「何を言っても世界はすぐに変わらない」――独代表幹部がW杯での“政治的発言”に警鐘 4年前の日本戦前に起きた「崩壊」に懸念

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4年前のカタール大会で、FIFAに対する抗議行動を見せたドイツ代表イレブン(C)Getty Images

 4年前にチームの“崩壊”を招いた状況はもう生まない。今夏のワールドカップ(W杯)で5度目の世界制覇を目指すドイツ代表は、確固たる意志を持って大会に臨もうとしている。

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 覚悟の表れとも言えるのが、チーム統制だ。ニュースサイト『Tages Spiegel』によれば、現地時間5月27日に行われた会見において、ドイツ・サッカー連盟(DFB)のスポーツダイレクターを務めるルディ・フェラー氏は、「我々はワールドカップに出場するためにここにいる。それこそが最優先事項だ」と発信。大会期間中に選手やスタッフに対して政治的な言動を避けるように求めた。

 通算47得点を挙げた元ドイツ代表FWであり、監督としても2002年の日韓大会に挑んだ代表を指揮したレジェンドが、ここまで強く求める背景には、4年前のカタール大会で起きた“騒動”がある。

 当時、ドイツイレブンは、同性愛を禁ずるカタールでの多様性促進のために「One Love」と描かれた虹色の腕章を着用予定だった。しかし、大会前に「着用した場合は即刻選手に警告処分を科す」とFIFAから許可は下りず。これに対して「人権問題は政治的なメッセージではない」と抗議する形で、グループE初戦の日本戦のキックオフ直前には、全員が口を覆うポーズを見せた。

 ただ、政治的な行動に動いたイレブンの決断は小さくない批判を招き、チーム内に混乱を生んだ。実際、当時の主将だったマヌエル・ノイアーは「これまでにないほど政治的な問題だけが注目された。大会前にオマーンでやった合宿以降で、僕らは相当な重荷を背負わされることになった」と告白している。

 結果的にドイツは日本戦で手痛い敗北。そのまま本調子を掴み切れずに、2大会連続のグループ敗退の憂き目に遭った。

「政治的アピールに夢中でサッカーをおろそかにした」

 そう揶揄された過去。これを繰り返したくないという想いが、少なくともDFBの幹部たちにはあるのだろう。今大会は国内外で政治情勢が混迷を深めているアメリカが舞台となる政治的な話題に事欠かないが、フェラー氏は警鐘を鳴らす。

 前回大会の経験をふまえ、「箝口令は一切出していない。もし誰かが議論をしたいなら、事前(大会前)にやるのは構わない」と語った重鎮は、こう続けている。

「だが、これまで起きていないことを、今さら始めるべきではないと思っている。それに我々はサッカー選手であり、人々に感動を与え、日々の悩みから少しでも気を紛らわせることを目標とすべきだ。だから、どんなに不愉快な状況になろうと、魅力的なサッカーをプレーし、ファンを感動させるよう努力すべきだ」

 さらにフェラー氏は、世界情勢に言及することの不毛さを論じている。

「何かを言ったところで世界がすぐに変わることはない。私だって世界中にもう少し平和が訪れることを願っている。だけど、世の中には、誰もが好まないようなことがたくさんある。それを開幕戦までに解決することは不可能だ。結局、すべてはサッカーにかかっている。そういった政治的なことは切り離して考えるべきだ」

 選手にとっての第一目標は「勝利」と公表したドイツ。批判を覚悟で現実的な決断を下したサッカー大国は、開幕までにチームケミストリーを高められるか。まずは、キュラソー、コートジボワール、エクアドルと対峙するグループステージ突破を目指していく。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]