「水着はご利用いただけません」ヌーディストエリアのスパ入口に掲げられた注意書き(Hans Lucas via AFP)

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 フランス南部エロー県にある「キャップ・ダグド」は、夏になると世界中から数万人ものヌーディストたちが集まる、世界最大級のヌーディスト・リゾート。そんな "裸の楽園"から嘆きの声が上がっている。

【写真を見る】海水浴を楽しむヌーディストの姿、ナチュリストビーチで子どもを自転車に乗せる女性など

「脱ぐのは構わない。でも、あれは違う」

 一体、何が起きているのか──。

 この村が誕生したのは、半世紀以上も前。裸のままスーパーで買い物をし、テラスでビールを飲み、そのまま浜辺へ向かう。地中海沿いにはヌーディスト専用ビーチが続き、生まれたままの姿で波と戯れたり散歩を楽しんだりすることができる。

 1973年に正式なナチュリスト(裸体主義者)地区として認可され、以降、"ナチュリストたちの聖地"として世界的に知られるように。いまでは周辺エリアを含め、年間100万人超が訪れる南フランス有数のリゾートとなっている。

 ところが、ここ数年で村の様子が急速に変わったという。

 英紙「ザ・サン」や米紙「ニューヨーク・ポスト」によると、近年、この聖地に世界各国から、スインガーと呼ばれる"複数パートナーとの性交渉を楽しむ人々"が流入。元住民で、現在は夏の間滞在している英国人女性は、「現在の訪問者の約60%はナチュリスト、40%はスインガー」「30年前とは別の場所になってしまった」と嘆く。

 夜になると雰囲気は一変。浜辺で公然と性行為に及ぶスインガーが増え、その様子を眺めながらひとりで性的行為に及ぶ男性の姿もあるというのだ。

 現地を取材したジャーナリスト、ウィリアム・J・ファーニー氏は、グレーヘアーの女性と太った男性が浜辺で行為を始めると、その周囲に裸の男性たちが群がり、自慰行為を始めたとレポート。そのすぐ近くでは、子ども連れの家族が困惑して立ち尽くしていたという。

"性的に開放的な人たち"という誤解

「ナチュリストたちの国際組織『国際ナチュリスト連盟(INF-FNI)』は、こうした事態に怒りをあらわにしています。同連盟は、公共の場での性行為やハラスメント、無断撮影、凝視などを厳しく禁じ、ステファン・デシェーヌ会長もCNNのインタビューに登場。

『私たちは昔から"性的に開放的な人たち"と誤解されてきたが、それは違う』『他者に不快感を与える行為は禁止している』と強調し、『テニスコートで野球をするな』と警告。"ヌーディスト=性的"というイメージに強く反発しています」(海外ジャーナリスト)

 現地当局は警告看板を設置し、公共の場で性行為や自慰行為を行った者に対して罰金を科しているが、効果は限定的だという。近年、増加した性的交流を目的にしたクラブへの緊張感へも高まり、過去には複数のクラブが放火される事件も発生。一部では「保守派ナチュリストによるテロ」だとも報じられた。

 前出の英国人女性も、「ナチュリストとスインガーが共存の道を探っている状態が続いている。でも、私は有名なプライベートビーチには近寄らなくなった」と吐露している。

世界各地のヌーディスト村で性行為が問題に

 実はこの問題、キャップ・ダグドだけの話ではない。今、世界各地のヌーディスト村やリゾートで、公然性行為が問題化しているのだ。

 アメリカ・シアトルのヌーディスト・ビーチ「デニー・ブレイン・パーク」では、近年、性行為や薬物使用が問題視されるようになり、近隣住民の抗議を受け、市はフェンスを設置。これまで「服装必須」エリアの明確な境界線を設けていなかったことへの対策だが、今度はナチュリストがトップレス禁止は条例に定められていないとし、2026年春にはトップレスをめぐる新たな法廷闘争に発展している。

 ブラジルの公式ナチュリスト・ビーチ「プライア・ド・ピーニョ」でも、性行為や性的目的の人たちが後を絶たず、2025年末に地元自治体がヌーディストの立ち入りを禁止。ナチュリスト団体が猛反発し、2026年1月には裁判所が一時的な解除命令を出す事態となり、その後も法廷闘争が続いている。

 ヌーディズム(裸体主義)が広く認められているスペインでも、近年は公然での性行為や無断撮影をめぐるトラブルが問題化している。バルセロナ周辺では、「SNS目的で勝手に撮影される」と不満を訴えるナチュリストも増加。さらに自然保護区のビーチでは、観光客による性行為が問題視され、環境保護団体が懸念を示している。

裸禁止のプーケットの浜辺がヌーディストビーチ

 公共の場で裸になることは禁止されているタイのプーケットでは、今年3月、人目につきにくいビーチで裸になった外国人観光客の写真がSNS上で拡散。観光客の間で"ヌーディストビーチ"として認知されていた実態が明らかになり、警察が巡回を強化した。さらに4月には、20代のフランス人カップルが浜辺で性行為をしたとして国外退去処分となり、地元メディアで大きく報じられた。

 肌をさらすことへの解放感を求めて生まれたナチュリズムが、いま最も警戒しているのは「人の目」ではなく「人の行為」となってしまった。裸の楽園は裸の欲望に侵食されつつある。