まことしやかに囁かれる、恋愛にまつわる都市伝説。

東京には、こんな定説に振り回されず、思うがままに人生を楽しむ女たちがいる。

だって彼女たちは、自分の“恋愛フィロソフィー“を持っているから。

前回は、8回目のデートで、お付き合いを始めた女性を紹介した。




ケース9:デートで割り勘にされる女は大切にされていない?


女って、本当に単純だと思う。

「原田さん、今忙しい?これもお願いできる?」

「あ、はい!全然大丈夫ですよ、やっておきますね〜」

恋をすると、どうして上機嫌になってしまうのだろう。その恋がうまくいっていれば尚のこと、気分が高揚するのを止められない。

嫌な仕事を率先してやってしまうほどに。

「絵里、最近ご機嫌じゃん。彼氏でもできた?」
「うん♡」
「え、嘘でしょ?」
「聞いといて何よ、その反応は」

通りがかった同僚が冗談のつもりで話をふったのだろう。まさかの回答に目を真ん丸にしてこちらに顔を向けている。

まあ、無理もない。

外資系広告代理店に勤め始めて9年。今年で31歳になる私は、29歳の時に3年ほど付き合っていた彼氏と別れて以来、恋愛の方は鳴かず飛ばずでずっと恋人がいなかったのだから。

「この前ね、ずっと行きたかった恵比寿のイタリアンに彼と行ってきたんだ♡ちょっと奮発しちゃったんだけど、めっちゃおいしかったよ」

「え、ちょっとまって。奮発したって、絵里もお金出したの?」

「うん、普通に割り勘だけど」

「…ありえない」

今度は唖然とした表情でこちらを見ている。

確かに、私も最初は少し不安だった。いい歳してデートで割り勘なんて、私大事にされてないのかなって。

だけど、ある時気づいたのだ。

そんなことで男からの愛情をはかるなんて、バカげている。むしろ、そんな基準で男を判断していたら、いい男を逃しかねない、と。


デート代を割り勘にするか否かで男を判断すべきじゃない、絵里がそう思うに至った出来事


智樹と初めて出会ったのは、大学時代の派手な友人に誘われて久々に顔を出したとある飲み会だった。

ギラついた男性陣に居心地の悪さを感じたことをよく覚えている。

「どうも、智樹っていいます」

外資系メーカーで営業をしているという同い年の彼は、その中では比較的素朴な印象だった。

彼の方も私に同じ匂いを感じ取ったのか、私たちは自然と2人で話す流れになったのだが、それがなかなか楽しかった。

「よかったら、今度2人で食事でも行きませんか?」

「いいですね、ぜひ!」

正直、ルックスは全くタイプじゃなかったけれど、他愛もない話を面白おかしく披露する彼といると、自然と笑みがこぼれたし、自分も自然体で話せてとても心地よかった。

―こんなにいいと思える人、久々に出会ったかも…。

乗り気でなかった飲み会で、思わぬ出会いがあり私は浮かれていた。

そして次のデートの日取りもとんとん拍子に決まる。

お店は、彼が事前に予約してくれた西麻布の『サッカパウ』。前から行ってみたかったお店でテンションマックスで当日を迎える。

彼はワインに詳しいらしく、赤ワインをボトルで入れてくれた。

相変わらず彼の繰り広げる面白可笑しいエピソードにひとしきり笑い、楽しいひと時を過ごした。

そして、コースの終盤デザートを食べ終えた頃、私がお手洗いに行っている隙に彼はスマートにお会計を済ませてくれていた。

「そろそろ行こうか」

お店を出たところで「ごちそうさまでした」とニコリと微笑んで、私は一応財布を出す素振りをした、その時。




「じゃあ、4,000円だけもらっていい?」

ーえっ、徴収されちゃうんだ?

私は財布を出すフリではなく、本当に財布を出して彼に4,000円という微妙な金額を支払った。しかも、1万円札しか持っていなかった私に律儀に6,000円のお釣りをくれた。

内心彼の行動に驚いたが、とびきりの笑顔を作って「え、4000円でいいの?ありがとう。ごちそうさまです」と丁寧にお礼を言った。

社会人になってデートした人たちは、食事に行けば必ずといっていいほどご馳走してくれた。特に1回目のデートでは財布を出した記憶がない。

だから、“男性が自分に気がある場合は、ご馳走してくれる”という考え方が自分の中で定着していた。

その後、彼と別れた後、私は一人悶々と考えた。

―私、女性として大事に扱われてない?それとも彼ってもしかしてケチ?

「4,000円」という微妙な金額と、彼の行動は私の中で様々に思惑を呼んでしまったのだ。

彼はその後も何度かデートに誘ってくれたがデート代はほぼ割り勘だった。むしろ最初のデートでは、多く支払ってくれたのは彼なりの誠意だったのかもしれない、と感じるほどしっかり割り勘だった。

それでも彼といる時間は楽しくて、とんとん拍子にお付き合いがスタートすることになる。


デートで決して奢ってくれなかった彼とお付き合いがスタートする。果たして、彼は何を考えているのか?


智樹の年収は推定1,000万円以上。趣味のゴルフ、比較的多い飲み会、麻布十番に借りているマンションの家賃。支出は多い方だろうが、年収を考えれば、デート代をケチる必要はない気がする。

―なぜ、彼は常に割り勘なのか?

順調にお付き合いを重ねるも、その一点の小さな疑問が、ずっと心の中でくすぶっていたある日。思わぬことがきっかけで、私はこの悩みから解放されることとなる。

それは、大学時代の友人と久々に会ったときのこと。

フリーでカメラマンをしている彼女は、別の友人から商品撮影を頼まれたときの話をしてくれた。

「最初はね、友達価格でやるよ〜って言ったのよ。なのに彼女、ちゃんと正規の値段払うって言ってきてさ」

「予算に余裕あったんじゃない?」

「まあ、彼女の会社、大企業ではあるけど。それより、ちゃんと私と対等な関係で仕事がしたいから、って言ってくれて。なんかすごい嬉しかったんだよねー。こっちもちゃんとしなきゃって背筋が伸びたのよ」

―対等な関係。

彼女の話は、あくまで仕事における金銭的なやりとりについてだが、私はその言葉が妙に頭に残ってしまった。

妥当な金額をちゃんと支払うこと、それは対等な人間関係を築くことになる。彼女から聞いた話は、私と智樹にも通ずるような気がしたのだ。

私は智樹の人間性がとても好きだ。過去のどんな失敗も笑い話にしてしまう楽観的なマインド、仕事への真面目な姿勢、きめ細やかな気遣い。男性としてだけでなく、1人の人間として尊敬している。

そんな彼が、私を1人の人間として対等に見てくれているのであれば、それはとても誇らしいことなんじゃないか、と。

それに、智樹は私の誕生日にはちゃんとディナーをご馳走してくれたし、欲しいと思っていたTiffanyのネックレスもプレゼントしてくれた。ケチではないし、なにより、日々彼からの愛情はしっかり伝わってくる。



男性が、デート代を女性に出させる理由はさまざまだと思う。

お金がないから、ケチだから、相手に興味がないから…。ネガティブな理由だっていくらでもある。

だけど、奢ってくれないというだけで、彼という人物を判断してしまうのは勿体ない。

奢る奢らないだけじゃない、まずは普段の彼の態度や言動から、どれだけ愛情を感じるかのほうが重要なのかもしれない。




智樹:「僕は、あえて割り勘を貫き通している」


僕はあるときから、デートではちょっと多めに払うこともあるが、基本割り勘主義になった。別にお金が惜しいわけでも、相手を軽んじているわけでもない。

むしろ若いころは、男なら奢ってナンボだと思っていた。一言で言えば見栄を張っていたのだと思う。

だが、そんな見栄を張ったところで素敵な女性と付き合えるわけではない。結局のところ、ご馳走してもらうことだけが目当ての女性たちもいた。

年齢を重ねるうちに女性に対する価値観が変わり、精神的にも経済的にも自立した女性と真剣にお付き合いしたいと思うようになったのだ。

対等に話ができ、人間としてもお互いリスペクトできるのが理想の関係。

そんな関係性になれるような女性とのデートで、僕は敢えて割り勘を貫き通している。

もちろん、嫌な顔をされ、それっきり連絡が取れなくなった女性もいた。だけど、奢られることが当たり前だと思っているような女性は、こちらから願い下げだし、割り勘にした時の女性の反応は、僕が真剣に向き合いたいと思える女性を判断するいいバロメーターになっている。

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最終回:「歳を重ねると、恋に臆病になる?」に異論を唱える女性が登場!