現役時代はアジア制覇、天皇杯優勝も経験。中澤聡太はなぜ“フットボールエージェント”に転身したのか。移籍交渉だけじゃない仕事の裏側とは?【インタビュー】
プロサッカー選手として、現役時代は柏レイソル、ガンバ大阪、川崎フロンターレなどでプレーし、G大阪時代にはアジアチャンピオンズリーグ(ACL、現:AFCチャンピオンズエリート)や天皇杯など多くのタイトル獲得に貢献。引退後はそのG大阪での強化部スタッフを経て、現在は株式会社ジャパン・スポーツ・プロモーション(JSP)に所属し、フットボールエージェントとして働く中澤聡太氏にエージェントの仕事について話を訊いた。
移籍交渉はシーズンオフの時期がほとんどですが、エージェントが交渉の時にだけ現れるというのはなしだと思っています。自分としては『選手を見ること』に重きをおいていて、試合会場はもちろん、トレーニングを見るために練習場にも足を運んでいます。選手のコンディションやプレーの確認をしたり、彼らとコミュニケーションを取る。それが契約交渉の際のデータや物差しになります。
また、弊社では『VISONARY ATHLETE』というサービスを立ち上げており、競技面だけでなく、生活面やその後のキャリアを見据えた活動など、あらゆる面からサポートできる環境を整えています。僕が現役時代にも、このように何でも相談できる場所があればよかったなと思いますよ。気軽に何でも聞ける人がいるというのは全然違います」
プロサッカー選手の多くは引退後、指導者や解説者、クラブのスタッフとして働くことが多いなか、なぜエージェントを志したのだろうか。
「現役時代、簡単な移籍というのは一度もなくて、『選手生命がこれでもう終わりかな』という厳しいタイミングばかりでした。そんな苦しい思いをするたびに、エージェントには支えられていて、自分が30代になった時ぐらいには、引退したらエージェントの職に就いて、選手にとってかけがえのない存在になれたらいいなと思うようになりました。
ただ自分がサッカー選手を引退して、すぐにエージェントの仕事をやっても言葉に深みがなかったり、信頼も掴めないと思います。だから引退後、ガンバ大阪の強化部で働かせていただけたのは大きかったですね。クラブ側からの目線でも選手のことを考えられるようになりました。その機会を与えていただいたガンバ大阪には本当に感謝しています。
選手としての経験が活きている部分もかなりあります。その選手の顔を見れば気持ちがわかることが多いですから。例えば、調子が良いのに起用されなくなったり、求められて移籍したはずなのに、いざ蓋を開けてみたら違ったなど、この状況きついだろうなというのは自分も経験してきたことなので共感できます。そんな時には話を聞いて、アドバイスするようにしています。選手を持ち上げることもなく、僕が上から言うこともない。お互い対等な関係で、良きパートナーだと思っています」
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選手とエージェント契約を結ぶにあたっては自分なりの“基準”を持っている。
「本当にいろんなつながりがあって、例えば学生時代の恩師から選手を紹介される場合もありますし、どこでどのような縁があるかはわかりません。ただ、誰とでもエージェント契約を結ぶわけではなくて、本当に自分がその選手のために仕事をしたいと思えるか。そこにはプライドを持っています。長渕剛風に言うと、生き様、魂で通じ合えるかです(笑)。1日、2日でそんな関係性はできないですが、僕は『この選手のためなら』、選手は『聡太さんになら』という信頼関係を築けるかどうかです」
2019年から始めて7年目を迎えているエージェントの仕事において、一番必要と考える要素とはーー。
「苦しんでいる選手やくすぶっている選手が這い上がってきて、飛躍する姿はたまらないです。この仕事で大事にしているのは、選手とコミュニケーションを取り、自分の経験や言葉できっかけや気づきを与えることです。
選手たちのことは常に考えています。他人ならそこまで気にならないことでも、家族なら心配になりますよね?そんな感じです。また、家庭でも選手の話題になるので、妻も彼らの状況は理解しています。元選手の妻としてアドバイスをもらうこともあります。
選手にとって、エージェントはチームメイトや監督とは違う新しい立ち位置の存在です。その選手のサッカー人生のために全力を尽くせる。彼らにとってスペシャルな存在でありたいと思っています」
最後に、エージェントとしての目標を訊いた。
「エージェントによって選手の人生が左右されることもあると思っています。だからこそ、『あの人であれば任せられる』と信頼されるエージェントになりたいですね。大変なことが多いですが、その分やりがいも感じていますし、選手の成長や活躍を間近で見られて、幸せを感じながら日々活動させていただいています」
取材・構成●中川翼(サッカーダイジェストWeb編集部)
