『月夜行路』ルナが父との再会で得た答え 波瑠「誰の人生にも等しく価値がある」が刺さる
日本テレビ水曜ドラマ『月夜行路 -答えは名作の中に-』最終回では、ルナ(波瑠)と父・英介(石橋凌)の止まっていた関係が、ようやく動き出した。
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小説家を目指していたルナに、英介はかつて「文学では人を救えない」と言い放った。その言葉はルナの中に深く残り、父に認められないまま医大を辞め、家を出ることにもつながっていく。15年以上止まっていた親子の時間。その扉を開く鍵になったのが、英介のパソコンに残されたパスコードの謎だった。
英介が緊急搬送されたと聞いたルナは、涼子(麻生久美子)に強く背中を押され、病室へ向かう。命に別状がないとわかり、ひとまず安堵するルナ。だが、結局その日は英介に会わずに帰ろうとする。父が今の自分をどう受け止めるのか、もう一度否定されるのではないか……そう考えると、簡単には顔を合わせられなかったのだろう。そんなルナに、涼子は「この先どんな選択をしてもママを応援するから」と伝える。かつてルナに連れ出され、過去と向き合うことができた涼子が、今度はルナの背中を押して、支えてあげる番だ。
そんな中、英介が病院から姿を消す。正義(田村健太郎)によれば、英介は「もう家には帰れない」と話し、残された時間を意識しているような言葉も残していたという。ルナたちは田村(胗俊太郎)や小湊(渋川清彦)にも協力してもらい、英介の行きつけの店や商店街を探すが、手がかりは見つからない。そこで気になるのが、英介の自宅にあったカレンダーだ。6月19日に印が付けられており、その日は太宰治を偲ぶ「桜桃忌」だった。さらに中央線のホームで英介を見たという情報が入り、ルナたちは三鷹へ向かう。文学を手がかりに人の足跡をたどっていく流れは、最終回でも本作らしい形で描かれていた。
夜になっても英介は見つからない。そこでルナは、かつて大好きだったアンデルセンの『絵のない絵本』を思い出す。月が夜ごとに人々の暮らしを見つめ、その小さな出来事を語っていくこの作品は、『月夜行路』というタイトルにも重なっている。ルナはこれまで、文学を手がかりに他人の思いを読み解いてきた。だが今、向き合わなければならないのは、父・英介の思いだ。残された言葉や記憶をたどれば、見えなかった相手の気持ちに近づくことができる。最終回は、そのことをルナ自身の問題として描いていた。
やがて小湊から、英介が「マーキームーン」にいるという連絡が入る。バブリー(真田怜臣)が勘違いして英介を店に招き入れ、スイーツの話で意気投合。そのままカウンターで眠ってしまったのだという。思わぬ形で見つかった英介だが、彼が向かったのは、ルナが働いている場所だった。ルナがどんな店で、どんな人たちに囲まれて過ごしているのか。英介はそれを自分の目で確かめたかったのだ。
そして、パスコードの謎もついに解ける。手がかりになったのは、患者のノート、英介の「人を見ろ」という言葉、数字、そして夏目漱石の『吾輩は猫である』だった。ルナは『吾輩は猫である』の登場人物をたどり、数字を並べて「381038」にたどり着く。だが、その数字ではパソコンは開かない。残り一度のチャンスで突破口を見つけたのは、涼子だった。「吾輩」の“吾”に含まれる「五」から「5」を加えた「5381038」。その数字を入力すると、ついにログインできる。
■パソコンの中に残されていた、父・英介(石橋凌)の本音 パソコンの中に残されていたのは、ルナが書いた小説への英介の感想だった。英介は、娘の作品を読み、一つひとつ細かく言葉を残していた。あまりにも不器用で、遠回りな関わり方だ。けれど、面と向かって褒めることができなかった英介にとって、それはルナの文学を受け止め続けていた証でもあった。
パスコードの先に英介の本心を見つけたルナは、父と直接向き合うことになる。久しぶりに言葉を交わす2人の会話は、どこかぎこちない。英介はつい余計なことを言い、ルナも強い口調で返してしまう。それでもルナは、パソコンを開けたことを英介に伝える。それでも彼女は、パソコンを開けたことを報告し、「あなたに褒めてもらえる前にいなくなられたら困るんです」と告げる。そこにあったのは、反発ではなく、父に見ていてほしかったという思いだった。涙を浮かべながら「この世界にいてもいいですか?」と尋ねるルナに、英介は「当たり前だ」と答え、そっと頭を撫でる。英介の「おかえり」という一言は、ルナがずっと聞きたかった言葉だったはずだ。
英介の退院後、ルナはすぐに父に会いに行くのではなく、新著『月夜行路』の中に、父へのメッセージとしてヒントを隠す。直接言葉にするのではなく、本に仕掛けを忍ばせるところが、いかにもルナらしい。これまでの重原壮助というペンネームではなく、野宮ルナとして歩き出すことも、彼女にとって大きな一歩だった。スピーチで語った「誰の人生にも等しく価値がある」という言葉は、彼女自身が遠回りの末にたどり着いた答えだった。文学で人は救えないと否定されたルナが、文学を通して涼子を救い、父ともう一度つながる。最終回は、その長い旅の答えを丁寧に見せてくれた。
ひょんなことから始まったルナと涼子の旅は、涼子の初恋探しから、事件の謎解き、そしてルナ自身の家族との再会へ。振り返れば、短いようで長く、長いようであっという間だった時間のように思える。これで最終回となってしまうが、もう少し2人の旅を見ていたい。そう思わせてくれる締めくくりだった。(文=川崎龍也)
