市民団体が田久保前市長に8200万円超の住民監査請求 代理人弁護士には懲戒請求など
有印私文書偽造・同行使罪と地方自治法違反で在宅起訴された静岡県伊東市の田久保真紀前市長の学歴詐称問題をめぐって発足した市民団体が7日に会見を開き、市議選と市長選の費用計約8200万円などを損害賠償請求すべきだとして、住民監査請求した。
田久保前市長は昨年5月、同市長選の当選後に東洋大学除籍のはずだったが、市広報誌のプロフィルなどで「卒業」と紹介したことで、学歴詐称疑惑が浮上。当時、田久保前市長は「卒業証書」なる書類を持っていると主張しながらも公表はしておらず、百条委員会の証人尋問では、市議会の議長らに対して「チラ見せした事実はなく19.2秒ほど見せた」と証言し、物議を醸した。市政に混乱を招いた田久保前市長は全国的に知名度を上げ、昨年の流行語大賞に「卒業証書19.2秒」がノミネートされるなど一躍、時の人となった。
田久保前市長は一度目の不信任を全会一致で議決された後、自身の辞職・失職ではなく議会の解散を選択したため、昨年10月に市議会議員選挙が行われた。選挙には多額の税金が投入され、その費用は4951万873円とされた。市議選では当選者の大半を“反田久保派”が占めたことから二度目の不信任を議決されるに至り、法律に基づき田久保前市長は失職。昨年12月に同一年度2回目となる市長選挙が執行され、市長選挙の経費は3273万4705円で、市議選とあわせると計8224万5578円とはじき出された。
会見に応じた市民団体の構成メンバーでもある有志2人は、これらの選挙費用について「田久保自身の行為選択の結果として生じた損害であると評価できる」と指摘。これを受け、杉本憲也市長が田久保前市長に対して損害賠償を請求するよう監査委員から市長に勧告することを求めて住民監査請求を行った。また、会見では市民団体の発起人が、田久保前市長の代理人を務める福島正洋弁護士に対する懲戒請求を検討していることも明らかにした。
一連の学歴詐称問題をめぐっては、田久保前市長が関係者に示した卒業証書とされる書類を福島弁護士に預け、同弁護士は刑事訴訟法に規定された押収拒絶権を盾に捜査機関への任意提出を拒んできた。だが、この点についても市民団体の発起人は「証拠隠滅罪での刑事告発も検討を進めている」との意向を示し、土壇場の状況に追い込まれた。
全日本印章業協会も遺憾
田久保前市長の騒動は単なる“学歴詐称”では収まらず、風評被害まで及ぼした。その被害の的となったのが印鑑業だという。先月、公益財団法人全日本印章業協会がホームページ上でコメントを発表。前市長がインターネット上の業者に印章の作製を依頼し、卒業証書を偽造したとする報道を受けて「遺憾」と怒りをあらわにした。
印章を「信証の具」とする同協会では、起訴状で示された田久保前市長の行為と、あたかも業者が証書の偽造に協力しているかのような報道について危機感をあらわにした。報道によると、田久保前市長はインターネットで業者に「文学博士○○之印」「法学博士○○之印」という印章の作製を依頼し、同大学を卒業したかのように見せかけた証書に押印したという。
これに同協会の福島恵一会長は、「偽造する証書に対してハンコが使われたということを考えると、風評被害につながるおそれがある」と示唆し、「田久保さんから被害を受けていると言っていい、心外な話です。私たちの所属団体に、このような犯罪行為に自ら手を染めなければならない人間などいません。この種の犯罪に加担する義理もなければ、メリットもなく、やる必然性がありません。そういう問題で騒がれるのは迷惑でしかありません」と怒り心頭だ。
信証の本質は「唯一無二」の形であり個の表現であるが、その本質を悪用し、地位と富を手に入れた田久保前市長。その欲にまみれた結果は、なんともお粗末だったことは想定外だったに違いない。追い込まれた次なる策にも注目が集まる。
