Image: Dan Perry /Penn State University

稲光と一緒に雷鳴も再現されるのかな?

雷って、誰もが知っている気象事象のわりに、実はビックリするくらい科学的に解明されていなかったりするんですよね。おかげで雷を伴うサンダーストームから生まれる竜巻も、詳しいことはよくわからないままです。

雷を箱に閉じ込める

昨年、雲のてっぺんでどのように雷が発生するかを解明したエンジニアのチームが、今度はあっと驚きの装置、プラスチックでできたミニチュアの「雷ボックス」のコンセプトをひっさげて戻ってきたのです。

科学誌『Physical Review Letters』に掲載された研究論文において、ペンシルベニア州立大学のビクター・パスコ氏率いるチームは、落雷をモデル化する装置のコンセプトを考案したと報告しています。稲光のようなひらめきだったのでしょうか。

でも、「落雷をモデル化する装置」と言われても、そんなにたいしたことなさそうと思うかもですが、シミュレーションによると、この箱は1組のトランプよりもちょっと大きい程度。しかも、比較的安価で手に入れやすい材料で作れるのだとか。

すべては、チームがこのコンセプトを実験で証明できるかどうかにかかっています。もし成功すれば、エンジニアや大気科学者、物理学者たちは、かつてないほど手軽に雷を研究できるようになるでしょう。雷が箱から飛び出て建物内に雷が落ちる、みたいな事故が起こったりしないんですかね…?

パスコ氏は声明のなかで、「制御された環境下で、机の上で雷のような現象を実験できるとしたら、それは素晴らしいことです。はるかに費用対効果が高く、多くの疑問に答えられるでしょう」と述べています。パスコ氏がコスパの話をしているのはジワジワきます。

雷雨の物理学

今回の研究結果は、パスコ氏による一連の研究の最新版にあたります。同氏は、2023年に雷を生み出す物理的条件をシミュレートする数学モデルを考案しました。

昨年の研究結果では、パスコ氏のチームは、この数学モデルを、地上センサーや衛星データ、高高度偵察機を用いた実地観測と比較しています。

Image: NASA / ALOFT team / Mount Visual
ガンマ線を放出する雷雲の上空を飛行する航空機のイメージ図

分析の結果、落雷は強力な電場による連鎖反応から生じると結論づけました。電場が電子を加速させ、その電子が空気中の窒素や酸素の粒子と衝突することでX線放射が発生するとのこと。

最終的に、この混沌(こんとん)とした粒子の動きによって雪崩的に増加した光子が放出され、私たちが目にする稲光になるのだそう。

巨大な落雷を縮小して再現

今回の研究では、この連鎖反応(正式には、「Relativistic runaway electron avalanche: 相対論的電子雪崩」が、めちゃくちゃ小さいスケールの物理的空間内でも再現できるかどうかを検証しました。

さらに言えば、ガラスやアクリル、石英のようなごく一般的な絶縁材料でその空間を作ることができるかどうかを知りたいそうです。

シミュレーションでは、研究室で供給された高エネルギー電子が、小さな固体ブロックの中で雷のような放射を引き起こせるかどうかが検証されました。

研究チームによると、少なくとも理論上は、親指よりも小さい高密度の固体ブロックでも、実際の雷雨と同じ電気的条件を再現できるといいます。

「理論上は」がみそですが、実際の雷雲が「数キロメートル規模の領域にわたって1億ボルトの電位差を生み出す」ことを考えると、これはなかなか衝撃的な話です。

再現が可能になる理由は、使用する材料の密度が高いためで、最大で空気の1,000倍もの高密度になるそう。

Physics Magazineに掲載された論文によると、個体の摩擦力は「大気中よりもはるかに大きく、それがプロセスの空間的スケールを縮小させる」とのことです。雷が発生する空のスペースをギュッと凝縮させてしまうわけですね。

論文では、この小さなブロックの中で連鎖反応の最初の鎖の部分が再現されれば、あとはフィードバックループの純粋な力だけで雪崩現象を維持できると仮説を立てています。

「雷ボックス」の完成はいつ頃?

で、リアルな「雷ボックス」にはいつお目にかかれるのでしょうか?それは、パスコ氏の研究チームが実験によって今回の発見を裏付けられれば…という話になります。

論文では、提案された「ミニ雷」の手法を実用化するために必要な要素について概説しています。たとえば、反応に必要な最小電場の強さや、固体に対して電子「ビーム」をどのように照射すべきかなどが含まれます。

それでも、極端な気象パターンを観測するための「大規模」な実験を行なうために莫大なコストがかかることを考慮すれば、期待される成果は大きいとパスコ氏は語ります。

以前の研究でも、比較的小さな装置で雷に似た反応を再現できることが実証されており、今回の研究の予測もそこまで非現実的ではないかもしれないと同氏は付け加えています。

正直なところ、「雷ボックス」の画像がどこにもなかったのはちょっとガッカリです。でも、幸いなことにチームはすでに実現に向けて取り組んでいるそうです。

これまで数々の雷研究を発表してきたパスコ氏の実績を考えると、リアル雷ボックスのお披露目もそう遠くないかもしれませんよ。

Source: American Physical Society (1, 2), AGU, The Pennsylvania State University, Physics

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