「前向いてプレーしようぜ」指揮官のゲキに中島洋太朗が覚醒。別人のような振る舞いで、逃げずにトライ。素晴らしいパフォーマンスだった【U-17W杯】
前半と後半でまるで別のチーム――。開始8分までに2失点を喫し、その後も相手の個人技をまったく止められない。もちろん、個の能力ではアルゼンチンに分があるのは戦前から分かっていたが、局面を打開する力は想像以上だった。
しかし、森山佳郎監督の一言が選手たちの目を覚まさせる。「このまま終わってどうるすんだ?」。
選手全員がゴールに矢印を向け、消極的なプレーをする選手はひとりもいない。そうした姿勢が50分の得点を生み出した。
高い位置からプレスをかけると、相手は前方にボールを蹴り出す。そこからこぼれ球を拾い、右サイドに展開。右SB柴田翔太郎(川崎U-18)が相手をなんとか振り切り、深い位置から折り返すと、FW高岡伶颯が右足で合わせてゴールネットを揺らした。
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その後も反転攻勢を続け、勇敢に立ち向かう。何度かあったピンチもGK後藤亘(FC東京U-18)が救い、1点差でゲームは終盤へ。
87分には右CKのこぼれ球をMF川村楽人(東京Vユース)が押し込む。しかし、これはGKに対するチャージで得点は認められず。日本は最後まで懸命にゴールを目ざしたが、逆に90+8分にカウンターから失点。1−3で敗れ、前半の出来が悔やまれる結果になった。
「後半はずっと日本のペースで進めることができた」と森山監督が振り返ったように、ハーフタイム以降の日本は出色の出来。アルゼンチンに対して後半は互角以上の勝負を演じ、お世辞抜きで称賛に値する内容だった。
個々が見違えるようなプレーを披露したが、巻き返しの立役者を挙げるとすれば、MF中島洋太朗(広島ユース)だろう。
前半は4−4−2のダブルボランチの一角で、相手のプレッシャーをいなせずに苦戦していた。ボールが入っても横パスを選択し、前向きにプレーするシーンはほぼ皆無。パスミスも散見し、攻撃の起点になるような働きはまるでできなかった。
しかし、後半はボールを受けても逃げずにトライ。ゴールに意識を向け、鋭い縦パスを何度も通した。セカンドボールに対しても鋭い出足で反応し、即座に回収して前に運んでいく。ゴールに結び付くプレーはなかったが、素晴らしいパフォーマンスだった。
なぜ、中島は後半に躍動したのか。ハーフタイムに森山監督にゲキを飛ばされたからだ。
「後ろを向いている。前向いてプレーしようぜ」
指揮官の言葉で勇気を取り戻し、後半は別人のような振る舞いで強気な姿勢を崩さなかった。
誤解を恐れずに言えば、最初から後半のようなプレーできていれば、敗戦という結末にはならなかったかもしれない。だが、アルゼンチン戦はもう終わったこと。悔やむぐらいなら、次に目を向けるしかない。
「1試合1試合、成長するというのがこのチームの一つのテーマ。(今大会の)1試合目よりも良くなったと思うので、3試合目を一番良い試合にする」(中島)
2戦目を終え、日本は1勝1敗のグループ3位。上位2チームと各組3位の上位4チームに与えられるノックアウトステージ出場権のためには、最後のセネガル戦で最低でも引き分け以上の結果が欲しい。敗れれば厳しい状況に追い込まれる。
初戦でアルゼンチンを2−1で下しているセネガルは、続くポーランド戦も4−1で完勝。2連勝でグループ首位に立つ。簡単には勝たせてくれない相手だが、最初からトップギアで戦えれば不可能はない。
「(後半は)守備のところでも1対1で負けなかったし、球際でも負けなかった。攻撃も1枚剥がしたり、クロスだったり、普通に良い形があったので次はラストで勝つしかない」
手応えを掴んだ中島は3戦目にすべてを懸け、グループステージ突破のために戦い続ける。
取材・文●松尾祐希(フリーライター)
