物腰柔らかく丁寧に説明をしてくれました。

■いきなり、50万円値引き⁉

ちなみに家賃は4万円で、物件価格は約500万円ですから、その利回りは約10%((4万円×12カ月)÷500万円×100=9.6%)でした。ただ、これは諸経費を考慮しない「表面利回り」です。

実際には、管理費や保険料、修繕費などの負担があり、その分は収入である家賃から差し引かれるので、「実質利回り」はそれより下がることになります。これは不動産投資の大原則なのですが、中には、そのあたりをはぐらかす業者がいるのも要注意です。

しかしその担当者は、「表面利回り」「実質利回り」の詳細についてもしっかり説明してくれ、当該物件の実質利回りは4〜5%程度になると、正直に説明してくれたのでした。

私はその誠実さに少々心を許し、そして、その物腰柔らかい態度に、「う〜ん、4〜5%だと物足りないですね……あと、500万円はちょっと予算オーバーでして……」と、素直に本音を話してみました。

すると、少し困った顔をしながらも、「分かりました、では450万円くらいでいかがでしょうか」と、なんと、いきなり50万円も値引いてくれたのでした。

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■湧き出す疑問、募る不信感

これには嬉しいというよりも、「それじゃぁ、最初の500万円は何だったんだ……」と思わざるを得ませんでした。そして、「そもそも、500万円の値付けは適正だったのか?」「となると、450万円も信じてよいのか?」と、業者が提示する価格に対して、疑問が湧き出すのでした。

もちろん、業者が提示する物件価格については、不動産のプロの目線から、立地、面積、周辺環境、建物グレード、需給関係等といった、当該物件の諸々の条件を考慮して設定された、妥当な価格だとは思います。

しかし、当初の価格から簡単に50万円も下げてきたことに、一気に不信感が募ったのでした。

■一点ものの価格の、不透明さ

もし、私に十分な不動産投資の知識や経験、そして当該物件の詳細な情報を持っていたなら、当該物件の「目利き」をして、その「妥当な価格」をはじき出すことで、その疑問や不信感は払拭することができたでしょう。

しかし残念ながら、(ある程度は勉強やリサーチをしていたとはいえ)私にはそこまでの知識や経験、情報はありませんでした。

そして実際のところ、おそらく、業者の提示する価格を完璧に精査できるくらいの不動産投資の知識、経験、情報を持つ人など、ごくわずかでしょう。ですので、現物不動産投資においては、多くの人は、ある程度、業者の提示する価格を信じて(多少の交渉をしたうえで)、投資をしているかと思われます。

しかし私は、どうしても、業者の提示する価格が信じられなかったのでした。想定外の大幅な値下げをされたことで、(売手である業者が一方的に提示してくる)一点ものである現物不動産の価格の不透明さを、あらためて怖いと感じてしまうのでした。

業者が提示する価格がどのような価格であったとしても(たとえ、それがどれだけ「相場」からかけ離れた価格であったとしても)、売買の当事者が納得さえすれば、その価格での取引となるのですから。

そう考えると、ひょっとしたら、これはとんでもない(高い)価格で掴まされるのでは、との不安を拭うことができず、結局、その案件はお断りすることとなりました。

■どうしても払拭できない、不信感・不安

その後、他にも複数の物件に興味を持ち、そして複数の業者とコンタクトを取ったのですが、やはり、どれだけ大手業者でも、誠実(そう)な担当者であっても、その提示された物件価格に対する不信感、不安がつきまとい、私は決断することができませんでした。

一点ものの現物不動産の価格に対して、一度抱いてしまった不信感や不安は、そう簡単には拭えないのでした。

また、業者が提示してくる価格とは、業者が「売りたい価格」です。つまり、それは業者にとって「有利な価格」の可能性が高く、それは逆に言えば、こちらが「不利な価格」の可能性が高いとも言えます。そう考えると、現物不動産には、ますます投資できずにいるのでした。

市場で形成される、価格の透明さ

ところで、上場株式や外国為替相場などの価格は、誰かの一存で決められるのではなく、市場(マーケット)において、多くの市場参加者の需給によって形成されます。これは(業者が一方的に提示してくる)一点ものの現物不動産の価格に比べて、非常に透明性があると言えますね。

もちろん、市場で形成される価格が、必ずしも「本当の価値を示している」とは限りません。異常に人気化して価格が高騰していたり、異常に売り叩かれて安い価格となっていることも少なくないことは、投資経験のある人なら実感されているかと思います。

とはいえ、誰かの一存で決められた価格に比べれば、大勢市場参加者の需給で形成された価格のほうが、基本的には、信頼性があると言えるでしょう。そして、上場株式や外国為替相場については、その(市場で形成された)価格で、大勢の人が売買していることも重要なポイントです。

つまり、一点ものの現物不動産のように、その価格で売買するのは「自分だけ」ではないわけです。他の大勢の人も、その価格で売買していると思えば、ある意味、納得がいく(というか諦めもつく)ことでしょう。

そんな理由から、不動産投資においても、上場株式等のような取引ができればなぁ、と思うのでした。

■J-REITと上場株式の共通点とは

そこで私が至った結論が、J-REIT(不動産投資信託)です。J-REITとは、不動産投資のプロが、多くの投資家から集めた資金を1つにまとめて収益物件に投資して、そこから発生する収益を、投資家に分配するタイプの投資信託です。イメージとしては、不動産の一口オーナーと言ってもよいでしょう。

そして、このJ-REITの大きな特徴は、上場株式等と同じく、市場に上場していることです。ですので、その価格は、多くの市場参加者の需給によって形成されることから、非常に透明性があるのです。

不動産投資に興味を持つものの、一点ものである現物不動産の値付けに対する不信感がどうしても拭えない(かといって、その値付けを精査できるだけの知識・経験・情報を得られる見込みのない)私にとって、J-REITはまさにうってつけの商品なのでした。

■現物不動産にはないJ-REITのメリット

なお、J-REITには、前述の「市場参加者によって価格形成されるため、その価格には透明性がある」以外にも、(一点ものである)現物不動産投資と違って、以下の特徴があります。

● 一口数万円〜数十万円と、小口からの投資が可能
● いつでも市場で売買することができる
● 投資物件の目利きは、不動産投資のプロに任せることができる
● 多くの物件に分散投資することで、リスク分散ができる

上記の特徴から、J-REITは私だけでなく、(不動産投資には興味あるが、さまざまな理由から、現物不動産投資には及び腰の)多くの投資家に人気なのです。

■J-REITはどう選べばいいか

ちなみに現在、J-REITは約60本あります。そして、その主な投資物件は、住宅、オフィス、ホテル、商業施設、物流施設、福祉施設など、商品によってさまざまで、実にバラエティ豊かです。

また、投資物件の数、地域も商品によってさまざまで、その選択は迷うところです。さらに言えば、スポンサーの知名度、分配金の水準、借入金の割合、一口の価格など、見るべき要素を挙げればキリがありません。

ですので、J-REITへの投資においては、まずは、自身が譲れないポイントをしっかり決めておきたいものです。ちなみに私は、知名度のある有名な、そして(私自身にとって)身近な物件が組み入れられている商品を優先して選んでいます。

なぜなら、冒頭でも書いたように、私はかねて「不動産オーナー」の響きに憧れ、大いにオーナー気分を満喫したいと思っているからです。それでは最後に、私が保有するJ-REITの中でも、とくに満足して、長期間保有し続けているものを3銘柄、挙げさせていただきます。

■長期保有を続けるJ-REIT3

[イオンリート投資法人]

小売り大手のイオングループをスポンサーとする。

全国のイオングループのショッピングセンターが保有物件であることから、暮らしに身近な、皆に親しまれるリートにとことんこだわっている。実際、普段からイオンやイオンモールをよく利用している私にとって、大いに身近に感じられるリートである。

また、保有物件は全国に散らばっており、地域分散も強みである。

[阪急阪神リート投資法人]

阪急阪神ホールディングスグループをスポンサーとする。

商業施設をメインに、オフィスやホテルに投資しているが、その保有物件は、スポンサーの地元である関西圏の物件が7割強を占め、「地域特化型」の特徴もある。

たとえば、保有物件のグランフロント大阪など、大阪在住の私にとって馴染みのビルも多く、大いにオーナー気分を味わっている。

[インヴィンシブル投資法人]

外資系運用会社フォートレス・インベストメント・グループをスポンサーとする。

投資対象の大半がホテルである。

その保有物件には、私がよく利用するビジネスホテルが、そして、(いつかは泊まりたい)憧れのリゾートホテルがあり、私の現実と夢の詰まったリートである。

また、分配金利回りはJ-REITの中でもトップクラス、そして投資口価格はお手頃で、投資対象としても非常に魅力的である。

※投資にはリスクを伴います。購入の判断はご自身でお願いします。

出典=JAPAN-REIT.COM

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藤原 久敏(ふじわら・ひさとし)
ファイナンシャルプランナー
1977年大阪府大阪狭山市生まれ。大阪市立大学文学部哲学科卒業後、尼崎信用金庫を経て、2001年に藤原ファイナンシャルプランナー事務所開設。現在は、主に資産運用に関する講演・執筆等を精力的にこなす。また、大阪経済法科大学経済学部非常勤講師としてファイナンシャルプランニング講座を担当する。著書に『株、投資信託、FX、仮想通貨… ファイナンシャルプランナーが20年投資を続けてみたらこうなった』(彩図社)など。
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(ファイナンシャルプランナー 藤原 久敏)