被害額1000億円!「ニセ警察官詐欺」の実行犯が明かした手口と「詐欺拠点の場所」

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「人を騙すことに疲れた」からと、ニセ警察官詐欺をしている張本人が取材に応じた。詐欺師だからこそ知っている「本当の防衛策」とは。

急増する「ニセ警察官詐欺」

「ここが今、私たちが住んでいる場所です」

本誌記者のリモート取材中、詐欺グループの「リーダー」はそう語り、スマホのカメラを窓の外へと向けた。画面に映し出されたのは、日本の団地にも似た低層マンション群。向かい側の棟には衣類が干され、中庭では複数の男性らが行き交う姿が見える。

「これが園区です。食堂や病院、床屋も完備されています。園区内には中国人や台湾人、インド、ブラジル、アフリカ系の人も暮らしています」

リーダーはそこで言葉を切ると、こうつけくわえた。

「ただし、ここにいるのは全員詐欺師です」

今年2月、警察庁が発表した「犯罪情勢」に衝撃的な数字が並んだ。'25年の特殊詐欺の認知件数は前年から32%増の2万7758件、被害額は1414億円に達した。いずれも過去最悪の数字だ。

なかでも急増しているのが「ニセ警察官詐欺」で、認知件数1万936件・被害額985億円と、重大な社会問題となっている。今年3月にも、大阪府警を名乗る電話を受けた石川県の70代女性が1億5500万円を騙し取られる事件が発覚したばかりだ。

その名のとおり、警察官を騙った電話をかけ、逮捕などをちらつかせて恐怖心をあおり、金銭を搾取する手口。被害の大半が、東南アジアにある詐欺拠点からの架電によるものとされる。

東南アジア「詐欺団地」に住んでいる

特殊詐欺への注意喚起が行われている現代に、これだけ被害が拡大しているのはなぜか。その答えを探るべく、本誌記者はカンボジア国内に拠点を構える日本人詐欺グループに接触。交渉の末、「ハシモト」と名乗るグループのボスが取材に応じた。

30代と思しきハシモト氏は「嘘をつくのに疲れたので、正直にお答えします」と本音を語り、まず、組織の内情をこう明かした。

「我々が暮らしているのは『園区』と呼ばれるカンボジアの詐欺団地です。詐欺組織が地元の地権者にカネを払って土地を取得し、1〜2ヵ月程度で建物を建設します。突貫工事のため建て付けは悪く、部屋の窓が閉まらないこともザラにあります。

園区の四方は高い壁で囲われ、組織が雇ったセキュリティが出入りを厳しくチェックしている。部外者が勝手に入ることはできないし、脱走も許されない。園区内には食堂や病院はもちろん、コンビニ、マッサージ屋、売春宿にカジノ、床屋まであります」

園区には多数の詐欺グループが「入居」しているが、そのオーナーのほとんどは中華系か台湾系だという。ハシモト氏のグループも、やはりオーナーは中国人だ。

「私のグループは共同経営。トップの中国人オーナーのほかに何人かの『株主』がいて、私もその一人です。オーナー・株主の下に複数の中国人幹部がおり、テクノロジー関係を管理しているため、『PC』とも呼ばれている。そのPCの下に現場責任者である『リーダー』がおり、そこにメンバーがぶら下がっている構図です」(ハシモト氏)

そんなグループの詐欺手法こそ、「ニセ警察官詐欺」だ。ハシモト氏は「手口の詳細はうちのリーダーに聞いてください」とし、「サエキ」と名乗る男を紹介してきた。ハシモト氏いわく、キャリア20年以上の敏腕詐欺師だという。

詐欺師らしからぬ「礼儀正しい男」

取材に応じたサエキ氏は、犯罪グループのリーダーとは思えぬほど礼儀正しく、物腰の柔らかい人物だった。サエキ氏は被害者を「お客さん」と表現しながら、具体的な手口についてこう明かした。

「私たちのニセ警察官詐欺は、『1線』『2線』『3線』の順番で行われます。1線担当はお客さんに電話をかけて生活安全課を名乗り、『あなたの口座が犯罪に使用されています。最近、身分証を紛失していませんか』と語ります。

相手が『覚えがありません』などと何らかの反応を示したら、『二課の刑事に事情をお伝えください』とし、2線のメンバーに繋げます」

1線から、二課の刑事を騙る2線に繋ぐ際は、ビデオ通話に切り替える。警察手帳を提示したうえで、

「あなたの口座がマネーロンダリングに使われている」

と告げ、こう脅す。

「無関係と言うのであれば、口座情報と残高を申告してください。申告漏れがあった口座は強制凍結する」

言うまでもなく、ターゲットの口座情報と資産を把握するためだ。

ここからさらに、「調査のため」として3線の検事役に交代。ビデオ通話に登場したニセ検事は、「あなたのセキュリティの甘さでこういった犯罪が起こっている」などとターゲットの動揺を誘い、振り込みへと誘導していく。

【後編を読む】あなたの個人情報も売買されている…ニセ警察官詐欺の実行犯が明かす「ダマされないための最低限の知恵」

「週刊現代」2026年4月13日号より

【つづきを読む】あなたの個人情報も売買されている…ニセ警察官詐欺の実行犯が明かす「ダマされないための最低限の知恵」