日本サッカー界の“才女”、大滝麻未にインタビュー!「逃げる勇気」と「最後の挑戦」

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「2018プレナスなでしこリーグ2部」を2位で終えたニッパツ横浜FCシーガルズ。

今月行われる「2018プレナスなでしこリーグ1部・2部入替戦」でクラブ史上初となる1部昇格を目指しているが、そんなチームを牽引しているのが、今季から中学・高校時代に所属した古巣へ復帰したFW大滝麻未だ。

今季のなでしこリーグ2部得点女王に輝いた元日本代表は、フランスでも長くプレーしてきた。

そんな大滝に、国際目線の視点でなでしこリーグを振り返ってもらいながら、直前に迫った入替戦への意気込みを聞いた!(取材日2018年11月30日)

後半のゴール量産で得点王に

――まずはチームとして、なでしこリーグ2部で2位となっての入替戦の出場権獲得。この結果についてはどのように捉えていますか?

大滝麻未(以下省略):最低限やらなければいけないことはできたかな、という思いです。

結果的に勝点では(1部自動昇格の)1位・伊賀フットボールクラブくノ一さんとは大きく離れてしまいました。そこ(1位)を狙っていけるチームだと思っていたからこそ、1番良い結果ではなかったと思います。

その上で、最低限やらなければいけないことを、チームとしてできた結果が2位だったので良かったと思っています。

――個人としては全18試合11得点で得点王に輝きましたね。特に後半戦で8得点、何か変化があったのですか?

前半戦は試合に出るメンバーが変わっていたので、選手個々の組み合わせやコンビネーションが洗練されていなくて攻撃のパターンも少なかったと思います。

それが後半戦に入ってメンバーが固まってきたのもあって、良い形が増えてきたことで得点が増えたと思います。

――2年間のブランクを払拭し、コンディションが上がって来たのもあるのでしょうか?

それはあると思います!引退する前もずっとコンスタントに試合に出続けていたわけでもありませんでした。“試合勘”を戻すというのは、それなりに時間がかかったと思います。

――一方、チームは後半戦は得点と共に失点も増えて来ました。

失点はですね…(少し考え込んでから)すごく多かったのが2点先制してから追いつかれたり、逆転されることでした。勝てそうな試合展開になった時に気が緩んでしまうというか、甘かったと思います。

「サッカーは2-0が1番危ない」とよく言われますし、みんな気を抜いているわけでもないんですが、いざ2-0になった時の精神状態は、今までそういう試合展開や局面をあまり経験して来なかったのもあると思います。

――そんなシーズンの中でターニングポイントになった試合は?

チームとして試合を重ねるごとに良くなって来ているので、特に勢いがついたような印象に残っている試合はなかったんです。

ただ、私としては、14節のオルカ鴨川FC戦と15節の愛媛FCレディース戦で、2試合連続で2点先制しながら勝ち切れなかったことですね。オルカ戦は2-3で逆転負けして、愛媛戦も2-2の引き分けに終わってしまって。終盤戦に入っている中で、チーム全員の意識が変わるキッカケになったと思います。

もしこの2試合で勝っていたとしたら、どうなっていたかは分からないですが、今考えれば必要な経験だったと思います。

好きな男子サッカー選手はあの人!

――ところで今季決めた11ゴールの“内訳”は御存知ですか?

ヘディングが多かったのは覚えているのですが…。

――さすが!まずPKが1得点ありました。それを除くとヘディングで4得点、右足と左足で3得点ずつです。

ありがとうございます!(笑) 正直、ヘディングは背が高い(172cm)ということが大いにあると思います。

両足で蹴れるのはシュートに限らずですね。どんな場面でも利き足だけでなく両足でボールを扱えるのは自分の武器だと思っています。

――日本人は両足を使える選手が多いですよね。

海外の選手は利き足以外は全然使えない選手ばかりです。逆に日本人は器用なので、両足で蹴れる選手がかなり多いですね。

――なるほど。海外というとどうしても「球際」の話になってしまうのですが、シーガルズのサッカーは「球際の強さ」に特徴がありますよね。

ウチのチームは確かにそこに特徴があると思います。それでも、「もっと強くいってもいい」と、練習中からでも思うことがよくありますね。

――欧州などに比べると物足りませんか?

2部だというのはあるのですが、フランスに比較すると球際の迫力はまだまだだと思います。

駆け引きは日本人の方が上手いんです。ただ、単純に球際の強さでいうと、まだまだだと思います。それはシーガルズを見ていてもそうですし、対戦相手や他のチームを見ていてもそう思います。

そういう球際の強さが全体的に上がっていけば、なでしこリーグ全体のレベルがもっと上がっていくのだろうな、と思います。

――なでしこリーグで4連覇を達成した日テレベレーザも?練習試合(11月17日)では1-6で敗れてしまいましたが…。

ベレーザの場合は強さより巧さでいなして来るので、巧さで翻弄されてしまいました。

――ところで、大滝選手は自分たちの試合以外にもサッカー観戦をするのですか?

欧州のサッカーは満遍なく観ます。最近はマンチェスター・ユナイテッドの試合をよく観てますね。

――ちなみに好きな選手は?

元ドイツ代表MFメスト・エジル選手(アーセナル/イングランド)ですね!特にレアル・マドリー時代のエジル選手が好きでした。

あと、ベルギー代表MFエデン・アザール選手(チェルシー/イングランド)も好きでよく観ています!大柄でドシッとした選手よりは、その周りを動き回るようなテクニックのある選手が好きですね!

――ファンタジスタタイプの選手がお好きなんですね!そういえばフランスのオリンピック・リヨンに在籍されている頃は、あのロッタ・シェリン(※)選手の後ろでプレーされていました。

もし、私のような長身FWの選手がもう1人いたら、私は1.5列目に落ちてプレーすると思います。ただ、チームに求められていることもあるので、それはチームのバランスも見ながらプレーしています。

※ロッタ・シェリン:「女イブラヒモビッチ」の異名を持ち、欧州No.1のFWと称されたスウェーデン女子代表。今年8月に現役引退を発表。

「最後の挑戦」は2020年東京五輪

――最後にピッチ外のことについて伺います。7月に東京駅近くの『TRAVEL HUB MIX』さんで行った講演のタイトルが印象的でした。「逃げることで見えた新しい世界」とはどんな世界なのでしょうか?

1度現役を引退することで新たな世界が開けました。

実はサッカーを少し諦めていたところがありました。そのまま続けていても何も残らなかったと思いますし、あのあと2、3年続けて引退して復帰もしなかったと思います。

何かを辞めることは勇気が必要だと思いますけど、結果的に今こうして話せることは良い選択だったからこそだと思います。

――昨年パリで復帰され、今年シーガルズへ。中学・高校時代を過ごした古巣とはいえチームは2部でした。

自分の現役生活の最後になるのは分かっているので、それならシーガルズしかないと思っていました。

あと現実的に1部昇格の可能性が十分にあるチームだと思っていたので、そういうチームで2部から昇格して1部で戦いたいと思って加入を決めました。

――ご自身のSNSでも「サッカー人生最後の挑戦」と宣言されていましたね。その「最後の挑戦」の目的地をうかがっても宜しいですか?

東京五輪に選手として出場することですね!

――おお、2020年が楽しみですね!それでは最後に、入替戦への意気込みをお願いします!

私たちは巧いチームではないので選手1人1人がハードワークして、できることを最大限やって戦っています!それはサッカーをするうえで凄く大事なことだと思っています! 

私はチームでも経験もあって年齢も上の方の選手です。入替戦という昇格が懸かる中でも、みんなが試合を楽しめるように試合を上手くコントロールしていけるようにするのも私の仕事だと思っています。

入替戦も今まで通りに選手1人1人がやれることを最大限ハードワークして勝ちに行きます!勝つことが条件になるので、私自身は得点という形でも勝利に貢献できるようにしたいと思います。

ファン・サポーターの皆さんには、ゴールに向かう姿勢を観て欲しいと思います!応援よろしくお願いします!

名前:大滝 麻未(おおたき あみ)
ニックネーム:あみ、PON会長
生年月日:1989年7月28日(29歳)
出身:神奈川県平塚市
身長:172cm 体重:60kg
ポジション:FW 背番号:30
今季なでしこリーグ2部:18試合出場11得点
なでしこリーグ通算(1・2部):39試合出場14得点
フランスリーグ1部通算:27試合15得点
日本代表歴:なでしこジャパン通算3試合出場0得点
ちょっぴり自慢したいこと:早起きが得意
話せる言語:日本語・英語・フランス語
所属チーム: 横須賀シーガルズ→早稲田大学ア式蹴球部女子→オリンピック・リヨン(2012.1-2013.6-)→浦和レッドダイヤモンズレディース(2013.6-2014.11)→EAギャンガン(2014.12-2015.5)で1度、現役引退。パリFC(2017.8-2018.1)→ニッパツ横浜FCシーガルズ(2018.1-)


“万能型FW”大滝麻未の活用術

→守備への献身で得点力を下げない仕組み

シーガルズは球際の強さや攻守の切り替えの速さなど、ハードワークで勝って来たチームだ。オーソドックスな<4-4-2>のシステムを組む中、2トップにも守備への貢献を求められる。

シーガルズの2トップが守備ブロックに入るのは、主に相手ボランチへのパスコースを遮断するため。つまり、2トップが守備に入る位置は相手のセンターバックとボランチの間なので、味方がボール奪取した瞬間には自然と相手DFラインとボランチの間の“ライン間”でフリーで受けられるような仕組みになっている。少しサイド寄りに動けば、それは欧州サッカーのトレンドでもある「ハーフスペースの崩し」と同じ現象であり、効果的な攻撃になる。

大滝がなでしこリーグ2部で別格の異彩を放ちながらも密着マークを受けているように見えないのは、大滝自身が守備を積極的にしているため、相手DFもマークしようにもできないのだろう。そして、その守備への献身が逆に効果的な攻撃に繋がっているため、得点力の低下にも繋がらない。実際、シーガルズは勝点で13差をつけられて伊賀に独走優勝を許したが、得点はその伊賀よりも多く、リーグ最多の32得点を記録している。

また、カウンター攻撃を仕掛ける際、FWに求められる能力は多岐にわたる。単純なポストプレーだけでなく、数的不利でもボールを収められるキープ力と、そこからのゲームメイク力やチャンスメイク力を求められる。これらの役割をこなしながら、ゴール前での決定力を発揮できるような万能型FWが必要だ。

今年4月に取材した際、大滝は自らの役割について、「下がってボールを受けてから、どれだけ速くゴール前に入っていってシュートに絡めるか?その回数を増やしていくことが今の自分の課題」と話していた。

そう考えると、好きな選手にエジルとアザールを挙げるのも意外ではない。そして、その課題を克服できたからこそ、得点女王に輝いたのだ。

『2018プレナスなでしこリーグ1部・2部入替戦』相手は、1部9位の日体大FIELDS横浜! 

入替戦の相手は日体大FIELDS横浜。昨季2部で優勝して1部に初昇格したものの、2部MVP選出のMF伊藤香菜子、元日本代表のレジェンドFW荒川恵理子ら主力の複数が他クラブに移籍。戦力ダウンした状態で今季の1部を戦い、9位に終わった。

ただ、シーズン途中に3バックに変更して守備を建て直しながら後方からのビルドアップの安定も身につけ、チーム力を上げながら入替戦に挑んで来る。シーガルズから見れば、1部では9位とはいえ、“格上”だ。しかも、2部には3バックのチームが少ないのも懸念される。

そんな中、得点源であり、ゲームメイクもこなしながら守備にも貢献できる万能型FW大滝の存在は頼もしい。語学堪能で頭の回転も速い彼女なら、試合中にも相手の出方や試合展開に合わせたプレーを選択しながらチームを牽引するだろう。入替戦が楽しみだ。

写真提供:ニッパツ横浜FCシーガルズ