ビジネス現場での"正しいFuck"の使い方
■「正しいFUCKの使い方」という本がヒットする理由
はじめにお断りしておきたい。ここに掲載されているフレーズに関しては、迂闊に発してはいけない。特に外国人に言ったら、とんでもないことになる。欧米ではテレビ、ラジオなどメディアの放送禁止用語だからだ。
その言葉とは……「Fuck」「Shit」である。一般的には「くそったれ」「ちくしょう」など、怒り・苛立ち・嫌悪・失望・困惑といった負の感情を表すことが多い。似た意味を持つ「Damn」「Hell」などならまだ発言しても大きな問題にはなりにくいが、前出の2語はメディア以外でも基本的には使ってはいけない下品でタブーな言葉の筆頭格といえるだろう。
ただ、「取り扱い注意」という大前提はあるにしろ、こうした俗語が、以前から流通していた現地の貧困層やブルーワーカーなど低収入層だけではなく、次第にホワイトカラー層などにもかなり浸透してきているようだ。
日本にオフィスのある外資系企業のネーティブの社員たちの間でも食事や休憩など非公式な場でやりとりされている。それだけに、同じ職場で働く日本人としては、その意味を理解できるようにしておく必要があるのも事実だ。
そうしたニーズを読み取ったのか、2014年に『正しいFUCKの使い方』(トランスワールドジャパン)が出版された。「学校では教えてくれない」99のフレーズを掲載しており、この手の書籍としては大ヒットの3万部を売り上げている。
25年以上もニューヨークなどアメリカに在住するアーティストMADSAKIさんが監修した言葉の数々はどれも“ビビッド”。とはいえ、「役立つ」英語教育本ではないのに、誰が何の目的で購入するのだろうか。
「想定外でしたが欧米人にウケています。日本在住の外国人がユーチューブやSNSで、『こんな面白い本がある』『アメリカではこんなにおおっぴらにFワードを扱っている本はありえない』と紹介してくれます。また、日本在住のネーティブ講師が日本人の生徒に対して、本に載っているフレーズを、“これが生きた英語”とこっそり教えるケースもあるようです」(同社書籍編集部長・喜多布由子さん)
本の中にある会話のシチュエーションは、主に男女間のトラブルなどプライベートなものが多いが、今回、ビジネスシーンで使うこともあるフレーズをピックアップした。
■試験に絶対出ない"現代ビジネスパーソンの基礎英語"
例えば、大事な顧客にプレゼンテーションする部下などに対して上司が言うことがある「Don't fuck it up」。ヘマするなよ、という意味だが、身振り手振りを交えた冗談っぽい穏やかな語調にしないとパワーハラスメントに認定される危険性がある。
また、イヤミばかりの性格の悪い上司に対する陰口として「Fuck face」。かなり露骨な言い回しだが、上司が女性であれば、「She is fuck face」となるという。
こんな使い方もある。自分が昇進する、との噂が出て、同僚に、「会社の査定って気になる?」と聞かれたような際には「I don't give a fuck(shit)」と返す。(査定なんて)どうでもいいよ、関係ないよ、という意味だ。
「Fuck」も「Shit」もネガティブなニュアンスが基本だ。割に合わない仕事を上司からふられたようなときに心の中で叫ぶ「Fucking bullshit」(ありえない、やってられない)はその代表例だが、逆のパターンもある。
「Fucking amazing」(驚きをにじませ「恐れ入ったな」)など、「Fuck」がその後の言葉の強調語として機能するフレーズは意外に多い。
「fuckはvery muchのように副詞や形容詞の強調表現です。感情が高まったようなときに、いい意味でも悪い意味でも使う“人として本来あるべき感情表現”といってもいいのではないでしょうか」(同)
日本語で言えば、「超〜」「め(っ)ちゃ」「マジ〜」「クソ〜」というのと同じ働きをするとも考えられる。
■外資系社員が使うこともある「Fuck、Shit、Bitch文例集」
ところで、Fワードがホワイトカラー層に浸透したのはどんな理由か。
「20世紀後半のNYやロンドンなどの証券マンや金融投資トレーダーが使い始めたことで広まったのではないかという説があります」(同)
顧客獲得競争が激しく、秒単位で大金を得たり失ったりする、切った張ったの業界でサバイバルしている人々が自らを鼓舞したり緊迫した空気を和らげようとしたり感情を吐き出したりするときに使っていた「Fuck」や「Shit」をその他の業界の人々や、一流大学出身の育ちのいい人々も使うようになったのではないかというのだ。
ちなみに、2014年に公開された映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』には「Fuck」という言葉が上映時間3時間内に506回出てくる(「ギネス世界記録」認定されている)。
主演のレオナルド・ディカプリオが演じるのは、かつて実在した、20代の若さで億万長者となった株式ブローカー、ジョーダン・ベルフォートだ。
主に電話セールスでクズ株を「ラクして儲けたい」客に売りつける会社のトップとして、部下の士気を上げるため、やたらに「Fuck」を吐き、ハイテンションに導くわけだ。
とはいえ、実社会では、これらの言葉を発するのがタブーなのは事実。意味を知るにとどめて、自分では使わないほうが身のためだろう。
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Fuck編
Fucking amazing man:ヤバいね・超いいね
想定外の成果をあげた同僚や部下などに対して、驚きの感情を込めて「恐れ入った」と称賛するフレーズ。「Fucking good」(超いい)などの表現もある。「Fucking 〜形容詞」は形容詞部分を強調。
Fuck yeah:当たり前だろ
「一緒にこの仕事してくれる?」などと仕事仲間から依頼されたとき、「もちろんだよ、当たり前」と気持ちよく引き受けるようなケースでしばしば使う。「Yes」を強める表現。逆に「絶対イヤ」は「Fuck no」となる。
Don't fuck it up:しくじるなよ
重要な案件を託す部下に、「頼むから、(仕事を)ヘマするなよ」と冗談交じりに圧力をかけるような表現。語気強くストレートに言うと、パワハラ認定される危険性が高い。一般的には「Don't mess it up」。
Shit編
I don't give a shit(fuck):どうでもいいよ
社内で昇進するとの噂がある人物に、「上司からの査定って気にならないの?」と問われ、「そんなの、どうでもいいよ、俺は関係ないね」と返すようなときの表現。強がりか、本心か、は身振り手振りで判断。
The shit:すげー、素晴らしい
卓越した働きぶり、仕事の成果を残した同僚や部下などを評する言葉。下品な言葉に「The」を付けることで、最上級のものであることを表現。「Your car is the shit」(お前の車、最高だな)のように使う。
Bitch編
bitches:親友、女友達
Bitchの複数形。数人の女性たちが集まっている状態を指している。主に女性が女性に言う言葉で、男性が男性に親愛を込めて「お前ら」というのに近いニュアンス。男性が女性に発すると確実にトラブルになる。
This work is a bitch:面倒くせえ仕事
「Bitch work」は誰もやりたくない仕事の意。これも、面倒くさい、ほかに、単純作業すぎてつまらない、個人の能力やスキルは必要ない仕事だと敬遠したい気持ちも込められている。男女ともに使うフレーズ。
*上記は『正しいFUCKの使い方』『正しいBITCHの使い方』(ともにトランスワールドジャパン)で紹介されているフレーズをもとに編集部で作成。
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※この記事では、日常英語会話の理解を深めるために、不適切とされる英語表現をあえて掲載しました。
(フリーランス編集者/ライター 大塚 常好 写真=PIXTA、iStock.com)
