4月9日、さいたまスポーツアリーナで行なわれる"日本ボクシング史上最大の一戦"。WBA 世界ミドル級スーパー王者の村田諒太(帝拳)とIBF同級王者ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)の統一戦はどんな試合になるのか。

 41勝(36KO)1敗1分という見事な戦績を誇り、過去にWBA王座を合計19度も防衛したゴロフキンは、現代を代表するスーパースターのひとり。それほどの選手の来日戦は、歴史的な戦いになることが約束されている。

 ゴロフキンが村田に勝った場合、「パウンド・フォー・パウンド最強」の称号を欲しいままにするサウル・"カネロ"・アルバレス(メキシコ)との第3戦がすでに内定している。そんな背景もあって、アメリカの時間で4月9日の早朝に行なわれる今戦は、本場での注目度も高い。

 そこで今回は、アメリカに本拠を置く7人のベテラン記者に3つの質問をぶつけ、勝負の行方を占ってみた。


ゴロフキンとのビッグマッチの行方が注目される村田

【パネリスト】

●ジェリー・クーニー(元世界ヘビー級タイトル挑戦者。元祖"ホワイトホープ"と呼ばれて1970−80年代に一世を風靡し、ラリー・ホームズ、マイケル・スピンクス【ともにアメリカ】に挑戦した)

●ジェイク・ドノバン(『Boxingscene.com』のシニアライター。全米ボクシング記者協会(BWAA)でもエグゼクティブを務める)

●スティーブ・キム(元『ESPN.com』のメインライター。韓国系アメリカ人。業界内に幅広い人脈を持つ)

●マルコス・ビレガス(『Fight Hub TV』の創始者で、インタビュアー。『FOX』のボクシング中継では、昨年まで非公式ジャッジを務めた)

●ライアン・オハラ(『リングマガジン』のライター。コロラド州在住。丁寧な取材に裏打ちされた流麗な記事を執筆する)

●ショーン・ナム(『Boxingscene.com』の通信員として活躍する韓国系アメリカ人ライター。精力的な取材で構築したネットワークによるインサイダー情報に定評がある)

●ノーム・フラーエンハイム(アリゾナ州在住のスポーツライター。『アリゾナ・レパブリック』紙、『LAタイムズ』などで記事、コラムを執筆)

Q1 世間では「ゴロフキン優位」の声が多いが、村田が接戦に持ち込むためにやるべきことは?

クーニー 多くの人の見方とは違うかもしれないが、村田は距離を取って戦うべきだと私は考えている。ゴロフキンと正面からまともに打ち合ったら厳しい。カネロとの第2戦以降のゴロフキンは、リング上で相手を追い詰める能力に陰りが見られ、ボディを打たなくなっている。村田は適度な距離を取り、離れた場所から持ち前のパンチを生かす展開になれば、GGG(ゴロフキンの愛称)相手にも勝機は見えてくるかもしれない。

ドノバン ミドル級、全階級を通じても、村田はゴロフキンと同等の「アゴの強さ」を持つ数少ない選手かもしれない。村田は自分の打たれ強さを信じ、ゴロフキンを運動量で凌駕しなければならない。十分なパワーを持ち、サイズ的にも上回っている。ふたりともブランク明けだが、ゴロフキンは40歳になって衰えの兆候を見せている。村田は積極的に攻め、ゴロフキンがリング上で快適でいられないようにする必要があるだろう。

キム やはりゴロフキンが優位で、村田が勝とうとするなら"若手選手のように"戦う必要がある。早いペースで手数を出し、ゴロフキンを守備的にさせたいところだ。ゴロフキンはジャブを得意としているだけに、村田がアウトボクシングすることは考えにくい。とにかく前に出てプレッシャーをかけ、ゴロフキンを下がらせることができればチャンスは見えてくるかもしれない。

ビレガス 村田は、カネロがゴロフキンとの2戦目で用いた戦術を取り入れるべきだ。前に出て、GGGを下がらせ、力を込めてパンチを出す体勢が整わないようにする。その戦い方を有効化するには、一定以上のパワーが不可欠だが、村田がそれを持っているかはわからない。試合中にそれを証明する必要がある。距離を取ろうとした場合、ゴロフキンの狙いすました強打を浴びる可能性があり、有効な戦法とは思わない。

オハラ 村田は過去にゴロフキンが苦しんだ選手たちと似た特徴を持っていると思う。いいジャブと堅実なボクシング技術を持ち、ボディも打てる。ただ、スピードとディフェンス力に欠けることが命取りになるかもしれない。40歳のゴロフキンがまだ力を保っていた場合、やはりストップ勝ちする可能性が高いのではないか。

ナム ゴロフキンが全盛期と比べれば衰えていると考え、積極的に戦いに臨むべきだ。無鉄砲に攻めろという意味ではないが、萎縮してはいけない。ゴロフキンの戦歴を振り返ると、リング中央の攻防で先手を取れる選手が一定の成功を収めてきた。村田にはセルゲイ・デレビャンチェンコ(ウクライナ)のような機動力や器用さ、カネロのようなカウンターパンチこそないが、パワー、ガードの堅さがあり、連打をまとめられることも示してきた。

 ゴロフキンの序盤の攻勢をやり過ごしたあと、村田がコンビネーションパンチを打てるかどうかがカギになる。ゴロフキンは村田のような俊敏さに欠ける選手との戦いは得意としてきたが、もう40歳であることを忘れてはいけない。マニー・パッキャオ(フィリピン)ですらも不惑を迎えたあとは陰りを見せたのだから、番狂わせが起こったとしても私は"クレイジー"だとは思わない。

フラーエンハイム リング上でゴロフキンの衰えを感じ取った場合は、村田は早い段階から仕かけていくべきだ。GGGの両拳に宿るパワー、闘争本能は健在だろうから、その射程距離に入ることにリスクはある。それでも激しく出入りした上での連打が必要になるだろう。

Q2 試合の展開予想は?

クーニー ゴロフキンが力を残していれば、終盤で村田をKOすると思う。ふたりとも実戦からかなり離れているため予想は難しいが、「この試合に敗れること=キャリアの終焉」と理解しているはずのGGGは、現状で最高のコンディションを作ってくると見ている。

ドノバン 今戦が発表された時、私はゴロフキンが終盤でKOするか、判定で勝つと考えた。本番が近づくにつれ、その予想に自信がなくなってきている。それでも「第1印象を信じろ」という論理に基づき、ここではゴロフキンの判定勝利を推したい。両者が試合から遠ざかってきたことを考慮すれば、村田が判定勝ちを飾っても驚かないが、より"安全な予想"をしておきたい。

キム ゴロフキンは、フィジカルのピークは過ぎたとしても依然として強者だ。"パンチ力は最後に失われるもの"というのがボクシングの定説。村田はガードこそ高く上げているが、隙間からパンチを打ち込まれる傾向にある。ゴロフキンが強打を打ち込み、9回にKO勝ちを収めると見ている。

ビレガス GGGのKO勝ち。

オハラ ゴロフキンの10回TKO勝ち。

ナム 激闘の末、ゴロフキンが11回KO勝ちを収める。

フラーエンハイム ゴロフキンがどれだけの力を残しているか、本人も、村田も、誰もわからない。その答えは、今戦の6ラウンドあたりで見えてくるように思う。私の脳裏には、42歳のパッキャオがヨルデニス・ウガス(キューバ)戦で苦杯をなめた姿がよぎる。パッキャオですら年齢による衰えから逃れられなかったのだから、ゴロフキンも苦戦を強いられるのではないか。大接戦の末、ゴロフキンがなんとか2−0での判定勝ちを手にすると見る。

Q3 両者ともキャリアの終盤に差しかかっていると思うが、今戦の勝者はさらなるビッグファイトが可能な力を残しているか?

クーニー ゴロフキンが村田を下したとしても、次の相手がカネロならば相当に苦しい戦いになるはず。カネロは若く、波に乗っており、しかもゴロフキンが経験していないスーパーミドル級での戦いになる。条件的にはかなり厳しい。トレーナーのジョナサン・バンクスの助けを借りて、ボディ打ちの有効性を思い出すことでもない限り、ゴロフキンが今のカネロの牙城を崩すのは至難の業だ。

ドノバン ゴロフキンがカネロとのラバーマッチ(同一選手同士の3試合目)に臨んだら、何度も激闘になったパッキャオvsファン・マヌエル・マルケス(メキシコ)のように、また接戦を演じる可能性はある。それでもGGGが、キャリアの"黄昏期"にいることは間違いない。私は村田のほうが余力を残しているとも感じている。村田がゴロフキンを下した場合、階級を上げるのは難しいとしても、ミドル級での統一戦が見えてくるはずだ。

キム 9月にカネロ戦が内定しているゴロフキンにとって、「どんな内容で村田に勝つか」が問われてくる。それによって、カネロとのラバーマッチへの期待感も変わってくる。一方、村田が勝ったとすれば、日本ボクシング史上でも最大級の勝利となるだろう。その場合、村田はミドル級の別の王者と統一戦を行ない、さらに大金を手にできるだろう。

ビレガス ゴロフキンは40歳になっても、カネロにとって難しい相手であり続けるかもしれないと考えている。ゴロフキンはこれまでのキャリアで、それほど多くのダメージを溜め込んでいない。彼の活躍をあと数年楽しめるとしたら、ボクシング界にとっていいことだ。

オハラ ゴロフキンはカネロとの第3戦で、すばらしい試合をすると見ている。

ナム ゴロフキンに関して、村田との戦いぶりから多くのことが見えてくるだろう。村田に勝てば、内定しているカネロ戦がキャリア終幕の一戦になるかもしれない。GGGはそれ以上、戦い続けることを望んでいないようにも思える。

 一方、村田も長くブランクがあったことを考えると、ゴロフキンとの試合が最後の一戦になっても不思議ではない。ただ、村田が勝った場合は"商品価値"を大きく上げることは事実だ。カネロは海外戦を望んでいることもあり、日本での村田戦が自然な形で現実味を帯びていくだろう。

フラーエンハイム ゴロフキンvsカネロの第3戦のPPV売り上げは、ゴロフキンが村田戦でどんな戦いを見せるか次第。豪快なKO勝ちを飾れば盛り上がるし、判定勝ちであればそうはならない。個人的には、現在のゴロフキンに5年前のようなパフォーマンスを望むべきではないと思っている。