なぜN-BOXベースではない?『ホンダN-ONE e:』開発責任者に聞く、選択の理由とMM思想の具現化
BEVは少し個性的なクルマから
軽自動車市場にBEVが次々と登場している。本田技研工業(以下ホンダ)でもN-VAN e:を皮切りに『N-ONE e:』も登場。そこでなぜN-BOXなどでなくN-ONEのBEVを投入したのか。
【画像】愛らしいエクステリアと、すっきりシンプルなインテリア!『ホンダN-ONE e:』 全42枚
今回取材に応じて頂いた開発責任者の堀田英智さんに、まずはN-ONEの魅力からうかがった。

ホンダN-ONE e:の開発責任者を務める堀田英智さん。 内田俊一
「愛らしいデザインでありながらも、室内はしっかり乗れるというパッケージの良さです。(ホンダの歴史を)遡るとN360があり、そこからN-ONEが生まれたわけですが、そのN360こそが、4人乗ってしっかり走れて広い室内空間を備えているホンダのMM(マンマキシム・メカミニマム)思想を表現したクルマでした。そこがN-ONEにもしっかりと受け継がれているんです」
N-ONEをEV化するにあたっても、そこは継承しているという。
「最初は世の中の企業ニーズを意識して、商用バンのN-VAN e:から始めました。そしてシリーズ第2弾を議論する中で、EVはまだまだ我々も勉強しながらお客様に届けている状況ですし、市場もなかなかついてきていないという現状を考えると、少し個性的なモデルの方が良いと判断しました」
それには購入者像も関係している。
「EVはまだ、時代感的に新しいものなので、お客様像も比較的先進的な方が購入していることがわかっています。他銘柄を見ても、航続距離はあまり多くはなくても『そんなことは大丈夫、とにかくこの商品が欲しいんだ』という感じです。『これが良い』と思って購入しているんですね。そうすると、我々も少し個性的なモデルから始めるが良いのではないかとN-ONEを選んだのです」
スーパーワンとの棲み分け
そうはいっても、台数を稼ぐにはスーパーハイト系のスライドドアが望ましく感じる。今年はBYDからラッコも登場するなど、軽自動車市場は盛り上がりそうだ。堀田さんもそこは認めている。
「例えばN-BOXユーザーは、使い勝手の良さなどから、家族のファーストカーとしてこの1台あれば済むところに魅力を感じています。遠出もできるし、街乗りも簡単。当然軽枠なので、キビキビ曲がります。それをBEV化するためには、お客様の幅広いニーズを受け止める技術が必要で、そこは軽EVではまだ難しいです」

N-ONE e:をベースに開発されたハイスペックモデル、『スーパーワン』。 本田技研工業
従って、N-BOXの顧客にはエンジン車の商品ラインナップを提供しつつ、今後ニーズや市場が盛り上がってきた時が真剣に考えるタイミングではないか、とのことだった。
さて、N-ONEのユーザーの多くは女性だという。そこはN-ONE e:ではどう捉えているのか。
「N-ONE e:は、N-ONE同様愛着が湧く可愛らしいデザインです。これはN360から受け継いだもので、女性に高く評価されており、男性評価が高いホンダ車にあって、N-ONEは女性にも響いているんです。
今回EV化するにあたって、航続距離が500〜600kmを求めると、技術や軽サイズの中にその距離を走れるだけのバッテリーを収めることは難しい。街乗りメインの使い方をするのは女性が多いことを考えると、もともと持っているN-ONEの良さとEV化を組み合わせて、女性向けが良いと考えました。
そこでN-ONE e:は女性向けに、そして今後出るスーパーワンはちょっと尖ったモデルなので、男性向けにという棲み分けです」
二極化する軽自動車市場
最後に、現在の軽自動車市場と、そこから考えるEVについて伺ってみた。堀田さんは、市場が二極化すると考えているという。
現在、国内市場のうち軽は約4割で、スーパーハイトが全盛だ。そしてコンパクトカーよりも装備が充実したクルマも多い一方、低価格というニーズも根強いのが現状だ。

N-ONE e:は『素』を提供することを考えているという。 平井大介
その中でN-ONE e:は『素』を提供することを考えているという。
「素を提供するには、素性の良さ、シンプルで使い勝手が良く、飽きが来ないことがポイント。愛らしいエクステリアのデザインに対して、室内はすっきりシンプルであることです。ガチャガチャしたデザインは、使い込んでくると飽きてしまう。
そういった『飽きる』、『使いにくい』というお客様の不満や悩みは、必ず解消しないといけない。自分のクルマとしてどんどん使い込んで、使いやすいとも思わなくなるぐらいにならないと、多分ダメなんですね」
つまりは『不満がない』ところが、最高の位置づけなのだという。
「N-ONE e:もそういった視点でしっかり作り込み、室内にはいろいろな物が置けるように検討しました。使い勝手の良さなどを含めた、素の良さが追求できたクルマになっていると思います」
まさにホンダの神髄『MM思想』をしっかりと具現化し、N360の意思を受け継いだN-ONE e:。ユーザーにとって必要にして十分な機能とともに、広い室内空間を確保する。これこそが今ホンダが世に問うべき電気自動車なのだろう。
