赤澤大臣が場を沸かせ…東京で開催されたトランプ大統領「肝煎りエネルギーフォーラム」の思惑とは

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エネルギー推進へ

’26年3月14日〜15日、2日間の日程でインド太平洋エネルギー安全保障閣僚ビジネスフォーラム(IPEM)が東京都内で開催された。トランプ大統領は’25年2月14日、米国のエネルギー分野における優位性を確保することから、「国家エネルギー支配評議会(NEDC)」の設置についての大統領令を発令。今回のフォーラムはNEDCに基づいて開催されることになった。さらに、今回のフォーラムは設置後初の開催で日米共催となり、その地に東京が選ばれた。参加国はアメリカや日本をはじめ、タイやオーストラリア、韓国などのインド太平洋地域の18か国が参加、各国のエネルギー担当閣僚らが多数出席したほか、各国のエネルギー関連企業140社参加した。イラン等の中東情勢が緊迫している中での開催となったため、追加セッションや当初設定されていなかったテーマが盛んに取り上げられた。

’25年1月20日、トランプ大統領は就任の日に「アメリカのエネルギーを解放する」大統領令を発令。EV車普及を義務化する州の排出免除措置を廃止、不公平な補助金制度の見直しを行い、ガソリン車を含む多様な選択肢を確保するという、バイデン政権で掲げられていたEV車の義務化やEV車購入補助等と逆行する大統領令を発令した。

また、同日に発令された大統領令「国家エネルギー緊急事態宣言」では、「エネルギー価格の高騰がアメリカ国民に及ぼす差し迫った脅威は敵対的な外国勢力からの自衛能力の低下によってさらに深刻化している。〜中略〜前政権の政策で我が国を国家非常事態に陥れた」など、バイデン政権のエネルギー政策をことごとく否定し、正反対のエネルギー推進を加速させる文言が並んでいる。

「タリフネゴシエーターとして有名です」

今回のフォーラムでアメリカからはダグ・バーガム内務長官兼NEDC議長が出席したほか、リー・ゼルディン環境保護庁長官など複数の閣僚など要人が出席した。クリス・ライトエネルギー長官も出席予定だったが、中東情勢対応のため、急きょ来日が取りやめになった。一方、日本側からの閣僚は赤澤亮正経済産業大臣のみの出席となった。赤澤大臣は前日深夜までの国会対応の疲れも見せず、英語で開会挨拶を行った。

「経済産業大臣の赤澤亮正です。タリフ(英語で関税・運賃という意味)ネゴシエーター、関税交渉大臣として有名だと思います」

と発言、会場は笑いに包まれた。

続けて大臣は

「日本の90%以上の原油輸入のルートをホルムズ海峡に依存している。国民の日常生活と経済活動を潜在的なリスクから守るため、日本政府は積極的な対策を講じている。今日私たちが下す長期的かつ戦略的な選択は、今後数十年にわたるインド太平洋地域のエネルギー安全保障を左右するでしょう。インド太平洋地域は、世界経済成長の原動力で日本はエネルギー技術の百貨店であり、あらゆるエネルギー技術とイノベーションを有しています。アジア全体でこれらの技術と経験を共有することで、地域のエネルギー安全保障を共に強化することができます」

と述べた。赤澤大臣に続いてバーガム長官は開会挨拶で

「ここにいるチームの目的は、エネルギー支配を達成できるようにすることです。テロ政権によって供給が途絶えることのない、安全な代替供給源が必要になるかもしれません。それがまさに重要な点です。この会議は数ヶ月前に設立されました。構想は昨年でした。アメリカは同盟国すべてと協力することで、より繁栄し、より安全な世界を築く機会を得ています。幸いなことにトランプ大統領は、エネルギー政策を経済安全保障から切り離すことはできず、国家安全保障からも切り離すことはできないと理解している指導者です。少数のテロリスト集団が世界の経済を支配することは、決して容認できません。私たち世界の国々は、このような場で団結することができます。皆さんがここに集まってくださったことに感謝申し上げます。私たち米国は、皆さんにとって信頼できる、手頃な価格で安全なパートナーとなるためにここにいます」

と述べた。

その後、赤澤大臣とバーガム長官は、米国開発庁と日本政策投資銀行による業務協力に関する覚書締結の立会いに始まり、パネルディスカッションに参加したほか、参加国の閣僚らとの会談に相次いで臨んだ。

今回のフォーラムでは総額560億ドル以上の契約を締結し、2日間にわたるフォーラムは幕を閉じた。イランへの軍事作戦から1カ月が経過し、先の見えない中東情勢の悪化や原油価格の高騰、移民政策での過剰な対応などにより、トランプ大統領の支持率の低下が目立ち始めている。今年の11月には中間選挙が控えており、身内である共和党内部からも不信感が出ている。3月24日に行われたフロリダ州南部での州議会の補選で民主党候補が勝利するなど流れが変わりつつある。この選挙区はトランプ大統領の邸宅「マール・ア・ラーゴ」が所在する。

また、イランへの軍事作戦に当初はイラン国民に向けて「自由の時が来ている。助けは来る。」と発言していたが、最近になり「少し飽きてきている。先(キューバ)に進みたい」と側近に漏らすなど、わずか2カ月ほどで方針を転換した発言が見え始めた。トランプ大統領肝いりで開催した今回のフォーラムだったが、イランへの軍事作戦のために手放しで成功したとは言い難い内容となってしまった。

取材・文・PHOTO:有村 拓真