@AUTOCAR

写真拡大 (全5枚)

アルファベットに紐づいた想像力と魔力

ポルシェ乗りの編集者、T君からラインが入った。「今度ボクスターTを借りるので、ぜひ乗りましょう! いいですよね、T!」。彼はTという部分に興奮しているようだ。たったアルファベットひと文字で熱くなれる。商売上手なポルシェにコロッとやられてしまっているクチである。

【画像】718ボクスターTと「ふつうの」718ボクスター どう違う?【ディテール比較】 全70枚

とはいえ僕も、そのTというグレードが気になって、色々と調べはじめてしまった。「RS」と言われたら、調べるまでもない。「ああそうですか、了解しました」という感じ。でも素の718ボクスターでも、全部載せのGTSでもなくTというのが、なんだか気にかかる。


ポルシェ718ボクスターT

古くからのポルシェ・ファンであれば、Tといえばナローに設定されていた911 Tを指す。その一文字が指し示すところは「ツーリング」。ところが実際の911Tは何もついていないシンプルなグレードだった。それが神格化したのは、ベーシック=軽い→レースカーのベース車両として用いられた史実ゆえである。

そういえば以前、911やケイマン、そしてマカンのTにも乗せてもらったことがある。「シンプルな構成でドライビングプレジャーを満喫するためのモデル」とかいう説明だったと思うのだが、こと911に至ってはバケットシートやら何やら色々とオプションが追加されていて、賑々しかった記憶がある。

「断捨離しましょう!」とか提案しておいて、部屋がキレイになったら今度は「大きなソファー買いましょう!」みたいな。今どきのポルシェのTは、そんな戦略なのかもしれない。

必要以上のヤル気ナシ 絶妙な立ち位置

大黒パーキングエリアに屋根を閉じた黄色いボクスターがやってきた。あれがTだ! と直観的に思った。塗料に含まれる顔料は、濃い方が色々と入っていて原価が高いと聞いたことがある。黄色というのはだから、たぶん安い方。でも白ではなく黄色というあたりに「シンプルだけど、走りの楽しさに特化したモデル」、つまりTらしさが漂っている! などと勝手に決めつけていた僕は、既にポルシェにコロッとやられていることに、今気がついた。

それにしても今回のTは絶妙だ。試乗車はPDKではなく6速MT、そしてもちろんフラット4ターボを搭載しているという点でプリミティブな匂いがする。個人的には標準で20インチタイヤはいらないなぁ、とか思ったのだけれど、そのヘンペー具合がバレないように(?)ホイールが黒く塗られているのがありがたい。T乗りたるもの、必要以上にやる気を見せたくないのだ(←オーナー目線)!


大黒PAに止めていると、RSのようにBMWのM乗りがわざわざ寄ってきたりしない涼しさがいいし、でもGTSのように「オプション選びが面倒くさかったので」という大雑把な感じもしない。

大黒PAに止めていると、RSのようにBMWのM乗りがわざわざ寄ってきたりしない涼しさがいいし、でもGTSのように「オプション選びが面倒くさかったので」という大雑把な感じもしない。

Tには「それなりに歴史やスペックを踏まえた上で、敢えてコレを選ばせていただきました」感がにじみ出ている、と思うのは僕だけだろうか? いや、いつもレーシーなプーマではなくニューバランスを履いているT君も似たような意見だろう。

乗る前から良車認定してしまいそうな718ボクスターTだが、本当のところはどうなのか? そこはやはり乗ってみないと。

T乗りの踏み絵、ポルシェ礼賛

クラッチからの情報が乏しく、しかも低速トルク弱めの4発ゆえ、「MTは久々……」というドライバーなら、いきなりエンストは必至。たぶんこれは、ポルシェが用意した踏み絵だ。「彼女の前で恥をかかせやがって!」とかいう人にT乗りの資格はない。ちょっとした困難をむしろ歓び、乗りこなしてやろう! と思える人のための1台なのだ。たぶん。

幌を開け放ち、夜の首都高に合流する。フラット4の音色は快音の類ではないが、回転数に音量が比例しているので、視覚(レブカウンター)ではなく聴覚でシフトタイミングがわかる。そして何より、Tは動きが軽やかだ! 鼻先の燃料タンクが空に近いからそう感じるのか? ミッドシップを哲学的に掘り下げたくなるのもTらしさ、ではないだろうか。


ポルシェの常で公道レベルのスピードでは荷重移動で操る、みたいなゾーンには入れないのだが、実際にTの乗り味はスッキリとして雑味がない。

実際は最近たて続けに718ボクスター/ケイマンの4リッターモデルを試乗した感覚が残っているのかもしれない。スペック的にもなぜかTは素の718ボクスターよりも30kg程度重かったりするのだから。

それでも不必要なくらいにシフトアップとダウンを繰り返しながら走っていると、コレは実に気持ちがいい1台だ! と思い込みたくなる自分がいる。ポルシェの常で公道レベルのスピードでは荷重移動で操る、みたいなゾーンには入れないのだが、実際にTの乗り味はスッキリとして雑味がない。

試乗車はそれなりにオプションが盛られ、1本を越えていたが、Tの味はツルシでも味わえるはず。ポルシェの術中にハマった人間が言うのもナンだが、これはお薦めだ。

ポルシェ718ボクスターTのスペック

価格:881万円
全長:4380mm
全幅:1800mm
全高:1260mm
最高速度:275km/h
0-100km/h加速:5.1秒
燃費:-km/L
CO2排出量:-g/km
車両重量:1380kg
パワートレイン:水平対向4気筒1988ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:300ps/6500rpm
最大トルク:38.7kg-m/2150-4500rpm
ギアボックス:6速マニュアル


ポルシェ718ボクスターT