「日本3大音楽フェス」関係者だけが知っている歴代ベストシーン:ROCK IN JAPAN FESTIVAL編

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今やすっかり夏の風物詩となった、音楽フェスが日本に根付いてから20年が経つ。近年は子連れで参加するオーディエンスも増えており、ビギナー/リピーターを問わず音楽と戯れ合う光景は、カルチャーとしての成熟ぶりを感じさせる。そのなかで、「日本の3大音楽フェス」と呼ばれるFUJI ROCK FESTIVAL(フジロック)、SUMMER SONIC(サマソニ)、ROCK IN JAPAN FESTIVAL(RIJF)は、アーティストと観客の熱狂が生んだ無数のドラマに加えて、フードやファッションといった音楽のみにとどまらないエンターテイメントの多様性でも時代をリードしてきた。そこで今回RSでは、それぞれのフェスと縁の深い関係者にインタビューを実施。彼らが目撃したベストシーンとエピソードを振り返ってもらった。

vol.02 ROCK IN JAPAN FESTIVAL(RIJF)

今年で19回目を迎える国内最大のロックフェスティバル、ROCK IN JAPAN FESTIVAL。開催を2週に分けるなど常に進化し、動員数、出演アーティスト数を年々増やし、規模を拡大し続けている。そんな同フェスで起きたミラクルな一瞬を捉え続けてきたオフィシャルカメラマン2人にインタビューを敢行! 彼らだからこそ見られたROCK IN JAPAN FESTIVALの景色とは?

※この記事は6月25日発売の「Rolling Stone JAPAN vol.03』に掲載されたものです。

INTERVIEW:Rui Hashimoto
僕の役目は「フェスっぽくない写真」を撮ることなのだと思います。

フォトグラファーとしてだけでなく、ライブイベントや写真展などを定期的に開催する他、自身のアパレルブランド『STINGRAY』のプロデュースなども手がける橋本塁。彼がROCK IN JAPAN FESTIVALのオフィシャルカメラマンとなったのは2005年、その年に新設されたステージ「SOUND OF FOREST」の担当だった。

「最初の年は、蛍光色のTシャツに金髪っていう格好で行ったら、2日目くらいに呼び出しを食らいましたね。『バンドマンよりも目立つんじゃない』って(笑)。翌日は頭に手ぬぐいを巻いて、黒いTシャツに着替えて撮影しました」

翌年は、「WING TENT」(現在は「WING STAGE」)という屋内ステージの担当となった橋本。LOSTAGEや、デビュー前後の9mm Parabellum Bulletをそこで初めて撮影し、その縁で付き合いが始まったという。続いて1万人規模の「LAKE STAGE」を3、4年担当。そして現在に至るまで、東京ドーム4個分に相当する大広場に設置された国内野外フェス最大級の「GRASS STAGE」に張り付いている。

「おそらく僕の役目は、『フェスっぽくない写真』を撮ることなのだと思います。構図もピントもカッチリ整った記録写真というよりは、もっとガチャガチャっとした、ライブハウスで撮っているような、普段の僕のテンションでGRASSを撮るという。いい意味での違和感が求められているような気がします」

実際、オフィシャルカメラマンの1日というのは、どのようなスケジュールなのだろうか。

「アタマ3曲は、ウェブサイトにアップするクイックレポート用としての写真、それ以降は本誌用として、各々のカメラマンっぽい写真の2パターンを求められています。昨年くらいからは、クイックレポートを写真のみで構成するようになったんです。すなわち、押さえるべき写真の点数も増えるわけですよね。例えば、それまでならヴォーカルをアップで撮った写真が1枚、バンド全体が写っている写真が1、2枚あれば良かったけど、今は全メンバーのソロカット、引きと寄りの写真という具合にバリエーションが必要になった。ソロアーティストもいれば、大所帯のバンドもいるわけで、それをアタマ3曲で撮らなきゃならないから結構大変です(笑)」


「2011年という年のRIJFは印象的だった」と語る橋本。大トリのBRAHMANは必然だったと振り返る。

「カメラマンは体力勝負」とはよく聞くが、想像以上にハードである。アーティストごとにまったく異なる演出。それを、どのように撮影するのがベストかを瞬時に判断し、限られた時間の中でベストショットを確実に押さえておく。しかも炎天下の中で、激しく動き回りながら。


ツアーなどにも帯同しているONE OK ROCK。GRASS STAGEでのアクトは荘厳。

「ライブの間の転換時間も、年を重ねるごとにどんどん短くなってきています。中でもGRASS STAGEが一番短いんですよ。20分か、せいぜい25分……スタッフ頑張りすぎでしょう!(笑)

その間にデータを全てコンピューターに落とし、メモリを初期化しカメラを掃除したらまたフォトピットへ戻る。しかも、毎回ウソみたいに晴れるから、暑さで死にそうになる。撮影のスキル云々より、体力あるかどうかのほうが大切かもしれないですね。ゴハンですか? 食べるとボーッとしちゃうので食べません。ウィダーインゼリーを流し込んだり、塩を舐めたり(笑)。アスリートと変わらないですよね。なので最近は毎日5キロ、サウナスーツ着て走り込んでいますよ」

さて、そんな橋本がこれまで撮影してきた中で、特に印象に残ったアクトを聞いてみた。

「真っ先に思いつくのはthe HIATUS。彼らのステージの後半、ROCK IN JAPAN FESTIVALにしては珍しく土砂降りになったんですよ。しかも笑っちゃうくらい。僕は、雨が降るとシャッタースピードをものすごく上げて取りたくなるんですね。そうすると、雨粒がピタッと止まったような写真が撮れる。しかもそのときは、ステージの後ろから照明が当たり、雨がキラキラ光ってまるで演出の一つのような写真が撮れたんですよね」


雨粒が光るthe HIATUS。一時だけ降った雨の瞬間を見事に切り取ったショット。

学生の頃から観ていたTHE YELLOW MONKEYの撮影も、鮮烈に覚えているという。

「確か”LOVE LOVE SHOW”の時だったと思うんですが、フロントの3人がステージの縁にグワッと集まって、肩を組みながら歌っているタイミングで撮った写真があるんですが、ああいうときはやっぱり『ああ俺は今、歴史的瞬間を撮っているんだな』って思う。それと、この時はちょうど吉井(和哉/ヴォーカル)さんの足の間に菊地(英二/ドラム)さんも入って、4人全員を収めることができた。『やった!』って思いましたね」

最後に、ROCK IN JAPAN FESTIVAL全体の印象を聞いた。

「異常ですよね、いい意味で(笑)。あんなに広大で、都心からも近く自然もあって、その上恐ろしいくらいホスピタリティが充実している。それってロッキング・オンの人たちの、お客さんに対するケアがハンパないからなんですよね。とんでもないフェスだと思います」


復活に歓喜の渦が巻き起こったTHE YELLOW MONKEY。まさに歴史的瞬間。


橋本塁
カメラマン。北海道出身。24歳の時ジーンズのパタンナーから突如カメラマンに転身し、雑誌『ollie magazine』の社員カメラマンを経て独立。HAWAIIAN6、ONE OK ROCK、MAN WITH A MISSIONなどをはじめ多くのアーティストのライブ写真を撮り続ける。DOTブランド『STINGRAY』のプロデューサーも務める。
http://www.ruihashimoto.com/

INTERVIEW:Teppei Kishida
WANIMAが盛り上がってるのを見て、完全に親戚のおじさんでした。

フェスはもちろん、大小様々なライブハウスで国内外のアーティストを撮り続けているフォトグラファー、TEPPEIこと岸田哲平。彼が初めてROCK IN JAPAN FESTIVALの公式カメラマンとして呼ばれたのは、2001年の第2回目。以降、2003年、2004年以外は全て参加している。

「ROCK IN JAPAN FESTIVALが最初からユニークだったのは、ステージごとの特徴がはっきり分かれていたこと。僕が担当していたLAKE STAGEの初期は、Hermann H.&The PacemakersやPolaris、クラムボンなど、ブレイク寸前のガーッと勢いが増しているアーティストも多かったですね。例えばELLEGARDENのような、個人的にノーマークだったバンドがメチャクチャ盛り上がっていたりして、『ああ、今はこういう傾向なんだな』と知ったり。そういうバンドを朝から晩まで、柵前のフォトピットに張り付いて撮影するのはメチャクチャ楽しかったです」

特に印象に残っているのは、2001年に観たPOLYSICS。お揃いのツナギを着たメンバーたちがステージ狭しと暴れまわっている姿に衝撃を受けながら、夢中でシャッターを切った。

「彼らのその後の活躍は言うに及ばずですが、当時は『うわあ、こんなバンドが出てきたんだ!』と思って興奮しました。RADWIMPSがトリを務めた2007年のステージを撮っているときも、『次くるときはGRASS STAGEだろうな』と思っていたら、実際そうなりましたしね。フェスの醍醐味は、そうやってステージを上がっていくストーリーもありますよね。フジロックでもレッドマーキーからホワイトステージ、そしてグリーンみたいな」


2001年のPOLYSICS。この頃はまだフィルムで撮影していたという。

震災があった2011年のメンツも忘れがたいという。

「フジファブリックにONE OK ROCK、SEKAI NO OWARIでしょう? LAKE STAGEは入場規制がかかりやすいんですけど、この年もかかりまくっていた気がする。規制がかかるかどうかも、勢いのバロメーターになりますよね。例えば2012年のORANGE RANGEなんて、朝一発目だったにも関わらず、あっという間に入場規制になっていましたから。ちなみに、LAKE STAGEは写真を撮ってて楽しくなる会場なんですよ。すり鉢状になっているので、ステージの袖から広角レンズで狙えば、お客さんの表情なんかもバンドの演奏と一緒に撮れるし」

回を重ねるごとに、ラインナップの方向性も変化してきた。近年はREBECCAやMISIA、安全地帯など従来のロッキング・オンのイメージからはかなり遠いアーティストも積極的に招聘している。普段、岸田の主戦場にも滅多に現れない、そうしたアーティストを撮るのも「楽しみの一つ」と語る。

「REBECCAは学生時代によく聴いていた憧れのバンドで、まさか自分が撮影することになるとは夢にも思っていなかったですね。REBECCAからMISIAへの流れは完璧でした(笑)。2013年の安全地帯も、玉置浩二さんの歌唱力がとにかくすごかったです! ライブは結構巻いて終わったんですよ、パッとやってパッと帰る、みたいな(笑)。潔くてカッコイイと思いましたね」

また、最近の若手では2015年のでんぱ組.inc、2016年の米津玄師、2017にGRASS STAGEで撮影した欅坂46が印象に残っているという。

「でんぱ組.incは、とにかく動き回るので撮影は大変でしたけど、楽しかったですね。”でんでんぱっしょん”という曲が大好きで(笑)、『いつやるんだろう……?』って思いながら撮っていました。米津さんはデカいからステージ映えするし、照明などの演出も含め、撮っていて楽しかった。『あ、また新しい音楽が出てきたな』とも思いましたね。


米津玄師のステージは日が落ちてきたタイミング。米津本人含め演出の空気感も光る。

欅坂46は、黒髪美少女の大運動会だと思いました(笑)。フロントマンの平手友梨奈さんって、まだ10代とかですよね? すごいアーティストオーラというか、カリスマ性すら感じさせて。ちょっと危うい感じもあって撮り甲斐がありました」


欅坂46。「撮影が難しい」と語りつつも、センターから有無を言わせぬ圧巻の一枚。

桑田佳祐やWANIMAら普段からよく撮っているアーティストを、ひたちなかで撮ることの「特別感」も岸田は強く感じるという。

「特にWANIMAに関しては、メチャクチャ盛り上がっているのを見ながら『大きくなったねえ』って。完全に親戚のおじさん心ですね(笑)」


デビュー当時から撮影しているWANIMA。ドラム裏から客席を眺め、WANIMAが大きくなったことを実感したと語った。


桑田佳祐のソロでのステージ。大御所を撮るとカメラマン目線でもやはり圧倒されると言う。

15年以上、撮り続けているROCK IN JAPAN FESTIVALを岸田はどう見ているのか、最後に聞いた。

「ROCK IN JAPAN FESTIVALは常に新しいことを試みるじゃないですか。モッシュ/ダイブを禁止したり、即レポを写真のみにしたり。賛否両論あるときもありますが、冒険し続けているのはすごいなと思います。それと、ロッキング・オンが企画制作しているだけあって、フェスもメディアの一つなんだな、そういう打ち出し方をしているんだなって。どのバンドをどのステージに配置するとか、そのへんの見せ方……キュレーションですよね。それを僕はお客さんと一緒に楽しみつつ、メディア側の一員として発信していることにやりがいを強く感じています」


岸田哲平
カメラマン。広島県出身。専門学校卒業後に上京し、ライブカメラマン(自称)として活動。現在、Hi-STANDARDとの写真展「SUNNY DAYS」を全国7都市で開催した。写真集『"SUNNY DAYS" Hi-STANDARD Photographs of TEPPEI KISHIDA』も発売中。http://teppeikishida.tk/

ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018
日程:2018年8月4日(土)、5日(日)、
11日(土・祝)、12日(日)
時間:開場 8:00 開演 10:30
終演 19:30(各日とも予定)
※雨天決行(荒天の場合は中止)
会場:国営ひたち海浜公園
問い合わせ:ROCK IN JAPAN FESTIVAL 事務局 0180-993-611(24時間音声対応)
http://rijfes.jp/

Edited by Aiko Iijima