「これはとんでもなく厄介なものが流出したな!」。内閣官房情報セキュリティセンターの職員が、あるデータをファイル交換ソフトWinnyのネットワーク上で発見して、思わず大きな声を出した。周囲の職員もモニターを覗き込んで、今後想定される事態を想像しながら困り顔になった。「これはマスコミも騒ぐだろうな」。上席が唸りながら、あるところに電話を入れていた。

 内閣官房情報セキュリティセンター、略称NISCから緊急の連絡を受けた金融庁は、監督下の金融機関に不祥事が発生したことを知り、直ちに対応の検討を開始した。

 NISCによれば、Winnyのネットワーク上で閲覧可能になっているファイルは、C銀行の取引先である企業に関する詳細な与信情報データ、さらに厄介なことは、ある行員の私生活に関わる猥褻な写真や個人情報が多数含まれていたことだった。ほぼ間違いなく、当該行員の管理下にあるパソコンが不正なウィルスに感染し、流出したものと思われた。

 誰かがこのファイルに気づき、2ちゃんねる等のサイトにファイル名等を公開した瞬間、このファイルは世間の多くの目に触れることになるだろう。現時点でのWinnyの利用者は約50万人前後、NISCのスタッフが厄介なことになると思ったのも当然のことだろう。

 かつてWinnyのネットワーク内で防衛庁の機密情報が流出し、国防に関わる大問題となったことがあったが、その際にも閲覧可能となった情報を消去することはできなかった。Winnyネットワーク内で一度閲覧可能となった情報は、どのような方法をもってしても消去できないことこそが、問題の最も困難な部分なのである。

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