キューバに対する圧力の意図は

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キューバへの軍事作戦はあるのか

 2月28日に戦闘を開始した米国とイランとの間の、停戦合意に関する交渉が大詰めを迎えている。対立点が残っているため、状況は依然として流動的だ。仮に合意が成立したとしても中東情勢が安定化する可能性は低い。

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 開戦を決断したトランプ大統領は、イランとの緊張状態がこれほど長期化すると思っていなかっただろう。トランプ氏は、膠着状態に陥ったイランとの戦争への関心を急速に失っているとの情報が流れている。

 一方、トランプ氏は次なる標的を求めているとの指摘が出ている。このところ、キューバの反米政権への圧力を強めているからだ。

キューバに対する圧力の意図は

 米司法省は5月20日、南部フロリダ州の連邦大陪審がキューバのラウル・カストロ元国家評議会議長(94)ら6人を殺人罪などで起訴したと発表した。1996年に起きたキューバ軍の米民間機撃墜事件への関与が訴追の根拠だ。

 同日には、米軍も原子力空母ニミッツをカリブ海に展開すると明らかにした。

 トランプ政権は1月のベネズエラ攻撃の際、当時の大統領だったマドゥロ氏を拘束した理由として米司法省による起訴を挙げた。そのため、キューバでも同様の軍事作戦を実施するのではないかとの憶測が流れ始めている。

「キューバ侵攻」の裏と表

 トランプ政権はイランでの「失点」をキューバで挽回したいとの思惑があるのかもしれないが、はたしてうまくいくのだろうか。

 ロイターは23日、キューバは「ベネズエラ2.0」にならない可能性が高いと報じた。ベネズエラでは当時のロドリゲス副大統領が実権を握り、現在も暫定大統領を務めているのに対し、キューバには“後継者”がいないというのがその根拠の1つだ。ディアスカネル大統領とカストロ氏に代わる人物や、ベネズエラの野党指導者でノーベル平和賞を受賞したマリア・コリナ・マチャド氏のような人物である。

 加えて、キューバ軍はベネズエラ軍よりも結束力が強く、反撃する可能性が高いことや、国内の不安定化により大量の移民が米国に押し寄せてくるという懸念もある。

 だが、ドンロー主義(南北アメリカを米国の勢力圏とみなし、積極的に介入して支配権を強めようとする安全保障戦略)を掲げるトランプ政権がキューバに侵攻する可能性は排除できない。

欧州では中国よりも嫌われて

 トランプ政権は北の隣国カナダにも「塩対応」だ。米国防省は18日、86年間続けてきたカナダとの永久合同防衛委員会(PJBD)への参加を中断すると発表した。

 今年1月、スイス・ダボスでの世界経済フォーラムに出席したカナダのカーニー首相が、米国など強大国に対抗して中堅国は団結すべきとする趣旨の演説を行ったことに対する報復措置との見方が出ている。

 PJBDは第2次世界大戦中の1940年8月に設立され、以来、米カナダ両国の防衛協力の中核として機能してきた。だが、トランプ政権2期目発足後は1度も開催されていなかった。ドンロー主義の下、米国はカナダの意向に関係なく、北米大陸の防衛政策を独断で構築していく腹積もりなのだろう。

 ドンロー主義をまい進する米国への評価は、欧州でもがた落ちだ。

 11日に発表された欧州連合(EU)の世論調査(ユーロバロメーター)で、米国に対する否定的な意見は74%に急増し、前回調査(昨年10〜11月に実施)から14ポイント上昇した。ロシア(83%)ほどではないが、中国(61%)より嫌われているのだから驚きだ。

 この傾向を受け、これまで親密な関係にあった欧州の右派勢力も、支持率の低下を恐れてトランプ政権と距離を置き始めているほどだ。

AI政策巡り支持層との間に亀裂

 国際的に孤立する感があるトランプ政権だが、国内でも問題が山積だ。人工知能(AI)政策を巡り、テック企業とトランプ氏の支持層(MAGA)の間の亀裂が鮮明になっている。

 トランプ氏は21日、中国など他国をリードする妨げになるようなことはしたくないと述べ、最先端のAIの安全対策に関する大統領令への署名を延期した。

 複数のテック企業幹部からの要請に応えた形だが、MAGAはこれに不満だ。米ニュースサイトのアクシオスは18日、元ホワイトハウス主席戦略官のスティーブ・バノン氏を始めとするMAGA陣営の要人らがホワイトハウスに書簡を送り、強力なAIモデルが公開される前に政府の検証と承認が必要と訴えたことを報じていた。

 AIデータセンターへの風当たりも強くなる一方だ。

 米世論調査企業ギャラップが13日に発表した調査結果では、地元でのAIデータセンター建設について「ある程度反対」「強く反対」の回答が計71%に達した。データセンター反対の動きはAI開発のメッカであるテキサス州にも波及しており、今後、AI主導の経済成長モデルが破綻するリスクが生じている。

共和党も激怒する露骨な施策

 トランプ氏と与党・共和党との不協和音も目立ってきている。

 米上院共和党は21日、トランプ氏が提案した、政府による「司法の武器化」の「被害者」に対する約18億ドル(約2900億円)の補償基金の創設に待ったをかけた。

 同基金は、バイデン前政権による不当な捜査(司法の武器化)で被害を受けたとされる米国民が対象で、2021年1月6日の連邦議会襲撃事件で有罪判決を受けた人々も対象に含まれている。

 このトランプ氏の露骨な支持者向け施策に共和党幹部は激怒しており、中間選挙を半年後に控えた今、政権運営の新たな火種となる可能性がある。

 このように、トランプ氏自身が国内外で対立の火種となる傾向が強まっている。悩める超大国の行く末は、ますます危うくなっているのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。2026年3月末日で経産省を退職。

デイリー新潮編集部