今回の映画特集は、みんな大好きトム・クルーズ! ハリウッドが誇る大スターです。数ある出演作の中から、おなじみ「シネマチャート」評者の皆さんと「シネマヒット調査隊」隊員に、特にお気に入り“マイベスト”の作品を聞きました!

【画像】『トップガン』でも『ミッション:インポッシブル』でもない…評論家たちが選んだ「トム・クルーズ映画」ランキングを見る

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トム・クルーズ ©getty

「なぜ、今トム・クルーズ?」そう思った皆さん、ご存知でしょうか。昨年11月、彼が人生初のオスカーに輝いたことを(上写真)。そう、4度のノミネートを果たしながら、これまでアカデミー賞を受賞したことがなかったトム。今回は長年の映画界への貢献が評価されての“名誉賞”とのこと。「そりゃもっともだ」と世界中が納得の受賞ではありますが、来年は主演男優賞もあるかも、ともっぱらの噂なのです。

 というのも、今年公開予定の新作『DIGGER/ディガー』でタッグを組んだアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督は、やはり“オスカーを取れないスター”と言われ続けてきたレオナルド・ディカプリオに『レヴェナント:蘇えりし者』(15)で主演男優賞を取らせた名匠。しかも本作、得意なアクションを封印したコメディだとか。今見られるのは、冴えない体つきの男性のシルエットがスコップを持って踊る特報映像のみ。気になりすぎます!

 と思っていたら、つい先日、あの「トップガン」シリーズの続編製作が発表されました。さらに『トップガン』公開40年を記念した限定劇場公開も決定(5月13日から9日間上映)。トムは、まさに今最も熱い映画スターなのです!

 というわけで、「マイベストなトム・クルーズの映画は?」アンケートの集計結果はご覧のとおり。これを軸に、愛されトムの魅力に迫っていきますよ。

第1位に輝いた「トムといえば!」の名作

 第1位に輝いたのは、もはやトムの代名詞とも言える「ミッション:インポッシブル」シリーズ。CIAの極秘スパイであるイーサン・ハントの活躍を描くアクションで、現在8作が発表されています。

 中でも評価が高かったのは第4作『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』。本作について芝山幹郎さんは「身体を張って巨大な空間と向き合うときの彼は俄然輝く。光源は、スター性というよりもエキセントリックな体質だ」と素敵なコメントを寄せてくれました。さらに森直人さんは「この作品でネクストレベルへと昇華。第5作と双璧でシリーズ最高作」と。一方、斎藤綾子さんは最新作に触れて「還暦を過ぎての頑張りは、やはり凄い!」。さらに柳亭小痴楽さんは「中学時代に出会ってから、ずっと夢中! 私の中でトムといえば!のシリーズ」。ほんと、おっしゃるとおりです!

 続くのは米海軍の戦闘機パイロットの青春を描いた『トップガン』、その36年後を描いた『トップガン マーヴェリック』。つまり「トップガン」シリーズが実質の2位! 続編のほうが上位になった理由は、森さんいわく「私が心酔しているのは加齢してからの“トム・クルーズ2.0”。そのアイコン力が凝縮された本作はキャリアの頂点に置くのにふさわしい」から。「劇場で観るべき最高傑作! パンデミック後に燦然と現れた彗星」とは洞口依子さん。確かにコロナ禍で客足の途絶えた映画館に人を呼び戻した作品でもありました。

 一方、1作目を挙げた中野翠さんは「全身全霊での成り切りぶりに一種の感動が……」と。さらにマライ・メントラインさんも「まさにトムのための映画。『ミッション〜』のルーツもここに。今、我々が知っている彼の“原液”」として1位にチョイスでした。

 実質3位の『コラテラル』は、トムが初めて悪役を演じた作品で斎藤さんの1位!「ロマンスグレーの美貌の殺し屋に悩殺された」とコメント。ほかも女性人気高し!という結果でした。注目の『コラテラル』については、記事末尾のピックアップコーナーで詳しく取り上げます。

若かりし頃のトム・クルーズを見るなら…

 ここからはアクション以外の作品が続きます。そもそもデビュー時は、いわゆる青春スター。やんちゃなベビーフェイスで愛されました。そんな若かりし頃のトムを見るなら、大学受験を控えながら童貞喪失のことばかり考えている高校生を演じた『卒業白書』がおすすめ。「白ブリーフでのダンスが笑える」と芝山さんも太鼓判! 『ハスラー2』ではビリヤード馬鹿、『カクテル』ではモテモテバーテンダー。トムに憧れて球を突き、シェイカーを振った人、けっこういるはず。ちなみに洞口さんは、19歳でミリタリー・アカデミーの生徒を演じた『タップス』にこそ「既にトムの演技の原型がある」と指摘します。

 演技派として頭角を現し始めた作品といえば、傑作『レインマン』でしょう。竹田ダニエルさんも「若きトムの華やかさと繊細さが最もよく出ている」と1位に推します。さらに中野さんは「内面的な心理描写も自然に感じられる。演技というより、その人に成り切る力が異常に強いのかも」と分析。こちらも記事の末尾で詳しくご紹介します。

 豪華共演陣に注目すると竹田さんの2位、海軍所属の法務官を演じた『ア・フュー・グッドメン』には名優ジャック・ニコルソンが。若い頃から大物との共演が多いとあれば、確かに演技力も磨かれたことでしょう。

 また、大物監督とのタッグも多いんです。犯罪予知ができる未来が舞台の『マイノリティ・リポート』はスティーブン・スピルバーグ監督。『アイズ ワイド シャット』はスタンリー・キューブリック監督。「キューブリックのシュールな世界×トムは贅沢!」とマライさん。本作は当時夫婦だったニコール・キッドマンとの共演も話題になりましたよね。

 いつでもセクシーなトムではありますが、変化球としては斎藤さんの「目が眩んだ」ほど美しい吸血鬼を演じた『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』やセックスのカリスマ伝道師を怪演した『マグノリア』を推す声も。そう、意外と役を選ばない(?)トム。『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』では、ハゲ頭のプロデューサーにも扮しているんです。「脇役だが、それすら真面目に人間観察を追求していて素晴らしい!」と洞口さん絶賛。芝山さんも「超絶カツラ・ダンスをぜひ見てほしい」とコメント。SF大作『オール・ユー・ニード・イズ・キル』のヘタレ少佐役が裏マイベストという人も。こうしてみると、トムの演技の幅、半端ないです。

 ドイツ将校を演じた『ワルキューレ』に1票を投じたのは森さん。「『ミッション〜』の常連監督となるクリストファー・マッカリーの脚本。そのマッカリーが監督としてトムと初めて組んだ『アウトロー』も捨てがたい」。コメント内にちゃっかりもう一作、入っちゃってます。小痴楽さんも選外ながら「『ラスト サムライ』も捨てがたかった」と。

 う〜ん、トムの魅力を語るには紙幅が全然、足りなかったってことですね(反省)。せめてあなたの“マイベスト”探しのヒントになれば……。トムと共によい週末をお過ごしください!

Pick UP(1)『コラテラル』

 タクシー運転手のマックス(ジェイミー・フォックス)は、勤続12年の腕利きドライバー。ロサンゼルスの道を知り尽くしています。そんな彼を見込んで朝までの貸し切りを申し出てきたビジネスマン風の乗客ヴィンセント……が、トム。実はプロの殺し屋で、そのミッションは一晩で5人のターゲットを始末すること。マックスは思いがけず犯罪の片棒を担ぐ羽目になってしまう。完全に災難ですね。

 当時42歳のトムは“冷酷な殺し屋”の役作りで、グレーヘアに無精ひげスタイル。これがたまらなく渋い! 大スターのトムだから、ではなく、リアルな40代男性の色気的な?(笑)

 クールでありつつ、ターゲットをまっすぐに追い詰める姿にはターミネーターのような迫力も。でも実は、ミッションが計画通りに進まずに動揺しているし、心優しきマックスとのやりとりで心は揺れている。それを必死に隠そうとするヴィンセント。その人間味を、トムが繊細な演技で表現しています。そう、大胆にして繊細! トム主演だと思うと、つい派手なアクションに期待しがちですが、本作の場合は、人物造形の深さこそが名作ポイントなのかも。

 とはいえ、アクションもキレッキレ。電車の車体に飛びつく場面は、「ミッション〜」シリーズを彷彿。また、ナイトクラブのシーンもいい。人で溢れたフロアでマックスを守りながらも、しっかりターゲットを始末。スタイリッシュな演出も◎。

Pick UP(2)『レインマン』

 トムが演じるのは、父の遺産を一人占めするため自閉症の兄を施設から連れ出す自分勝手な弟。そんな金の亡者的な彼が、性格も境遇も正反対の兄との交流を通じて、少しずつ人間らしさと優しい笑顔を取り戻していく、という物語。

 見どころは兄役のダスティン・ホフマンの神がかった演技! なのですが、喜怒哀楽に富んだトムの演技も実にいいんです。特に“レインマン”の正体が分かった時、またラストシーンの表情は必見! 「実は演技派なんだよなぁ」と、その原点を再確認しました。

 お気に入りは兄弟でカジノに乗り込むシーン。レイバンのサングラスにアルマーニのスーツで決めた姿は、これぞハリウッド映画! ちなみにトム唯一の弱み(?)である低身長、相手が165cmのホフマンだと気にならないという発見も……。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2026年5月7日・14日号)