転売ヤーを叩くだけでは効果はない! 悪質な転売を減らすには「買い占め」を防止する対策が重要
9月18日にソニー・インタラクティブエンタテインメントの次世代ゲーム機「PlayStation 5」(プレイステーション5:以下、PS5)の予約販売の受け付けが開始された。
前日にはPS5の価格が発表されており、通常機が4万9,980円、ディスクレスのデジタルエディションが3万9,980円という価格がファンを驚かせた。
このPS5の価格はマシンスペックを考えると破格で「もっと(販売価格が)高くても買う」といった声がネット上でも多くあがっていた。
そんなPS5の予約販売が開始されるとすぐに、ECサイトでの高額転売が次々に現れ、Twitterをはじめネット上で多くの批判的な意見を集めることになった。
未発売の商品のため、あくまでも「予約販売」だが転売価格は39万〜50万円と、通常価格の10倍もの価格が設定されていた。
「39,990円」ではなく「399,900円」。
このように、あきらかに購入者の誤認を狙った悪質な価格設定も目立った。
新型ゲーム機のPS5
PS5は人気製品でありながら価格面も抑えたことで購入希望者が殺到したわけだが、供給数が圧倒的に少ないことで「悪質な転売行為」を誘発してしまうことになってしまった形だ。
こうした悪質な転売行為は、新型コロナウイルス感染症が世界的に流行した今年は特に顕著で、
・マスクや消毒、除菌関連製品
・トイレットペーパーやティッシュペーパーなどの紙製品
・一部の食料品
・一部の医療製品
など、様々な分野の商品でも数多く見受けられた。
不正な転売、悪質な転売。
これらは、
何が問題なのか?
発生する原因は何なのか?
どのようにすれば減らせるのか?
今回は転売について考えてみたい。
●転売行為は「悪」なのか?
多くの人が理解していると思うが「転売」自体は「悪」ではない。
オークションサイトやフリーマーケットなど物品の転売は昔から行われているし、家電製品や書籍、衣料、家具などをはじめとした中古市場も存在している。
そもそも中古商品に限らず、モノの売買は転売の繰り返しである。
例えば、ある商品を販売する場合、販売店は仕入れ先から商品を購入し、仕入れ金額にいくらかの利益を乗せて顧客に商品を販売する。この一連の流れは物流における基本だ。
一般的な物販の場合、数量を多く仕入れるほど単価は下がる傾向にある。販売する際、仮に単価1,000円以上の利益を得たいと思っていても、その通りの値付けをすると売れない商品は、もっと利益を下げなくてはならない。
価格設定は、相場や競合店を日々注視しながら、顧客が買いたいと思える必要性がある一方、ビジネスとしては最大限の利益を生み出す必要がある。
安過ぎず、高過ぎず、絶妙な価格設定が重要なのだ。
つまり「安く仕入れて高く売る」と、ひと言で言っても、きちんと実現するためには日々の調査や企業努力が必要不可欠なのだ。
冒頭で紹介したPS5は、比較的素人でもわかりやすいが、
それでもPS5がどの程度の人気なのか?
こうした市場動向の情報にアンテナを張っておかなければならない。
また、
どの程度売れるのか?
儲かるのか?
こうした市場予測もできなければならない。
その上で、転売によって利益を生むためには入荷(仕入れ)の問題を解決しなければならない。
さらに価格をいくらに設定するのか?
購買意欲を高められる見せ方は?
こうしたことも考慮しなければならない。
転売に限らず、製品を仕入れて販売するということはそういうことなのだ。
悪質な転売ヤーを擁護するつもりはないが、そもそもモノを販売して利益を上げるためには、それ相応の努力と苦労が必要で、読み間違えれば、大きな損害となるリスクも伴うのだ。
悪質な転売ヤーは決して許されるべきではない。
しかし、良心的な転売ヤーまで批判するのは間違いだ。
また、悪質な転売ヤーを批判する声は多いが、高額で購入してしまう人は批判されない。
悪質な転売ヤーが存在するのは、高額でも購入してしまう人がいるからであることを忘れてはならない。
高額でも購入する人=「需要」があるから、悪質な転売屋=「供給する者」が現れる。
こうした図式が、悪質な転売ヤーが減らない理由でもあるのだろう。
一方で、別の見方や意見もある。
「本来、高額な転売品には需要がない」
「転売ヤーが製品を買い占めたことで、高額購入するしかなくなる」
こうした見方から考察すると、
悪質な転売の原因は、「需要」だけではないことに気付く。
それは「転売行為」が問題なのではなく、「買い占め行為」が問題の本質なのではないか?
ということだ。
●不当な買い占め行為を抑止することが重要
筆者は過去に、書籍やDVDなどの新品商品を販売していたショップで働いていた経験がある。
その店舗ではメーカーに返品可能な新品販売のほかにも、買い取り商品も数多くあった。買い取り商品は、店舗が買い取っているためメーカー(仕入先)には返品できない。
つまり、買い取り品が売れ残った場合は、不良在庫ということになるのだ。
結果、不良在庫は定期的に大幅値下げをして特価商品としてさばいていた。
そうした特価商品を目当てに、しばしば転売ヤーと思われる人物も来店していた。
転売ヤーは、30〜50%ほど値引きのDVDを一気に10万円以上購入していったこともあった。
不良在庫の処分では店側は利益が少ない、あるいは利益が上がらないことも多く、売れば売るほど赤字というケースもあるが、不良在庫をいつまでも抱えているよりは、少しでも在庫を減らして現金化するほうが「マシ」という選択をすることもある。
こうしたケースでの「買い占め」や「転売」は、
・不人気(購入希望者が少ない)
・入手が容易(商品が余っている)
これらの理由から、被害者を生まないため「悪」にはならない。
しかし、PS5のように
・人気(購入希望者が多い)
・入手困難(商品が足りない)
こうした状況の場合では、「買い占め」や「転売」が「悪」となるのである。
転売ヤーが「悪」となる条件は、
「品薄な人気商品」で「買い占め行為」が存在する場合と考えられる。
つまり商品の「買い占め行為」によって、
市場に品薄状態を作り「需要」を生み出していることが問題なのだ。
このように考察すれば、
提供者側が、1人あたりの販売数の制限をし「買い占め行為」を抑制すれば、大規模で悪質な転売行為は抑止できる可能性がある。
例えば、メーカーや店舗などが、
・販売数制限をかける
・制限数以上の購入は本人確認物や、申請書の提出を義務付ける
申請書により大量購入者をデータ化し、特定することもできる。
こうした対策だけで、悪質な転売ヤーをすべて無くすことはできないだろうが、
安易な「買い占め行為」を抑止することで、市場での品薄と購入需要を故意に生み出すといった「悪質な転売買」の抑止に繋げることはできるかもしれない。
執筆:S-MAX編集部 2106bpm
前日にはPS5の価格が発表されており、通常機が4万9,980円、ディスクレスのデジタルエディションが3万9,980円という価格がファンを驚かせた。
このPS5の価格はマシンスペックを考えると破格で「もっと(販売価格が)高くても買う」といった声がネット上でも多くあがっていた。
そんなPS5の予約販売が開始されるとすぐに、ECサイトでの高額転売が次々に現れ、Twitterをはじめネット上で多くの批判的な意見を集めることになった。
未発売の商品のため、あくまでも「予約販売」だが転売価格は39万〜50万円と、通常価格の10倍もの価格が設定されていた。
「39,990円」ではなく「399,900円」。
このように、あきらかに購入者の誤認を狙った悪質な価格設定も目立った。
新型ゲーム機のPS5
PS5は人気製品でありながら価格面も抑えたことで購入希望者が殺到したわけだが、供給数が圧倒的に少ないことで「悪質な転売行為」を誘発してしまうことになってしまった形だ。
こうした悪質な転売行為は、新型コロナウイルス感染症が世界的に流行した今年は特に顕著で、
・マスクや消毒、除菌関連製品
・トイレットペーパーやティッシュペーパーなどの紙製品
・一部の食料品
・一部の医療製品
など、様々な分野の商品でも数多く見受けられた。
不正な転売、悪質な転売。
これらは、
何が問題なのか?
発生する原因は何なのか?
どのようにすれば減らせるのか?
今回は転売について考えてみたい。
●転売行為は「悪」なのか?
多くの人が理解していると思うが「転売」自体は「悪」ではない。
オークションサイトやフリーマーケットなど物品の転売は昔から行われているし、家電製品や書籍、衣料、家具などをはじめとした中古市場も存在している。
そもそも中古商品に限らず、モノの売買は転売の繰り返しである。
例えば、ある商品を販売する場合、販売店は仕入れ先から商品を購入し、仕入れ金額にいくらかの利益を乗せて顧客に商品を販売する。この一連の流れは物流における基本だ。
一般的な物販の場合、数量を多く仕入れるほど単価は下がる傾向にある。販売する際、仮に単価1,000円以上の利益を得たいと思っていても、その通りの値付けをすると売れない商品は、もっと利益を下げなくてはならない。
価格設定は、相場や競合店を日々注視しながら、顧客が買いたいと思える必要性がある一方、ビジネスとしては最大限の利益を生み出す必要がある。
安過ぎず、高過ぎず、絶妙な価格設定が重要なのだ。
つまり「安く仕入れて高く売る」と、ひと言で言っても、きちんと実現するためには日々の調査や企業努力が必要不可欠なのだ。
冒頭で紹介したPS5は、比較的素人でもわかりやすいが、
それでもPS5がどの程度の人気なのか?
こうした市場動向の情報にアンテナを張っておかなければならない。
また、
どの程度売れるのか?
儲かるのか?
こうした市場予測もできなければならない。
その上で、転売によって利益を生むためには入荷(仕入れ)の問題を解決しなければならない。
さらに価格をいくらに設定するのか?
購買意欲を高められる見せ方は?
こうしたことも考慮しなければならない。
転売に限らず、製品を仕入れて販売するということはそういうことなのだ。
悪質な転売ヤーを擁護するつもりはないが、そもそもモノを販売して利益を上げるためには、それ相応の努力と苦労が必要で、読み間違えれば、大きな損害となるリスクも伴うのだ。
悪質な転売ヤーは決して許されるべきではない。
しかし、良心的な転売ヤーまで批判するのは間違いだ。
また、悪質な転売ヤーを批判する声は多いが、高額で購入してしまう人は批判されない。
悪質な転売ヤーが存在するのは、高額でも購入してしまう人がいるからであることを忘れてはならない。
高額でも購入する人=「需要」があるから、悪質な転売屋=「供給する者」が現れる。
こうした図式が、悪質な転売ヤーが減らない理由でもあるのだろう。
一方で、別の見方や意見もある。
「本来、高額な転売品には需要がない」
「転売ヤーが製品を買い占めたことで、高額購入するしかなくなる」
こうした見方から考察すると、
悪質な転売の原因は、「需要」だけではないことに気付く。
それは「転売行為」が問題なのではなく、「買い占め行為」が問題の本質なのではないか?
ということだ。
●不当な買い占め行為を抑止することが重要
筆者は過去に、書籍やDVDなどの新品商品を販売していたショップで働いていた経験がある。
その店舗ではメーカーに返品可能な新品販売のほかにも、買い取り商品も数多くあった。買い取り商品は、店舗が買い取っているためメーカー(仕入先)には返品できない。
つまり、買い取り品が売れ残った場合は、不良在庫ということになるのだ。
結果、不良在庫は定期的に大幅値下げをして特価商品としてさばいていた。
そうした特価商品を目当てに、しばしば転売ヤーと思われる人物も来店していた。
転売ヤーは、30〜50%ほど値引きのDVDを一気に10万円以上購入していったこともあった。
不良在庫の処分では店側は利益が少ない、あるいは利益が上がらないことも多く、売れば売るほど赤字というケースもあるが、不良在庫をいつまでも抱えているよりは、少しでも在庫を減らして現金化するほうが「マシ」という選択をすることもある。
こうしたケースでの「買い占め」や「転売」は、
・不人気(購入希望者が少ない)
・入手が容易(商品が余っている)
これらの理由から、被害者を生まないため「悪」にはならない。
しかし、PS5のように
・人気(購入希望者が多い)
・入手困難(商品が足りない)
こうした状況の場合では、「買い占め」や「転売」が「悪」となるのである。
転売ヤーが「悪」となる条件は、
「品薄な人気商品」で「買い占め行為」が存在する場合と考えられる。
つまり商品の「買い占め行為」によって、
市場に品薄状態を作り「需要」を生み出していることが問題なのだ。
このように考察すれば、
提供者側が、1人あたりの販売数の制限をし「買い占め行為」を抑制すれば、大規模で悪質な転売行為は抑止できる可能性がある。
例えば、メーカーや店舗などが、
・販売数制限をかける
・制限数以上の購入は本人確認物や、申請書の提出を義務付ける
申請書により大量購入者をデータ化し、特定することもできる。
こうした対策だけで、悪質な転売ヤーをすべて無くすことはできないだろうが、
安易な「買い占め行為」を抑止することで、市場での品薄と購入需要を故意に生み出すといった「悪質な転売買」の抑止に繋げることはできるかもしれない。
執筆:S-MAX編集部 2106bpm