「天気予報」や「雨雲レーダー」の信頼度はどれくらい? - 『天気の子』監修の気象庁・荒木健太郎さんに聞く3 - BLOGOS編集部
※この記事は2021年04月14日にBLOGOSで公開されたものです
「天気予報の精度はどれくらい先まで信頼できるの?」、「天気はどうやって予測しているの?」という疑問を、気象庁・気象研究所研究官の荒木健太郎さんにインタビュー。正しい天気予報の見方を教えてもらいました。
様々なアプリから出ている雨雲レーダー 結果は同じ?
現在、雨雲レーダーに関する様々なアプリがありますが、基本的に使っているデータは同じものが多く、異なるデータを使っていても見ている現象は同じなので、表示結果に極端な違いはありません。自分が使いやすいと思うものを使うのがベストですね。
気象庁のページでも「雨雲の動き」を伝えるページがあります。ここではレーダーで雨雲の動きを観測し、5分ごとに雨雲がどう動いているか、1時間先までの予測を表示しています。
また、「今後の雨」というページでは、1時間で雨が降った量を解析し、天気予報の元になるデータなども使って15時間先まで雨雲の分布を予測しています。
これ見ると、「関東の南部では少しだけ雨雲がかかるような部分が今日の後半はありそう」などといった予想を立てることができます。
方法としては気象庁が持っている「数値予報モデル」を使用してシミュレーションしています。雨が現在どこで降っているのか把握するのにも使用しますが、「今後の雨」の予想などでは、日本付近を細かく2キロや5キロ間隔で計算し、この結果を使って雨の予測を出しています。
この計算には衛星観測だけではなくて、地上の観測や風船を飛ばした観測、民間の航空機の観測データやレーダーの観測データなど様々な観測データを組み合わせて使用しています。
天気予報を信頼できるのは何日先まで?
予報の精度は昔に比べると上がっていますが、気象観測には時間がたつほど誤差がどんどん大きくなるという特徴があります。気象は「カオス」の性質を持っていると言われますが、観測データや予測手法のなかに含まれる小さなエラーの影響が、時間がたつにつれて大きくなってしまうからです。
そのため、先ほどあげた数値予報モデルのなかでも2キロ間隔で行うものは、計算コストや誤差の大きさなどを加味して、予測を10時間先までとしています。
3日以降先や週間予報に使用する場合になると、「全球モデル」と呼ばれる地球全体を20キロ間隔ほどで予測するものを使用します。こちらは低気圧や高気圧などの時空間スケールの大きな現象をターゲットにしており、積乱雲などの細かな現象は表現できません。いずれにしても、予測する時間が長くなるとどうしても誤差は大きくなってしまいます。
また、週間予報や台風予報では、「アンサンブル予報」というやり方を行います。少しずつ誤差を与えて、何度も計算を繰り返す方法です。例えば週間予報では1日2回、同じようなシミュレーションをそれぞれ51回行い、誤差の広がりを確認しながら予報が作られています。
週間天気予報は「信頼度」をチェックしよう
天気予報を見る上でチェックしていただきたい項目としては、気象庁の天気予報ページにある「信頼度」という部分です。
報道などで使われることは少なく、知らない方もいらっしゃいますが実は結構重要です。信頼度Aの場合は「明日の予報と同じくらいの確率で当たりそう」、Bだと「4日先ぐらいの予報と同じぐらいの確率」、それより悪いとCになるという意味です。
だから、信頼度がCとなっている時は、予報が変わりそうだというふうに思っていただいて、新しい予報が出るのを待つ、Aの場合は、予報の結果は変わらなそうだなという判断の仕方ができるんですね。
日にちが近いから信頼度が高くなるとは限りません。例えば、低気圧が来る時などは予想がしづらくなり、近い日にちでも信頼度がCとなっている場合もあります。
ニュース番組で流れている天気予報を見ながら、気象庁の信頼度も同時に確認していただけると、より確実に天気を把握することができます。ただ、毎日これをやるのは大変だと思うので、外出の用事があるとか、この日の天気は特に気になるという場合にアクセスすると、天気予報をうまく使えるかと思います。
降水確率100%にまつわる誤解
「降水確率が高い=大雨になる」というイメージを持たれている方も多いですが、これは間違いです。降水確率は雨が降る確率なので、弱い雨でも確実に降りそうな場合は100%になります。一方、大気の状態が不安定で、積乱雲の発生・発達が関係するような局地的な雨などの場合は、降水確率が30%と表示される場合もあります。
そのため、降水確率だけを基準にするのではなく、雨雲レーダーの情報などと併用しながら判断するというのが大切ですね。
特に春から夏にかけては、上空に寒気が入るなどして大気の状態が不安定になると、積乱雲が急速に発達して雷雨になることも増えてきます。
ピンポイントで積乱雲がいつどこに発生するかという予測は現代の技術を使ってもすごく難しいのですが、「できやすい状況になる」という予測はできます。
そのためニュース番組の天気予報コーナーで「大気の状態が不安定」というキーワードが出てきた時には、気をつけましょう。また雷や突風は積乱雲でしか発生しないので、「所により雷」、「竜巻」、「突風」などのワードが出てきた時は、「積乱雲が発生する可能性がある」と考えて、先ほど紹介した『今後の雨』のページや雨雲レーダーの情報を使って、確認していただけるといいと思います。
自分の目で雲を確認することも大切
技術が発達し、精度が上がっているので天気予報を見れば大丈夫と思われる方も多いですが、積乱雲に関してはやはり予測が難しいので、実際に空を見て雲の様子などから天気を予測する「観天望気」も重要です。
観測のポイントとしましては、「入道雲」と呼ばれている積乱雲に発達する前の「雄大積雲」に気をつけることです。この雄大積雲が上昇流を伴い成長することで、湿った空気の層全体を持ち上げると「頭巾雲」ができます。
この雄大積雲の頭の上に雲がかかっているのは、今まさにものすごい勢いで雲が発達していることを意味しているので、大気の状態が不安定だということがわかります。
他には、青空の一方向から濃くて高い雲が広がっている場合は、この先に限界まで発達している積乱雲がある可能性が高いということです。
雄大積雲が発達し、限界の高さまで行くと、雲は行き場をなくして横に広がっていきます。この構造を「かなとこ雲」と呼ぶのですが、この下は土砂降りの雷雨です。かなとこ雲が広がってきたものは「濃密巻雲」と呼ばれ、この雲の底の部分にぼこぼこした「乳房雲」という雲ができることがあります。これは注目したほうがいい雲で、積乱雲の進行方向に現れることが時々あります。
そのため、この雲が自分の真上の空に現れている時には、自分のところに積乱雲が向かって来ている可能性があると考えて、雨雲レーダーの情報など確認し雲の動きや位置をチェックすると、突然の雷雨で濡れるということを防げると思います。
雨雲レーダーや天気予報、気象庁の予測といった観測技術に加えて、自分の目で雲を確認する方法を身につけて、天気の動きを予測していただければと思います。
語り手プロフィール
荒木健太郎
雲研究者。気象庁気象研究所研究官。博士(学術)
1984年生まれ。茨城県出身。慶應義塾大学経済学部を経て気象庁気象大学校卒業。地方気象台で予報・観測業務に従事した後、現職に至る。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために、豪雨・豪雪・竜巻などによる気象災害をもたらす雲の仕組み、雲の物理学の研究に取り組んでいる。著書に『空のふしぎがすべてわかる!すごすぎる天気の図鑑』、『雲を愛する技術』、『世界でいちばん素敵な雲の教室』、『雲の中では何が起こっているのか』、『せきらんうんのいっしょう』、『ろっかのきせつ』など。監修に映画『天気の子』(新海誠監督)、『天気と気象の教科書』(Newton別冊)、『気象のきほん』(Newtonライト)などがある.
