実はプルデンシャルと「同根」…元営業社員の「借金」12億円が未返済だったソニー生命の「強烈な報酬体系」
給料は「フルコミッション」
外資系のプルデンシャル生命保険の営業社員・元営業社員が顧客から計約31億円を詐取していた問題の衝撃も冷めやらぬ中、ソニー生命保険でも元営業社員が顧客から計約22億円を借り入れ、うち約12億円が未返済になっていることがマスコミ報道で発覚した。
ソニー生命がこの問題を2023年に把握しながら、3年以上も公表していなかったことも世論の不信を高めた。「現時点で他に同様の事案は確認されていない」と強調するが、過去にも元支社長や元営業社員が顧客から1億円超を詐取した不祥事が起きている。
プルデンシャルの一件では、営業成績に連動して報酬が大きく変動する「フルコミッション(完全歩合)」制が「ライフプランナー」と呼ばれる男性営業社員の金銭欲を煽り「不正の温床になった」と指摘された。ソニー生命も似通った報酬体系を採用しており、顧客の間には疑念が広がる。
全社調査など踏み込んだ対応が求められる局面だが、経営陣が動く気配はない。親会社のソニーフィナンシャルグループ(FG)社長を元金融庁長官の遠藤俊英氏(82年旧大蔵省)が務める中、生保のガバナンス不全を問題視してきた金融庁がどう対応するかも注目されている。
ソニー生命が3月18日に公表した「弊社元社員に関する一部報道について」と題したリリースや報道によると、横浜ライフプランナーセンター第1支社に所属していた元営業社員が15―22年に「毎月3%の配当金を出す」などと顧客約100人に持ちかけ、計約22億円を借り入れていた。
顧客から「配当金が支払われず、連絡も取れない」と問い合わせがあったことをきっかけに、ソニー生命側も問題を把握。社内調査に対して、元営業社員が個人名義の借用書で資金を借り入れ、運用に失敗したことなどを認めたため、内規違反で懲戒解雇したという。
借り入れた金のうち約12億円が返済されていないが、同社は「業務と関係がない個人的な借金」と見做しており、補償しない方針だ。
もともとは合弁会社
ただ、元営業社員は一部の顧客に「配当金」と称してお金を渡し、それを原資に保険契約を結ばせていたことが分かっている。フルコミッション制の下、保険獲得実績をかさ上げして報酬を増やそうとした疑いがある。
そうだとすれば、ソニー生命の「業務と関係がない」とも言い切れない。過去の不正と比べて被害額も格段に大きい。にもかかわらず、ソニー生命は、顧客との金銭貸借を禁じた従来方針を改めて営業社員に徹底し再発防止を図るなどという木で鼻をくくった対応に終始している。
プルデンシャルの不正に対する批判が広がる中、これで幕引きを図るつもりなのだろうか。
金融界では「プルデンシャルに倣った収益モデルを追求しながら、不正がこれだけにとどまるとは思えない」(大手生保幹部)との声が出ている。ソニー生命は1979年、プルデンシャルとの合弁会社として設立され、87年に合弁を解消し単独経営となった後もフルコミッション制の報酬体系を続けてきた。
医者や弁護士、地方の資産家などプチ富裕層をターゲットに、死亡保障だけでなく「投資商品としても有利」「節税効果がある」などとうたって様々な保険を売り込む手法も共通しているからだ。
スター社員は年収1億円超
伝統的な生保は、「生保レディ」と呼ばれる女性営業職員が一般のサラリーマンらをターゲットに、こまめに職場や自宅を訪問し、カレンダーやバレンタインチョコを配る「義理・人情・プレゼント(GNP)」で死亡保険などを勧誘してきた。
プルデンシャルやソニー生命はこれとは一線を画し、「ライフプランナー」と称する男性営業社員が保険だけに止まらないあらゆる金融ニーズの対応する営業スタイルで顧客を引き付けてきた。フルコミッション制はライフプランナーの競争心を煽り、保険契約を伸ばす原動力となってきた。
プルデンシャルのケースでは「有力顧客を抱えるスター社員の年収が1億円を超える一方、契約を取れなければ最低賃金並みの報酬しか得られない」という極端な報酬インセンティブの弊害が浮き彫りになった。
営業社員は過度に金銭欲を刺激されたり、成績を上げなければ食っていけないというプレッシャーに苛まれたりする環境に置かれる。生活水準を維持しようと思えば、倫理観が希薄になり、不正行為に手を染めるリスクがある。
管理職の報酬も部下の営業社員の成績に連動しているため、契約獲得実績にしか目が向かず、コンプライアンス(法令順守)の徹底など組織として必須の管理体制が緩む傾向があったとされる。
続く後編記事『金融庁がソニー生命への本格的な調査を躊躇する「本当の理由」』では、厳しい対応に踏み込まないように見える金融庁の内部事情に踏み込む。
