『喧嘩独学』Netflixにて世界独占配信中

写真拡大

 誤ってライブ配信されてしまった喧嘩動画が拡散されたことが転機となり、スクールカースト最底辺の高校生が負け犬人生を成り上がっていく青春アクションドラマ『喧嘩独学』。6月11日にNetflixで配信がスタートした本作は、学校でのいじめや貧困に苦しむ主人公の志村(鈴鹿央士)が自身よりも強い相手に下剋上を果たしていく様子が、臨場感のある痛快なアクションシーンとコミカルな人間模様を通して描かれていく。

参考:『風、薫る』はなぜ朝ドラの“王道”を外し続けるのか? 小林虎之介の再登場に隠された意味

 志村を演じた鈴鹿央士が本格的なアクションに初挑戦し、不良や格闘技経験者など格上の喧嘩相手との攻防を繰り広げる姿は、非常に見応えのある映像に仕上がっている。さらに、志村と協力してライブ配信を行うカネゴン(菅生新樹)や、学校で志村をいじめる配信者のハマケン(長田拓郎)など、漫画原作ならではの個性的なビジュアルのキャラクターが数多く登場するのも特徴的。そのなかでも特に異彩を放っているのが、志村やカネゴンとともに配信チャンネル「喧嘩独学」の運営を行う帰国子女の高校1年生・八潮秋(見上愛)。動画編集担当として「喧嘩独学」に加わった彼女は、ボーイッシュな雰囲気とユニークな喋り方が、登場人物のなかでもとりわけ目立っていた。

 どこか現実味の薄い設定のキャラクターではあるが、そんな秋を実写ドラマの役柄として成立させているのが、現在放送中のNHK連続テレビ小説『風、薫る』で上坂樹里とともにW主演を務めている見上愛だ。日本髪で着物を着て日常生活を送ったり、洋風の髪型で看護服に身を包んだりする姿を見慣れた人にとっては、むしろ現代でテレビゲームに興じる秋を演じている姿のほうが珍しく感じるのではないだろうか。

 実際、見上はNHK大河ドラマ『光る君へ』(2024年)で藤原彰子役を演じたことを皮切りに、映画『国宝』(2025年)では主人公の喜久雄(吉沢亮)が京都の花街で出会う芸妓の藤駒を艶やかな立ち振る舞いで表現した。時代の空気感に違和感なく溶け込みながらも、どこかミステリアスな存在感で観ている人の目を引きつける。立て続けに現代ではない時代を舞台にした作品にキャスティングされていることからも、彼女の浮世離れした佇まいが制作陣から必要とされていることがわかる。

 『風、薫る』で見上が演じる一ノ瀬りんは、激動の明治の時代にトレインドナース(正規に訓練された看護師)として、看護の道へと足を踏み入れていく女性。何度も選択を間違えながらも軽やかな身のこなしで成長していく姿と、前に進み続ける彼女のしなやかな強さが印象的で、前述の作品で演じたどのキャラクターとも異なる魅力を発揮している。

 そんな彼女が時代劇の風貌から打って変わり、現代劇で扮する秋はクールで強気な一面が押し出されているものの、等身大の高校生らしい素顔を併せ持つキャラクターだ。最初はライブ配信を通して、志村がハマケンに立ち向かう姿を観ていた秋。クロースアップで映し出されるカットも多かったが、彼女が抱えている孤独や志村の戦う姿に奮い立つ闘志は、見上の細やかな表情の変化とともに伝わってくる。少し影のあるアンニュイな微笑みも、秋の魅力をより際立たせていた。さらに、志村やカネゴンたちとともに「喧嘩独学」に参加するなかで、彼女の独特の口調やキャラクター色の強いセリフは、物語のアクセントとして印象深く機能する。耳にすっと入ってくる見上の心地よくも芯のある声も、逆境に負けない強気な秋の性格にマッチしていた。

 同じNetflixシリーズの学園ドラマ『恋愛バトルロワイヤル』(2024年)でも主演を務めた見上。現代社会を反映したストーリーが描かれる舞台の上で、それぞれのキャラクターを着こなす姿は、彼女の時代を問わないポリバレントな才能の証明でもある。毎日、朝ドラで観られる姿とはまるで別人のような役柄を演じる『喧嘩独学』の見上愛も、ぜひ目に焼きつけてみてほしい。(文=ばやし)