小児がん、後遺症、いじめ。生きづらさ抱え続けた女性が「それでも私は運に恵まれた」と前を向けた「人生の教訓」
幼いころに小児がんを経験し、大人になった今でも後遺症に悩まされている愛迷みんみんさん。今年3月に第1子を出産し、母になりました。ハイリスクな出産を経て愛迷さんが感じたのは、「命が繋がっていくこと」の尊さでした。生きづらさを抱え続けた半生を「それでも私は運に恵まれた」と今、振り返ります。
【写真】28年前、がんの治療をしてもらった主治医と産後再会を果たす愛迷みんみんさん(16枚目/全16枚)
「子どもは無理だろう」抱えていた不安
── 幼少期に小児がんを経験し、心不全と片肺の機能不全などの後遺症を抱えながら生活する愛迷さん。結婚や妊娠については、どのように感じていましたか?
愛迷さん:がん治療の影響で、子どものころから数々の後遺症や不調を抱えてきたため、「結婚できても、妊娠は難しいかもしれない」と考えていました。でも、「いつかは子どもを産んで育てたい」という気持ちはずっとあって。だから妊娠がわかったときは、本当に嬉しかったです。
ただ、いっぽうで「自分の体は出産に耐えられるかな」という不安もすごく大きくて…。
── 妊娠後も不安は続いていたのですね。妊娠中の体調はいかがでしたか?
愛迷さん:ハイリスクな妊娠生活でした。妊娠初期には、出血などの切迫流産の兆候が出てしまったり、胎盤が正常より低い位置に付着する「前置胎盤」になったり。さらに、妊娠30週で肺炎にかかってしまい、入院することになってしまいました。
その後は、病院で絶対安静で過ごし、赤ちゃんと母体の負担を考えて34週のときに帝王切開で出産。早産だったため、生まれてきた赤ちゃんは、未熟児としてすぐにNICU(新生児集中治療室)に入れられました。
── ご自身が小児がんを経験しているからこそ、赤ちゃんへの思いも強かったのではないでしょうか。
愛迷さん:はい。私自身、子どものころから後遺症でつらい思いをしてきたため、「未熟児で生まれた赤ちゃんに、何かしらの後遺症が残ってしまうのでは」と不安で仕方ありませんでした。自分の体調もよくなかったのですが、それ以上にわが子のことばかりを気にしていました。
「生きていてよかった」幼少期の主治医が面会に
── お子さんが無事に退院できたときは、どのような気持ちでしたか?
愛迷さん:後遺症が残らず、元気に退院できたときは本当に安心しました。私が幼少期のころ、がんの治療をしてくださった先生も退院前に会いに来てくれて。寛解後も再発を繰り返し、「治療法がない」という状況でも諦めずに私の命を救ってくれた先生に、わが子を抱っこしてもらっている。その光景を見たとき、自分が生き延びた意味を初めて実感できたような気がしました。
── 退院後の育児では、どんなところに大変さを感じていますか?
愛迷さん:妊娠中、心不全などの薬を控えていたため症状が悪化してしまい、出産直後は強い息苦しさや息切れに悩まされました。産後、薬の服用を再開してからは少しずつ落ち着いてきて、今は穏やかに育児生活を送ることができています。
とはいえ、私は後遺症で左腕の可動域がせまく、肩より上に腕を上げることができません。そのため、赤ちゃんを抱き上げたり、ミルクをあげるときの姿勢を支えるのも大変でした。今は夫が育休をとってくれているので、一緒に育児をすることができていますが、育休明けは、私がもっとしっかり子どもを守っていけるようにならないと、と思っています。
「それでも私は運がいい」生きてきたからこそ
── ご自身が母親になったことで、見えてきたものもありましたか?
愛迷さん:私ががんと闘病していたころの、母の思いが少しわかるようになってきました。長期間の入院生活と、つらい治療であっても、母はいつも明るく笑顔で接してくれていました。でも大人になってから、「あなたに見られないよう、隠れて泣いていた」と聞いて。
苦しむわが子を前に、「代われるものなら代わってあげたい」と思う気持ち、「不安にさせないように笑顔を絶やさない」という強さ。母は、複雑な気持ちを抱えながら、ずっと私を支えてくれていたんだなって。改めて、母への感謝の気持ちを強く感じています。そして、今度は私が、母のように強く明るく、わが子を支えようと考えています。
── これまでの人生を振り返って、どんなことを感じていますか。
愛迷さん:本当に運にめぐまれたなと思っています。小さいころに病から助けてくださった先生方がいて、どんなときも支えてくれた母がいて、理解して寄り添ってくれる夫がいて。たくさんの人との出会いに恵まれて、ここまで歩むことができました。
「美しさとは生き方だと思う」。この言葉は、大学生のときに訪れた美術館の掲示板に書かれていたものです。誰の言葉なのかはわかりません。でも、今でも私の心に残り続けています。今も後遺症でつらい日がありますし、「もっと健康だったらよかった」と落ち込むこともあります。それでも、この言葉のおかげで「これが私の人生なんだ」と前を向けるようになりました。そして、自分の人生を終えるときに「美しく生きたな」と思えるような人生を歩みたい。
今、「生きていてよかった」と心から思うことができています。たくさんの人に繋いでもらったこの命を大切にしながら、これからも歩んでいきたいです。
取材・文:佐藤有香 写真:愛迷みんみん

