高市首相

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 第2回【「高市首相をぶっ倒す!」れいわ大石晃子氏による批判は「高市さんを利するオウンゴールだった」と識者…なぜ野党の「高市批判」はことごとく逆効果になるのか】からの続き──。かなり早い段階で「財務省解体デモ」について報じた新聞社の一つが日刊スポーツだ。同紙の名物コラム「政界地獄耳」は2025年2月に「SNSが別の変化生んだ」とのタイトルでデモの実情を伝えた。(全3回の第3回)

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【写真を見る】「激ヤセ」が心配される高市首相 現在と比較すると「まるで別人」

 記事によると、25年2月21日から24日にかけて約1000人が「財務省解体デモ」に参加。多くの人が「増税反対」「消費税廃止」を訴えたという。

高市首相

 デモは24年の12月ごろから全国各地で行われるようになり、参加者は「大手メディアがデモを報じないからこそ来た」と説明しているとコラムは指摘。政治不信だけでなく、大手メディアも信頼されていない状況が浮かび上がっていると憂慮した。

 衆院選は2月8日に投開票が行われる。大手メディアの多くは世論調査の結果として自民党と維新が圧勝するとの情勢予測を報じている。中には「自民と維新で300議席を超える」という予測もあり、注目を集めている。

 ITジャーナリストの井上トシユキ氏は「世論調査通りの投票結果に終わったとしたら、まさに自民は“高市推し”の強力な風をフル活用して勝利を収めたことになります」と言う。

「これまでの自民党は業界団体など組織票を固め、さらに連立政権を組んでいた旧公明党の“学会票”を上乗せして選挙で勝利を収めてきました。党首人気を最大限に利用した選挙戦は自民党にとって初めてだと言えます。例えば小泉純一郎氏も人気を誇りましたが、”高市推し”や”サナ活”が社会現象になった高市さんの人気とは性質が違います。選挙戦も終盤を迎えていますが、今のところ“高市旋風”が衰えを示すことはありません。これほどまで“高市推し”の有権者が増えた理由を考えるためには、財務省解体デモを改めて振り返る必要があると思います」

広まった「反財務省」言説

 井上氏は「財務省解体デモの歴史を振り返ると、当初は自民党支持者の参加は少ないという特徴がありました」と言う。

「無党派層を筆頭に、参政党と国民民主党の支持者が続き、少数とはいえ旧立憲民主党の支持者が参加するという状況でした。ところが高市さんが自民党の総裁選に勝利した頃から流れが変わり、政権発足で財務省解体デモの参加者が徐々に“高市推し”に変わったと見ています。背景にあるのは『高市さんと財務相の片山さつきさんでタッグを組み、財務省をコントロールしてくれるに違いない』という期待感です。財務省解体デモに参加するような有権者層も惹きつけてしまうところが高市人気の凄さだと思います」

 そして衆院選が始まると、“反財務省”という一種の政治潮流が、さらに多くの有権者に知られるようになったという。

「有権者は政治に強い関心を持つ人ばかりではありません。実際、衆院選の投票率も5割台です。相当数の有権者が消費税に対して『買い物をすると自動的に課税される税金。福祉のために使われるらしい』といった程度の知識しか持っていませんでした。ところが高市さんが消費税減税を公約に掲げると、有権者は『消費税って下げることもできるのか!』と驚いたわけです。こうした有権者は財政積極派と財政規律派の対立なども今回の総選挙で初めて把握しました。『財務省が国民をいじめており、高市さんと片山さんは一生懸命に抗っている』という言説が政治に関心の低い有権者にも届いたと言えます」(同・井上氏)

注目が集まる経済政策

 ただし、実際に自民と維新が圧倒的な大勝を果たしたとして、それが高市政権の強い“追い風”になるかは疑問だと井上氏は指摘する。

 これは一般的な常識とは逆と言っていい。現有の198議席が230議席や240議席に伸びたのなら、高市氏の政権基盤は盤石になるはずだ。長期政権の可能性が取り沙汰されても全く不思議はない──。

「もし自民党と維新が300議席レベルの大勝を成し遂げたとしたら、有権者が高市政権に求めることは非常にシンプルなものだと考えられます。つまり、まさに“反財務省”の政策を実施してほしいということです。最優先は『痛税感』の払拭でしょう。税と社会保障の負担は4割を超えており、『五公五民』という言葉が脚光を浴びたこともありました。高市さんは消費税減税と、その後に『給付付き税額控除』を実施することで国民の負担感を和らげると説明していますが、果たしてその通りになるのかという問題です」(同・井上氏)

 痛税感の払拭と並行して取り組んでほしいと国民が望むのは、実質賃金の上昇だ。

「日本がデフレ経済だった時は『収入は少ないが支出も少ない』というライフスタイルでした。しかしインフレ経済に転じると『給与が増えても物価高に追いつかない』状況に変わりました。高市さんは物価上昇を超える収入増を実現できるか、選挙後に国民の注目が集まるのは必至でしょう」(同・井上氏)

期待が失望に転じる可能性

 国民の望みを要約すれば「痛税感をなくしてもらいながら日本経済を復活させ、本格的な好景気を実現して手取りを増やしてほしい」──という感じだろう。

「果たして高市さんが国民の切実な要望に応えることができるのか、今年の政界における大きな注目ポイントの一つでしょう。衆院選が大勝で終われば、それは高市さんに対する期待の大きさを意味します。もし高市さんが経済政策で目立った成果を上げられないと、期待が大きかった分だけ失望もまた大きくなる可能性があると思います」(同・井上氏)

 XなどのSNSでは高市氏に対する批判が広く拡散した時もあったにもかかわらず、高市氏の動画は再生数が1億回を超えた。

 第1回【「消費税12%」「高市逃げた」「統一教会」…“高市サゲ”ワードが氾濫しても高市旋風が揺るがない理由 旧民主党が308議席を獲得した09年総選挙との共通点とは】では、旧民主党が2007年に巻き起こしたブームに匹敵する“高市推し”の実態について詳細に報じている──。

デイリー新潮編集部