西浦 また、従来は地下に置いていた電気系統設備についても、屋上に移すといった対策も打っています。こうした対策を打つことで、テナントさんは物件の安全性に安心感を持たれるでしょうし、元から当社の特徴である駅から近いことに加え、建物に様々な新技術が付加されることに満足感を持っていただける可能性が高い。

 ですから、私が社内でこれらの事業を担当している「プロ集団」に伝えているのは、地震が来た時、風水害が起きた時など、様々なリスクへの備えに加えて、例えば富士山が噴火した場合にどうした事態が起きるかについて考えて欲しいということです。

 私がこの会社の社長に就任して以降も、08年の上場の年にシーマンショックが起きましたし、11年には東日本大震災がありました。そして今回のコロナ禍、さらにはウクライナ侵攻のような地政学リスクもあります。さらには先程申し上げたような環境問題、地震の問題など、常に企業経営は危機と隣り合わせだということです。

 また、社内の内部統制も重要です。社員が不正を働く、あるいは自社が扱っている商品の品質に問題があったという場合には、会社全体の危機につながることもあり得ます。

 ─ 日本を代表する大企業が不正問題などで危機に陥った事例はいくつもありますね。

 西浦 ええ。ですから経営、社員、商品の品質を担保できているのかどうかということも考えていかなくてはなりません。当社は本体で約200人、グループ全体で千数百人という会社ですが、そうした中で問題が起きないように、いかに内部統制をきちんとしていくかは、永遠の課題です。

 その意味で、様々な危機対応について、少しコストがかかるといっても、それをきちんとした方が、結果的に安いのかもしれないと思っています。

米MITと連携し自然換気システム導入
 ─ 西浦さんが経営者として、常に意識していることは?

 西浦 企業経営においては「成長性」、「収益性」、「生産性」、「安全性」の4つを高いレベルでバランスさせることを常に意識しています。

 そしてもう1つ、今も大事ですが将来においても、先程お話したリスク管理、危機対応と同時に、新規事業をいかに立ち上げていくかが問われます。

 新規事業が全くない中で、急に頑張ろうと思ってもできません。特に我々不動産業の場合に、先程申し上げた建て替えをするにあたっても、計画をし、図面を引き、テナントに出ていただき、建物を壊して、新たにつくるという形で最低5年ほどはかかるわけです。

 その意味では、足元の決算も大事ですが、10年後など長期を見て経営をし、手を打っていくことが非常に大事だと考えています。

 ─ 近年、株主を始めとしるステークホルダーとの向き合い方が企業の課題となっていますが、西浦さんの考えは?

 西浦 当社は一度も業績の下方修正を行ったことがありませんから、それは株主の方々の安心感につながっていると思います。また、配当性向は今期40%を超える見通しです。これはデベロッパーの中でも最も高い配当性向です。

 同時に、社員にはできる限り高い給与、高いフリンジベネフィット(給与以外の経済的利益)、そして良好な労働環境の提供を意識しています。

 例えばMIT(マサチューセッツ工科大学)と共同開発した「自然換気システム」や「自然採光システム」を導入しています。この自然換気システムは、外気温湿度条件が良い時は、10~15分毎に外部の空気と入れ替えを行っています。

 ただ、私も海外を視察しましたが、ドイツなどのように建物の周囲に余裕がある国では、こうした自然換気システムは有効だとされていますが、日本のように建物が密集している国で有効なのかどうか。特許は取得していますが、今後さらに効果を検証していく必要があります。