なでしこジャパン、女子W杯の初戦で5−0快勝。ザンビア対策の中でも再現された”ボールを奪う、ゴールを奪う”コンセプト
池田太監督が率いるなでしこジャパンは、ワールドカップ初戦でザンビアに5−0と勝利した。ザンビアは大会前の強化試合で優勝候補のドイツに3−2で勝利しており、特に2得点を記録したバーバラ・バンダは日本の選手たちからも、要警戒なストライカーとして名前が挙がっていた。
キャプテンの熊谷紗希も「映像を観る限り11番(バンダ)のスピードを気にしていて、警戒していたので。もうディフェンスの前のスペースで足もとにつけられてもいいから、もう下がろうと。背後をやらせない守備の考え方をして。退いたとしても点を取れると思っていたので。対ザンビアの戦いをして、結果が出たのは良かったと思います」と振り返る。
司令塔の長谷川唯も「前に前によりはつなぐことを意識して、そこからビルドアップしていくのが今日の試合の全体の流れではあった」と語るが、そうしたなかでザンビアのウイークを確認していたという。
「分析でも良いタイミングではない時に、相手がラインを上げてくるのがあったのと、試合の中でも変なタイミングでラインを上げてくるなというのがあったので。ボールを取った後に、タイミングを待って裏に蹴るのを何度か試していた」
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その1つが43分の先制ゴールにつながった。左サイドバックのマーサ・テンボから縦に蹴られたボールを藤野あおばがカット。これを右ワイドに流れていた長谷川が拾うと、アウトサイドの清水梨紗とパスを交換する。その間に、FWの田中美南が引いてボールを受ける動きをすると、ザンビアがラインを上げにくるところを見計らって、テンボの外側でフリーになった藤野を目掛けて、長谷川がロングボールを送り込む。
「あおばといいタイミングで呼吸があった」と長谷川。そのメッセージ性のあるパスに反応し、前に出ながら右足でぴたりとボールをコントロールした藤野は、センターバックのルショモ・ムウェンバがカバーで寄せ切る前に、右足で速いクロスを送り込んだ。
「キーパーとディフェンスの間にスペースがあるので。相手が戻り切る前にクロスを上げて、人が入ってくるところは今日のザンビア戦だけじゃなくて、自分の良さとしても、ハイラインにアーリーのボールというのはずっとやってきた」
そう振り返る藤野のボールに走り込んで合わせたのは宮澤ひなた。この走り込みが見事で、長谷川から藤野にボールが出るタイミングでは、オフサイドにかからないように我慢しながら、ボールが出る瞬間を見極めて右サイドバックと右センターバックの間から飛び出して合わせている。
この試合、日本は21分にFKの流れから田中美が押し込んだシーンも含めて、VARと半自動オフサイドテクノロジーにより、2度のゴール取り消しを受けたが、先制ゴールに関しては宮澤が絶妙だった。バウンドにうまく合わせる技術も見事だったが、この試合のMOMに選ばれた宮澤は「みんなに繋いでもらったゴール」とチームメートに感謝する。
そこから後半に、前がかりになってくる相手の背後を突きながら4得点を重ねて、終わってみれば5−0と勝利したが、1点目が入るまでは難しい試合だった。それでも分析にプラスして、ピッチ上で選手たちが相手を見極めながらウイークを突いていく事前情報と生の情報を融合して、完全勝利につなげたのは2試合目以降に大きなプラスとなる。
池田監督が掲げてきた「ボールを奪う、ゴールを奪う」コンセプトはザンビア対策で意図的にセットバックさせたような形にはなったが、5−4−1のミドルブロックを構築しながら、そのなかでパスを引っ掛けてマイボールにする。そして落ち着いてボールを動かしながらも、先制点のシーンのように相手の隙と自分達の狙いが合えば、持ち前の速い攻撃でゴールに矢印を向ける臨機応変さに、チームの仕上がりの良さを感じる。
もちろん、ここからザンビアよりも手堅い守備を強みとするコスタリカ、そしてFIFAランキングで上位のスペイン、さらにグループステージを抜ければラウンド16で開催国ニュージーランド、強豪ノルウェー、躍進著しいスイスのどこかとの対戦が予想される。
しかし、ベースのチームコンセプトを持ちながら柔軟に振る舞えるなでしこジャパンは、勝利に向けて好勝負を続けていってくれるだろう。そのなかで、さらなる成長の積み重ねが躍進につながるはずだ。
取材・文●河治良幸
