「年金繰り下げ待機中」の過ごし方…定年後、仕事は同じなのに給料が下がる「再雇用」の理不尽を悔しがりながらも〈長く働く老後戦略〉
今の70歳は心身ともに若く、就労意欲も高い傾向にあります。一方で、定年後の就労については、50代のうちから定年後の働き方について家族と意見をすり合わせておくことが不可欠です。特に、年金の受給時期や再雇用時の家計状況については、夫婦間での認識のズレがトラブルの火種となります。辞めるか続けるかという二択ではなく、健康状態や資産状況に応じた最適な働き方をどのように設計し、家族と共有すべきか。川口幸子氏による著書『投資経験ゼロでも老後を豊かにできる! 定年5年前に読むお金の本[超入門]』(PHP研究所)より、老後のマネープランから定年後の就労について考えていきます。
今の70歳は心身ともに若い…「長く働く」という選択肢
かつては「60歳定年、65歳まで再雇用」というのが一般的でしたが、今では企業によっては70歳まで、あるいはそれ以降も働き続けることができるようになってきました。今の70歳は心身ともに若々しく、まだまだ活躍できる方がたくさんいます。「長く働く」という選択肢について、少し考えてみませんか?
長く働くメリット
長く働くことの大きなメリットの一つは、経済的な安定につながることです。公的年金は、受け取りはじめる年齢を遅らせる(繰り下げ受給)ことで、月々の受給額を増やすことができます。健康で70歳まで働けるのであれば、年金の受け取り開始を遅らせて、より多くの年金を生涯にわたって受け取る、という選択も視野に入ってきます。
さらに、働き続けることで「勤労収入」を得ることができます。働いて得たお金は、日々の生活費に充てるだけでなく、一部を貯蓄や資産運用に回したり、あるいは生前贈与など将来の相続対策に活用したりすることも可能です。
また、働くことは健康維持にもつながります。体を動かし、頭を使うことは、心身の活性化に役立ちます。家にこもらず外に出て人と話す機会を持つことは、社会的な孤立を防ぎ、精神的なハリをもたらしてくれるでしょう。
長く働くための2つの準備
長く働き続けるためには、まず何よりも「健康」がポイントです。無理は禁物で、「働きすぎない」ことも大切です。
そしてもう一つ、非常に重要なのが「家族とのコミュニケーション」。特に配偶者やパートナーがいる場合は、定年後の働き方について、お互いの考えをよく話し合い、理解し合うことが欠かせません。
「65歳以降も働くか」について、夫婦で意見が分かれることは少なくありません。お互いの考えや家計の状況を共有し、協力し合える関係性を築くことが、気持ちよく働き続けるためには欠かせません。夫婦の年齢差や、それぞれの親の介護の可能性なども考慮し、50代のうちから将来の働き方について具体的に話し合っておくことをおすすめします。
ポイント
■年金繰り下げも選択肢、勤労収入で経済的安定を確保しよう
■働き方について、50代のうちから家族と具体的に話し合おう
長年慣れ親しんだ環境での「再雇用」…給与減の現実
定年を迎えた後、同じ会社で継続雇用や再雇用という形で働き続ける選択肢があります。長年慣れ親しんだ環境で働き続けられる安心感がある一方で、多くの方が直面するのが「給与の減少」という現実です。
「仕事は同じなのに、給料が下がった」という悩み
「定年前と仕事内容はほとんど変わらないのに、給料が大幅に下がってしまった」「年下の社員より給料が低いなんて……」こうした声を、よく耳にします。責任や仕事量は変わらないのに、待遇だけが変わることに、悔しさやモチベーションの低下を感じるのも、無理はありません。これは多くの場合、会社の給与体系や規定によるものであり、個人の力で変えるのは難しいのが実情です。
続ける?それとも辞める?…判断のポイント
給料が下がり、働き続けるか別の道を探すか迷った時は、まず、その収入がご自身の生活にとって本当に必要かどうか、冷静に考えてみましょう。生活に困らないなら、無理して続ける必要はないかもしれません。しかし、生活のために収入が必要なのであれば、多少の不満には目をつぶって働き続ける、という判断も必要になるでしょう。
大切なのは、お金と精神的な負担を天秤にかけ、どちらを優先するかを考えることです。「こんな給料なら辞めてやる!」と決める前に、辞めた後の具体的なプランを考えてみましょう。他に収入を得るあてはあるか、新しい仕事はすぐに見つかるかなど、慣れた職場で働き続けるメリットと、転職するメリット・デメリットを比較検討することが大切です。
給料が下がったとしても、今の職場で働き続けることには、お金以外の価値を見出すこともできます。長年培ってきた経験や知識を活かして、後輩の指導や育成にあたる。規則正しい生活リズムを維持する。社会とのつながりを保つ。これらは、大きなメリットです。経済的には働く必要がなくても、「後輩に自分の経験を伝えたい」「仕事を通じて社会と関わっていたい」という思いから、減給を受け入れて働き続けている方もいます。
ポイント
■辞める前に、転職後の具体的なプランを検討しよう
■給料以外にも、働く意味や価値を見つけよう
川口 幸子
クラウドコンサルティング株式会社
代表取締役
