体調が悪くても、少しくらいなら…と無理をした経験がある方も多いかと思います。生活情報誌のライターとして活動するやまざきさちこさんも、「私は大丈夫」と無理をした結果、昨年脳出血で倒れるという経験をされました。今回は、その経験から感じた「心の備え」についてつづってもらいました。

生死を身近に感じて気づいた、自分にとって大切なこと

忙しくても、ストレスが多くても、それをどこか“よし”としてしまうアラフィフ世代。私自身、50代になって突然、高血圧から脳出血で倒れました。

しかも、倒れたのはお正月休みで、都心のマンションにひとり暮らし。発見まで10日間かかり、命を落としても不思議ではない状況でした。仕事が好きで、無理をしている自覚もまったくなく、自分の健康を過信していたせいです。

命拾いをして仕事に復帰して「今にして思えば…」と振り返ることは、たくさんあります。今回は倒れた身として「こんな心の備えをしておけばよかった」と思うことをお伝えします。

●心身のストレスにもっと敏感であるべき

今のアラフィフ世代は、仕事や家事に「がんばりすぎる」と前回話しました。やるべきことにまい進というよりも、どこか忙しさを“楽しんでしまう”軽さや、“どうにかなる”という甘さがあるかもしれません。

バブル景気の頃に10〜20代を過ごし、「勝ち組・負け組」という言葉が流行した頃に20〜30代を過ごした世代です。常に上を見て、働き盛りといわれる30代後半から、無理を重ねてきた人も少なくないでしょう。

疲れをためて、日常的に睡眠不足…。しかし、ストレスはパッと遊ぶことで帳消しになると信じていました。ストレスに弱い=負けという意識が働くのでしょうか。疲れていても、忙しさに潜む「ストレス」に目を背けた結果、「ストレスは万病のもと」と身をもって知る羽目になりました。

負け組になろうが、自分のストレスになることはイヤ。そうはっきり言える世代を、見習うべきかもしれません。

●家族や身内と「まさか」を共有しておく

「私になにかあったら」と考えたとき、真っ先に家族、身内の顔が思い浮かぶ人は多いでしょう。自分の不安は家族にとっても不安だろうけれど「私が万一、倒れたときは…」と共有しておくことで、不思議と自分自身は落ち着くものです。

家事ひとつにしても、家族に段取りをつけてあると思うと、いざというときに余計な心配をせずにすみます。

縁起でもないと怖がったり、弱音を吐いたりしてはいけないなど、決めつけないことをおすすめします。だって、自分に「まさか」のことがあったとき、大変な不安を抱えることになるのは家族です。本人は大病なほど、闘病や快復することで精いっぱいでしょう。

加齢とともに、ドキリとする健康への気がかりは増えていくものです。家族を不安にさせたくないと思いがちですが、不安をひとりで抱え込まずにすむなら、そうすべきではと今は思います。

●自分にとって大事な「日常」をキープする

もうひとつ「まさか」に備えるならば、病気やケガの対処だけでなく、その先にある「日常」を取り戻すために必要なことも考えておくといいかもしれません。どんな大病でも大ケガでも「快復すれば」という備えがあると、生きる希望や自信につながると思うからです。

いわば、日常を取り戻すための“保険”のようなもの。資金はもちろんですが、ここでいうのはあくまで、心の備えです。

家族をはじめ、大切な人との信頼関係、頼りにできる人や組織、気持ちが明るくなる環境…。まずは、自分の日常でいちばん大事なことはなにかを考えてみます。それをキープするために必要な要素を考えると、当たり前の日常がそうではないと気づくきっかけにもなります。

不安だって、家族や身内とシェアしてもいいのでは。そう考えることから、ストレスが減ったり、大切な人の存在に気づくかもしれません。