予約当日の様子(写真提供:長秀龍)

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東京・板橋区の中華料理店が、区議会議員・五十嵐やす子氏に30人分の団体予約を無断で放棄されたと訴え、波紋を広げている。

J-CASTニュースの取材に、店は予約キャンセルの連絡はなかったとして「騙されてめちゃくちゃ悔しい」と訴える。一方、五十嵐氏は「無断で放棄したという事実はございません」と否定した。双方に詳しい経緯を尋ねた。

「30年以上やってますけどこんなこと初めて」

騒動が起きたのは、板橋区ときわ台の中華料理店「長秀龍」。五十嵐氏に飲食店の予約を無断放棄された、などとする情報は2023年5月頭にツイッターで発信された。投稿者は常連客だった。

事態を告発した常連客同席のもと、店長夫妻に9日、直接話を聞いた。

それによると、4月29日夕から貸し切り状態で30人利用、2時間4000円コースの予約があった。宴会当日の約10日前に、単独で来店した五十嵐氏が食事がてら口頭で取り付けたもので、店はカレンダーにメモをした。

しかし当日、時間になっても来客はなく、五十嵐氏の事務所にも連絡がつかなかった。店は人員を補充して準備を進めていたうえ、最終的に用意していた食材の一部が廃棄となり、損害が生じてしまった。

5月1日昼になって、店長のもとに、五十嵐氏から予約キャンセルは連絡済みだとする電話があったという。五十嵐氏からは当初、キャンセルは店長の携帯電話に連絡したとの説明があったというが、店長によると着信履歴はない。

そもそも携帯の番号自体、同日午前に五十嵐氏の事務所へ折り返し電話を頼んだ際に初めて伝えたはずだと店長は話す。その後のやり取りで五十嵐氏は、携帯ではなく店舗の電話に連絡したと一部主張を転じつつも、キャンセルの連絡をしたとの主張は曲げなかったという。

店長はキャンセルの連絡は受けていないと強調し、「30年以上やってますけどこんなこと初めて」「騙されてめちゃくちゃ悔しい」と肩を落とす。

一方、電話口では謝罪や証拠を求め、通報も検討するなどと訴えるなかで、語気が強まる場面があり「怖いと思われた」と自省している。

区議「無断で放棄したという事実はない」

五十嵐氏は4月23日投開票の板橋区議選に社民党公認で出馬、当選し4期目を迎えたばかり。

店側の話が事実であれば、先の予約は16日告示の選挙期間中に入れたことになる。店長夫人は予約を受けた当時、五十嵐氏から名刺と区議としての個人ビラを渡されたとも明かす。

店頭にはコロナ禍以前から、五十嵐氏の立て看板を設置している。数年前、五十嵐氏も参加する宴会がこの店で催された縁によるものだ。そのうえ公人で信用できるとして、今回は予約数日前の再確認を実施しなかったと店長夫人は振り返る。あれから予約客を信頼しきれなくなった、と塞いでいる。

五十嵐氏に予約をめぐる実際の経緯、キャンセルを連絡したのであれば発信履歴は残っているか、今後の対応や見解などを尋ねたところ、11日に下記の回答があった。

「無断で放棄したという事実はございません。事実がない以上、他の質問にお答えすることはできません」

長秀龍の店長によると、12日には警察が店に訪れ、五十嵐氏には事態を穏便に済ませたいとの思いがあると伝えられた。警察を通じて、5〜6万円ほどの金銭を支払う意向があるとの打診があり一時は応じようとするも、考えを改め、今後の対応は経緯をよく知る先述の常連客らに委ねたいとしている。

五十嵐氏にも追加で事実確認の取材を申し入れたが、期日を過ぎた16日昼までに回答はなかった。回答があれば追って伝える。

(18日13時56分追記)五十嵐氏は記事公開後の5月18日、公式サイトに声明を掲載した。「結論から申し上げますと、私はお店に対して、事前にキャンセルの電話をしています」とし、店側の主張に反論した。

声明によると、店を訪れて予約をしたのは4月10日の告示前だった。予約を入れた翌11日夜に、不参加者が複数出たため店舗にキャンセルの電話をしたと説明。携帯電話の発信履歴を映した写真も掲載した。

「電話にはオーナーやそのお連れ合いさんとは違う、日本語が流暢な男性が出ました」とし、その男性にキャンセルの旨を告げたとなどしている。

声明の全文は、https://igarashiyasuko.jp/2023/05/18/17768/にある。

(25日14時22分追記)五十嵐氏は5月24日、電話会社から取り寄せたとする通話の明細を公式サイトに掲載した。店の電話番号に対して59秒の通話をした旨が記されている。

上記の追記とあわせて、記事の見出しを一部修正しました。(編集部)