ボルボが生んだ、ステーションワゴンの傑作たち 後半 ボクシーな700シリーズから現代まで
ボクシーな7シリーズ(1985年)
ボルボは1985年のシカゴ・オートショーで700シリーズを発表し、初めの1年間は独占的に米国のみでの販売となった。その当時、米国はボルボの最も重要な市場となっていたのだ。ハイパフォーマンスモデルの需要にあわせて、245ターボの人気が高かったことを受け、202psを発生した740ターボもラインナップした。
フラグシップモデルとなる760には、プジョーとルノー、ボルボの共同開発(PRV製)による、268psを発生させるV6エンジンが搭載されていた。
ボルボ・ワゴン最後の後輪駆動モデル(1990年)
伝統にのっとり、ボルボは700シリーズを発展させ、900シリーズとして新しいモデルラインを発表する。940と960のふたつのモデルラインから、それぞれセダンとステーションワゴンを選択できた。この900シリーズは、メルセデス・ベンツやBMWよりも信頼できるモデルとして、1990年代にボルボの高級車市場での地位を築くこととなる。
その後、1996年にボルボはセダンとステーションワゴンの960の名称を、それぞれS90とV90へと変更した。
新世代のボルボ(1992年)
900シリーズが高級車市場へシフトしたことにより、これまでのユーザーの一部はターゲットから外れてしまう可能性があった。そこで、一回り小さな850を発表する。850ワゴンの生産は1992年に開始され、1993年にはショールームへお目見えした。
850は、横置き5気筒というレイアウトのモデルファミリーを形成する。多くのワゴンユーザーにとっては、走行性能よりも多用途性が重視されたが、850はその期待に答えた。リアシートを折りたたむ際、取り外す必要のない小さなヘッドレストは、驚きを呼ぶとともに、歓迎されるものだった。
ボルボ製スーパーワゴン(1994年)
245ターボが1980年代に支持を得たのと同様に、740ターボも同じ流れを作った。そして、ハイパフォーマンスなファミリーカーとして、T5-Rと呼ばれるターボ化された850が登場する。セダンとワゴンの両方がラインナップされ、243psを発生させる5気筒エンジンを搭載し、0-100km/h加速は6.9秒を誇った。生産台数は、全世界で7000台とされていた。
その後、高まる人気に応えて、ボルボはパフォーマンスに特化した850「R」を1996年に発表する。このモデルはマニュアルで、最高出力は253psに達した。
ダウンサイジング(1996年)
ボルボは、三菱と協力するかたちで、850よりもコンパクトなモデルを開発する。1996年初頭に発表されたS40は、440と460の終了で空いた穴を埋めることとなる。その数カ月後には、V40と呼ばれるワゴンモデルも登場する。
このクラスでサイドエアバッグを装備した、はじめてのクルマの1台となったV40。三菱との協力関係にありながらも、ボルボは最優先事項を安全性とすることで、高い評価を得ることになる。
4輪駆動を得たボルボ(1996年)
850ワゴンは、4輪駆動システムを得たはじめてのボルボとなった。1996年の5月に発表された全天候型モデルは、2.5ℓの5気筒ターボエンジンから195psを発生させ、マニュアル・トランスミッションを介してすべてのタイヤを駆動した。
ドイツ勢よりも後の参入となったが、この4輪駆動の850はボルボの最も重要なモデルのひとつへと成長することになる。
クロスカントリーのオリジナル(1997年)
1996年に、ボルボは850に改良を加え、初代V70とする。そして850時代に得ていた4輪駆動システムを活かし、1997年にクロスカントリーと名付けられたワゴンモデルが登場する。
オリジナルのV70から最低地上高を上げ、プラスチック製の無塗装バンパーなどSUV風のスタイリングが与えられた、V70クロスカントリー。これはスマッシュヒットとなり、競合メーカーからも同様なSUV風ワゴンが生まれるきっかけとなった。
ラゲッジスペースの外側も意識(2000年)
世紀が変わるミレニアムの頃には、ボルボはボクシーということ以上に、安全でしっかりしており、信頼性のあるクルマというイメージを確立していた。ボルボの広告の中には、1980年代のボクシーさになぞらえて、セクシーよりもセーフティな方が良い、という表現も見られた。
その中で、S60や2代目となるV70では、エクステリアデザインにも力が入るようになる。シャープなスタイリングを得るために、丸みを帯びた面構成でデザインされたボディだが、ラゲッジスペースが削られることはなかった。
また1999年、大型車の製造部門を切り離すかたちで、ボルボ・カーズはフォード社に買収され、新しい経営体制となった。
「R」の復活(2003年)
2002年のパリ・オートショーでV70のラインナップに「R」モデルが復活する。このV70 Rは、304psを発生させる2.5ℓの5気筒ターボエンジンを搭載。4輪駆動にブレンボ製のブレーキ、調整式のサスペンションシステムを備え、V70をドライバーズカーへと高めた。
6気筒化されたV70(2007年)
2007年にボルボはV70をモデルチェンジする。エクステリアは従来モデルからの流れをくむデザインだったが、その内側には大きな変更が加えられていた。3代目となるこのモデルでは、リアシート周りの空間が拡大され、ラゲッジスペースも拡張。さらに、V70としてはじめて、6気筒エンジンが搭載された。
プラットフォームはフォード製のほかのモデル、2006年式のモンデオやS-MAX MPW、ランドローバーLR2(フリーランダー2)などと共用している。
コンセプト・エステート(2014年)
2010年にフォードは、中国の自動車メーカー、ジーリーにボルボを売却する。その後、ボルボはデザインの大幅なイメージ転換を図り、2014年にコンセプト・エステートと呼ばれる、P1800 ESをオマージュしたモデルを発表した。
ジュネーブ・オートショーで発表され、ボルボの新しいスタイリングの方向性を示すととともに、全モデルのリデザインが始まることとなる。
2代目V90(2016年)
コンセプト・エステートが市販化されるのでは、という噂は実現しなかったが、第2世代となったV90で、そのスタイリングの方向性が現実化することとなった。このクルマはこれまでのボルボ・ワゴンの中でも最もスタイリッシュなデザインをまとい、ワゴンは退屈なクルマの代名詞、といった近年のイメージを打ち破ることになる。
米国においては、ワゴンボディの人気は年々低下しており、ボルボもV90は特別注文というかたちで、顧客へ販売している。このV90をベースにしたクロスカントリー・モデルも、カタログにはラインナップされている。
最新のボルボ・ワゴン(2018年)
ボルボは2018年に、ストックホルム郊外の住宅地で、第2世代となるV60をお披露目した。ボルボは、V60の自然環境への配慮を示すために、大都市など注目が集まる場所ではなく、その場所を選んだようだ。V60を無骨にしたV60クロスカントリーも、2018年末にはデビューする予定となっている。
この最新のステーションワゴンは、従来以上にシャープでスマートなスタイリングを得ているが、ボルボが誇るワゴンボディの伝統も、変わらずしっかり受け継がれている。
