【シリーズ・美しき森へ】~ 暮らしを守る海岸林の再生 ~ “予防接種”で止める松くい虫被害
身近な森の現状や、石川県産材の活用などについて考えるシリーズ「美しき森へ」。今回は、私たちの暮らしを守る大切な海岸の森の再生に向けた取り組みです。
シャリシャリ食感がたまらないスイカに、おでんに欠かせないダイコン。そして、加賀野菜としてお馴染み「加賀太きゅうり」。
実はどれも、海岸近くの砂丘地で育てられています。その砂丘地にとって無くてはならないのが、海からの風や砂を防ぐ海岸林なんです。
参加者:
「すくすくと真っ直ぐに、潮風に負けんように育ってほしいですよね」
この日行われたのは、海岸林クロマツの苗木の植樹。
参加したのは、砂丘地で農業を営む農家さんや、海岸に隣接する町会などで構成される「金沢市海岸砂防協会」のメンバー。
今回、15人が参加し、200本の苗木を植えました。
こちらの男性はキュウリの農家さん。
キュウリ農家の男性:
「(海岸林があるから)農産物とかに直接風当たらないし、海沿いに家もあるから、今、松くい虫とかも多いし、そんなもんに食われないで元気に自分らを守ってくれるように(育ってほしい)」
実は、今回植えられたのは「抵抗性クロマツ」といって、松くい虫の被害に対して抵抗力のあるクロマツです。
通常、緑色のマツの葉が、赤褐色になって枯れてしまという「松くい虫被害」。
海岸のマツが枯れてしまうと、防風や防砂などの機能が低下してしまいます。
そこで金沢市では、2008年から抵抗性クロマツの苗木を提供し、地域住民やボランティアの力で健全な海岸林を再生する取り組みを行っています。
その松くい虫とは一体、どんな虫なんでしょうか?
金沢市森林再生課・杉原 正通 さん:
「松くい虫という虫はいません。松くい虫と言われるのは『マツノザイセンチュウ』という線虫がマツの中に入ってマツを枯らします。線虫は動けませんが『マツノマダラカミキリ』が線虫をマツに運んでマツを枯らす。一連の流れが松くい虫といいます」
マツノザイセンチュウがマツの幹の中に入ると、マツは水を吸い上げることができなくなって、枯れてしまいます。
金沢市森林再生課・杉原 正通 さん:
「予防方法としてはカミキリを駆除する薬剤散布というやり方。もう一つは、線虫に負けない予防接種のような『樹幹注入』という予防の仕方」
マツの幹に穴をあけ、線虫が繁殖できない薬を注入する樹幹注入。まさにマツの予防接種です。
この作業は、マツの活動が低下している寒い時期に行います。
金沢市の委託業者:
「とにかく木の水の流れがいいところを探して、根と葉がつながっているところに穴をあけないといけないので、それを探しています。木の皮と皮が離れているところ、あるじゃないですか?ここは昔くっついていたんですね。それが成長に伴って広がっているので、年輪が成長している。逆にくっついているところは何年経っても成長しない」
天気がいいと15分ほどで、薬が幹の中に入っていきます。
注射の後も、しっかりとケアをします。
金沢市の委託業者:
「木のダボで穴を埋めます。松脂が出て間を通るようにネジのようになっています。雨水などが入って雑菌が入らないように殺菌剤を入れて穴を塞ぐ。下から松脂が出て上から殺菌剤で修復することによって、新しい年輪形成をする」
1回の注入で、効果は6~7年持続するといいます。
海岸のマツはこうして守られているんです。
金沢市森林再生課・杉原 正通 さん:
「マツというのはすぐに大きくはならなくて、20年近く経ってようやく少し機能を発揮する。できれば80年、100年といったような長い期間、しっかりと育てばしっかりとした松林になる。長い話ですけど、しっかり育てていきたい」
金沢市林業振興協議会・加藤 八郎 さん:
「もともと(海岸林は)あったからあんまりありがたみって感じないかもわからないけど、一切なくなったら『しまったな』となくしてから思う」
金沢市海岸砂防協会理事長・松本 充明 さん:
「後世につないで海岸線守るためには『防風帯っていうのは大事だよ』ということを、つないでいきたいなと思っています。子どもたちが大きくなったときに『うちの祖先が植えたんや』とか、そういうふうにつないでくれればいいかなと思うんですけどね」
私たちの暮らしを守る大切な海岸の森は、未来に向け少しずつ、しっかりと再生しています。
