大企業で「出世しない」ことがもたらす思わぬメリット…“くさらず”“転職せず”が「第二の人生に大きく役立つ」理由とは
『釣りバカ日誌』のハマちゃんこと浜崎伝助や、『美味しんぼ』の山岡士郎のように、大企業で出世はせずとも楽しそうな人生を送る人々は実在する。そんな彼らがさらに楽しそうになるのが、57歳〜58歳ぐらいで早期退職をし、なかなかナイスなポジションに就くことである。【取材・文=中川淳一郎】
【わずか4年で退社】ネットニュース編集者・中川氏の広告会社社員時代の姿
早期退職に応募
大企業の社員の場合、30代後半のうちに、「役員になるかならないか」が見た目でもわかるような雰囲気を漂わせるようになる。私は社員数約3000人の大きな広告会社出身で、4年で辞めてしまったが、30代後半の時、同期と飲み、どんな仕事をしているか聞いたらこう言われた。

「オレ、動画の研究!」
ははぁ、さすが、広告マン、ウケる広告、ネットでバズる広告の研究をしているんだな、と感心したが、そこにいた別の同期の一言にずっこけた。
「お前、ヒマだから勤務中にYouTube見てるだけだろ!」
この「動画研究男」はこの突っ込みに対して恥じらうでもなく「いやぁ〜、コレで給料もらえてオレは幸せだよ!」なんてことを言うのである。
さて、そんな人々でも大企業であれば組織が強いだけに、養うだけの余裕がある。彼らは途中から年下の部長の下で働くことになるが、そこそこ良い給料を得て、50代に突入。定年は60歳だが、雇用延長で65歳まで働くことは可能だ。
50代になってもはや出世をすることはなく、職場に居づらい気持ちを若干持つ人はいるだろう。とはいえ、57歳〜58歳までは会社に残り、退職金が上乗せされる早期退職に応募する。これが彼らのハッピーライフに繋がるのだ。さすがは大企業である。様々な大企業出身者と私は会ってきたが、このパターンはけっこう多い。
第二の人生を
退職金をたっぷりもらったうえで、次の道を探ることになるのだが、世に名が知られた大企業にいた、という経歴は50代後半以降に強い。フリーランスになるケースが多く、日本有数の宗教法人の広報担当、国立大学教授、地方での不動産投資家、高校時代まで暮らした地元に戻って、マーケティングコンサルタントや地域活性化プランナー、環境系NPO代表、ブランド開発担当者になったりする。
定年を機に、会社員時代から興味を持っていたことに本腰を入れるわけだが、この時に名が通った大企業出身、という肩書きが輝きを放つのである。決して華やかな会社員時代だったとは言えない。しかし、自分の好きなジャンルを追求していたことが奏効し、その分野からお呼びがかかる。それこそ、環境問題、リサイクル、ワークショップ運営、エコツーリズムなどである。会社の仕事としてかかわるうちに、その分野でツテが多数生まれ、57〜58歳で退社した後は、その分野の重鎮としての第二の人生を謳歌することが可能なのだ。
長年勤務という実績が効く
日本の場合、99.7%が中小企業といわれているが、大企業に所属していて出世の目がないと感じる人は、在籍中から第二の人生を模索しながら日々の仕事をした方がいい。世の中は意外と「〇〇社出身です!」「ほーっ! すごいですね!」となることがある。
今やそんな時代ではない、と言われるだろうが、それは都会での話である。地方に行けば大手総合商社出身者やら、大手家電メーカー出身者らが「すごい人」扱いを未だにされる現状がある。まぁ、そうした時代は恐らくそれほど長くは続かないだろうから、今が最後のチャンスかもしれない。
だから、現在ネームバリューのある大企業に勤めている人は、57〜58歳でその会社を「卒業」し、色眼鏡で見てもらえる次の仕事を検討してもいいかもしれない。いや、50代前半でもそれはやっていい。
以前、一緒に仕事をした人事コンサルタントの曽和利光氏は、「世の中には『社格』というものがあります。最初に入った会社の『格』がその後の転職でも影響します」と語っていた。学生時代の就職活動では偏差値の高い大学の学生が有利だが(今後もそうだとは思わないが)、50代以降の第二の人生では、有名企業に長年勤務したという実績が案外効くんだな、と諸先輩方を見てしみじみと思う次第である。
ネットニュース編集者・中川淳一郎
デイリー新潮編集部
