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動くことへの感動は常に変わらない

マツダは昨年、『創(ARATA)』というコンセプトモデルを北京モーターショーで発表。その市販モデルが同じく今年の北京モーターショーで『EZ-60』として登場した。長安マツダとBEV協業車で、EZ-6に続いて2台目となる。

【画像】未来の魂動デザインとは?コンセプト『創(ARATA)』、『アイコニックSP』、『ビジョンクーペ』そして『マツダEZ-60』 全81枚

このベースとなったARATAについてマツダデザイン本部の木元英二さんに話を聞くと、マツダとしてのデザインの取り組みが見えてきた。


昨年の北京モーターショーで発表されたコンセプトカー『創(ARATA)』。    マツダ

そもそもマツダは、クルマを通じて人々にポジティブな活力を与え、『前向きに今日を生きる人の輪を広げる』ことを目標にクルマ作りをしている。デザインも、『動くことへの感動』や高い品質などを通じてそこを目指し、ときめきのあるデザインを志している。

それはARATAも同じで、「電動車だからとか、中国市場は特殊だからとかいう話はありますが、その目標は同じ」と木元さん。

その上でマツダ・デザインは動くことへの感動を、それぞれの時代に即した表現で実践。そこには大きくふたつの流れがある。ひとつは艶(エン)と凛(リン)という日本の美意識の伝統に基づいた進化で、コンセプトカー『ビジョンクーペ』が代表格だ。

もうひとつは時代の要請に応えるようにモダンストリームを加えて、より幅広い表現を行う実験的なもので、魂動デザインの幅を広げて新たな価値を模索する役目を負っている。市販車では例えば『MX-30』や『CX-50』がそれにあたり、ARATAとEZ-60はこのモダンストリームの流れだ。

「電駆という新しい駆動方式で、クルマとの新しい関係を期待する人たちに、新しい生活を予感させるクルマを魂動デザインで表現したモデルARATAです。マツダとして新しい旅立ちに相応しい名前として、『創(ARATA)』と名付けました。未来に向けてマツダが新しいものを(長安マツダと)共創し、新たな1歩を踏み出したことを表現しています」

未来のクルマのアピアランスを

ARATAのデザインテーマは『ソウルフル+フューチャリスティック×モダン』。

「マツダが新エネルギー駆動時代に向かうにあたり、日本の伝統美に裏打ちされた魂動のソウルフルなデザインと、最近の中国NEV(新エネルギー)車に代表される未来的なモダンデザインを融合させ、それが日本から出て来た新しい魅力的な選択肢になること」がそこに込めた思いだ。


マツダデザイン本部の木元英二さんに、ARATAについてインタビュー。    内田俊一

サイドシルエットは人間中心を表現するデザイン構成としながら、「未来的な『ロング&スリーク』シルエットにしました」と木元さん。分厚いドア断面と4 つのタイヤにしっかりとトラクションがかかるような立体構成は、魂動デザインらしい力強いダイナミックさを感じさせる。

ARATAはエンドピラー(Dピラー)周辺に大きな特徴がある。シンプルで張りを感じる面を前後でシャープに切り取ったモダンな造形としたうえで、この内側を空気が流れることにより整流効果を生み出し、「機能と美しさ、未来感を兼ね備えたものになっています」。

こういったエアロダイナミクスは、電駆車にとって特に高速域で電費を稼ぐために重要な手段だ。そこでARATAとEZ-60には、ボディ各所にエアロデバイスが組み込まれている。例えば、「フロントエンドのボンネット先端や、バンパー両サイドにもエアトンネルを設けてエアロダイナミクスの向上を図っています」と木元さん。

これはシグネチャーウイングの下にあるエアインテークも同じ考えだ。エンドピラー部分と連動し左右別々に開閉するもので、高速域の電費とともにコーナリング特性も向上させる狙いもある。

そしてこれらのアイテムは、「空力特性を上げるだけでなく、来るべき電駆時代以降の、未来のクルマのアピアランスを予感させるものとして採用しています」と理由づけた。

シグネチャーウイングは電動化でどうなる?

フロントに目を移すと、魂動デザインが世に出てからシンボリックに表現し続けてきたシグネチャーウイングに目が行く。

「1997 年にブランドシンボルを制定した時に決意した『未来への想い』を象徴したものがシグネチャーウイングです。駆動方式が変わっても決して忘れることはなく、マツダの誓いとして継続、進化させていきます」


アイコニックSPの『黒い目』(左)とコンビランプを重ねたような『クロスサークル』(右)。    マツダ

では、BEV化してもシグネチャーウイングは継承するのだろうか?

木元さんは、「模索をしている途中」としながらも、「マツダの顔はシグネチャーウイングだと思っています。ここから顔の作り方が始まるのに変わりはない。そこから自然と顔を感じる、ちゃんと黒い目があるなどの新しさを進めていかないといけないでしょう」と語る。

その『黒い目』はコンセプトカー『アイコニックSP』にも採用されており、ライト内部に『点』を入れることで、「ここが瞳に見えるような表情です。アイコニックSPあたりからの流れで、これも新しい表現手段のひとつとして広がっていくかもしれません」。

また、リアまわりに関してはこう語っている。

「エンドピラーからタイヤまでひとかたまりでトラクションを感じさせる未来的なシルエットを創り上げました。リアランプのグラフィックは、ふたつが重なったクロスウイングとしています。これはリアコンビランプの丸をふたつ重ねたようなアイコニックSPのクロスサークルに続くもので、マツダのブランドを表現するクロスシリーズとしてデザインしてます」

魂動デザインで強く感じていた『光の移ろい』は少し影を潜めているものの、BEVであっても、力強く4輪にトルクがかかる印象はしっかりと表現されている。魂動デザインの新しい一歩になるかは未知数だが、その行方に期待したい。