ブルームバーグもニューヨークタイムズも…海外大手紙が相次いで「低迷」を報じた中国経済の厳しすぎる現状
5月15日日本時間午後4時、米・トランプ大統領は北京から帰国の途に就いた。前編記事『「トランプ大統領閣下」とすり寄るも…米中首脳会談でトランプ政権が習近平に”塩対応”だったワケ』で見てきたように、米中首脳会談は米国の塩対応とは対照的な中国の歓待ぶりが目立った。背景にはやはり経済の低迷があるようだ。
極めて異例の現象
中国経済の低迷ぶりは金融面でも表れている。
中国の4月の人民元建て新規融資は100億元(2300億円)減少した。新規融資の減少は昨年7月以来であり、極めて異例の現象だ。
不動産バブル崩壊で発生した不良債権の処理を進めてこなかったのが仇となり、与信能力が低下した中国の金融機関が、1990年代の日本のように「貸し渋り」の動きを強化させているのではないかと思えてならない。
エネルギー価格高騰に起因する金利の上昇を懸念して、香港では金融機関が事態打開に向けて動き始めている。
金融危機勃発の可能性も
ブルームバーグは12日、「香港で前例のない規模に膨らんだ不良債権の処理を担う銀行員が、従来の穏便な対応をやめ、強硬手段に踏み切っている」と報じた。
香港の金融機関の不良債権比率は過去20年で最悪の水準に上昇しており、その規模は2000億香港ドル(約4兆円)に上る。その大半が商業用不動産での損失だ。
中国本土でも同様の事態が進行しており、香港方式を採用するのは時間の問題だろう。
不良債権の厳格な処理は正しい道だが、「良薬は口に苦し」。
金融機関への不信感が募れば、かつての日本のように金融危機が勃発する可能性は排除できないと思う。
米中首脳会談の一連のやり取りの中で、筆者が注目したのは、習氏が米国のことを「衰退しつつある国」と称したとトランプ氏が言及したことだ。
習氏は14日の会談で「トゥキディデスの罠(「覇権国が新興国の台頭を脅威と感じるため、両国が軍事衝突するリスクが高まる」とする国際政治学の概念)を克服すべきだ」と述べたように、自国を台頭する新興国になぞらえているのはたしかだ。
だが、経済の低迷が長期化し、人口の減少に歯止めがかからない中国は、米国以上に衰退しつつある国なのではないだろうか。これが正しいとすれば、両国の軍事衝突は杞憂に終わるが、そうは問屋が卸さないようだ。
内面は予想以上に脆弱
ニューヨークタイムズ(NYT)は12日、「中国は外見上強そうに見えるが、内面の脆弱性は予想以上に深刻だ。中国の弱体化はむしろより危険な対外行動につながりかねない」とする内容の論説記事を掲載した。
中国の長期的な弱体化は米国に有利に働くものの、衰退局面にある中国が「残された時間がない」と焦り、大胆な行動に踏み切る傾向が高いというのが理由だ。
同コラムはさらに「貿易交渉には柔軟に臨みつつ、同盟国などの防衛については断固たる姿勢を取る方針が米国の戦略として望ましいにもかかわらず、トランプ政権のアプローチはこの処方箋と真逆だ」と厳しく批判している。
このように考えれば、今回の首脳会談で中国が台湾問題に焦点を当てたことに合点がいく。トランプ氏のお得意のディールが、中国の台湾進攻を助長する結果を招くのではないかとの不安が頭をよぎる。
日本を始め国際社会に大きな影響を与える両大国の動向について、引き続き高い関心を持って注視すべきだ。
著者のこちらをあわせて読む『60兆円規模の投資がムダ金に…稼働率は3割程度しかない中国国家戦略「データセンター建設」の厳しい実情』。
