吉本興業退社を報告した藤原。その胸中に迫った

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 3月30日、お笑いコンビ『ライセンス』の藤原一裕(48)が約30年所属した吉本興業を退所し、フリーで活動することを自身のSNSで公表した。

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 藤原といえば『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系)へ長年の出演実績があり、『ヒルナンデス!』には曜日レギュラーとして出演するほか、若手時代からお笑いの最前線で活躍してきた。現在は妻・山口美沙とのYouTubeチャンネル『フジワランド』も運営し、10万人以上の登録者数がいる。NEWSポストセブンは藤原から今回の独立報告に先立ち、取材を行なっていた。【前後編の前編】

「(独立を決めた)理由は一つじゃないです。30年いましたから」(藤原、以下同)

 インタビュー冒頭、藤原はそう口にした。今回の決断が決して衝動的なものではないことを物語っていた。

 独立の転機となったのは、数年前から続けていた執筆活動だったという。30年間、コント、漫才の台本を書き続けてきた。手応えがあったもの、お客さんの反応がイマイチだったもの……様々な思い出がこもった台本のほとんどが、舞台で一度披露しただけで役目を終える。積み重なった大量の台本を目にした藤原は、「このまま消え去るのは悔しい」という思いで小説に昇華。2017年に『遺産ゲーム』(KADOKAWA)として世に送り出し反響を得た。

 その後も執筆活動を続け、2023年からは知人の薦めでプラットフォーム『note』にエッセイを綴りだす。子育てエッセイ『妻が怒りの赤鬼化』が、日本最大級の投稿コンテスト『note #創作大賞2024』において52750作品の中から「オールカテゴリ部門 読者賞」を受賞。昨年にも父方の祖父の人生をベースに書き上げた短編読み切り小説『とらのすけ』を公開している。

「周囲の反響も良くて、又吉(直樹・ピース)も絶賛してくれたんで"これは書籍にできるな"と思ったんですが、なかなか話が動かなかった。ご存知の通り、吉本興業という事務所はめっちゃ売れっ子がいます。若手も毎年どんどん入ってくる。社員さんもたくさんいるんですが、とてもじゃないけど手が足りていない。

 そんな中、僕が『新しくこれやりたい、あれやりたい』と言ってもなかなか営業に持っていけないだろうなと思ったのが退社を考えだしたきっかけですね」

 藤原には苦い経験があるという。2019年、クラウドファンディングで資金を募り、「いじめ」をテーマにした絵本を作成した。全国の小中学校への配布や読み聞かせ、講演会などの予定が決まっていたが、コロナ禍により全てが白紙に。コロナ禍が収束するまでの約4年間、行き先を失った絵本に囲まれながらもどかしい思いを募らせていた。

 そうした思いのなか退社の意向が固まった藤原だが、吉本には恩義を感じているという。

「吉本は本当にいい会社でした。僕らはNSC(吉本総合芸能学院)出身ではなく、オーディションを受けて入りました。どこの誰かもようわからんやつを"おもろかったから500円やるわ"から始めさせてもらった。全国にある劇場で、多い時は年間何百ものステージに立たせてもらって、舞台とか映画とかの経験を積ませてくれた。よその事務所やったらこうはなってない。

 ただ、僕も気づけば50歳を目前に控え、健康でフルパワーで動けるのなんてあと15年くらいだと思ったんです。それに気づいた時、全然時間ないやんって(思った)」

相方・井本との関係性の変化

 高校の同級生だった相方・井本貴史(48)とは卒業後コンビを結成。30代までは会わない日はないというほど共に過ごしてきたが、「ここ最近は月に5回会うかな?ってくらいでした」と関係性に変化がみられたという。

 独立については今年1月、井本に直接伝えた。話し合いの場所はネタ作りで長時間、井本と入り浸ったファミリーレストランだった。

「相方に退社する意向を伝えたら、解散しようって言われるかもしれないと思ってました。ずっと一緒にやってきたのに、『自分だけ辞めるわ』なんてのは相当なワガママなんですよ。僕が吉本を辞める決心をした以上、コンビを続けるのも続けないのも、僕がジャッジしていい話ではない。

 相方から『ほんならもう無理ちゃう?』って言われたら(コンビ継続を)諦めるしかなかった。どっちかというとそうなる可能性が高いなと思って話し合いに臨みました」

 藤原はこれまでの経緯、胸の内を率直に伝えたという。井本は聞き役に徹し、最後に返ってきたのは意外な言葉だった。

「気持ちわかるで」「コンビにもいろんな形あるしな」

48歳で再出発のリアル

 井本は吉本興業に残りつつ、藤原はフリーに。形こそ変わりながらもコンビは続けていくことになった。藤原は改めて吉本興業に感謝の意を述べる。

「いろんな立場の方と話しましたが、みんな『気持ち固そうですね』って。そりゃ気持ち固くないと言わへんやろと(苦笑)。なかでも、感謝しているのは退社報告を兼ねて岡本(昭彦)社長と2人で食事をさせていただいた時に、『困ったことがあったらいつでも連絡してきなさい』と言ってくださったことですね。

 フリーの準備も進めていますが、最初は請求書ひとつ書き方がわからなくて、AIに相談していました。スタイリストさんを発注する方法もわからない。税金とかの手続きも。

 こんなダメな社会人が今日まで生きて来られたのは、会社(吉本興業)が全部やってくれてた証拠です。本当に頭が上がりません」

 それでも、不安よりも大きいのは"ワクワク"だという。独立はゴールではない。むしろスタートだ。執筆はもちろん、テレビ、舞台、YouTubeとジャンル問わず活動の場を求めていくという。

「SNSが窓口です。仕事は全部自分の責任で受けます」

 50を前にして、ゼロからの挑戦へ。

(後編に続く)

■取材・文/赤木雅彦 写真/木村圭司

【プロフィール】

藤原一裕(ふじわら かずひろ)/1977年9月20日生まれ。奈良県出身。お笑いコンビ『ライセンス』のボケ担当。現在の出演は『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』『かんさい情報ネットten. 』など。近年は妻・山口美沙とのYouTubeチャンネル『フジワランド』やエッセイ執筆など活動の幅を広げ、家族をテーマにした発信で注目を集める。Instagram:@fjwrkzhr