本誌の直撃を受ける足立区の近藤やよい区長(写真・吉田 豊)

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 足立区が揺れているーー。区長・近藤やよい氏に“いただき疑惑”が浮上しているのだ。

 事の発端は、2025年1月、東京女子医科大学の元理事長・岩本絹子被告が、校舎建設や病院移転をめぐり、およそ2億8000万円の損害を大学に与えたとして、逮捕・起訴された背任事件だ。この不祥事は、巨額の補助金を支出した足立区にとって決して無関係なものではない。

「『東京女子医科大学東医療センター』という名前で荒川区にあった病院は、老朽化に加えて、大学病院の誘致をおこなっていた足立区の意向に一致して、2022年1月に『東京女子医科大学附属足立医療センター』と名称を変えて足立区に移転しました。

 足立区は移転にともない、約85億円の補助金を支出しており、区有地をおよそ20年間、無償で貸し付けています。しかし、当時大学の理事長だった岩本氏は、学校を私物化し、不正に資金を自分に還流させたことがわかっています。岩本被告への捜査が進むなか、区議会では、『岩本被告と区長の間に癒着関係はなかったのか』と疑問視する声が出ました」(政治担当記者)

 現在の足立区長・近藤氏は 、青山学院大学大学院を卒業すると、警察官、税理士のキャリアを経て1997年、東京都議選で初当選。3期目の任期中であった2007年、足立区長に転身した。それから5選・19年間区長を務めるベテランだ。父は都議会議長を務めた故・近藤信好氏である。

 足立区議会の会派「是々非々の会」に所属する議員4名は、2025年2月からこの問題を追及してきた。富田けんたろう議員が振り返る。

「調査が始まった経緯は、2025年2月21日の本会議において、『女子医大側からの、区長・幹部職員・区職員への接待・会食・金品授受などの有無についても調査すべきではないか」と代表質問をしたことです。

 その時点で区から『現時点で調査をする段階ではない』との答弁をいただいたんですが、その後、岩本被告が起訴されて調査することになりました。当初は3〜4カ月ぐらいで調査結果が出る予定でしたが、結果が出てきたのは丸1年後でした」

 この調査結果の遅れについて、加地まさなお議員も首を傾げる。

「まず記録管理に問題があると思います。期限に間に合わないなら報告があって然るべき。その欠如こそが、現在の区の管理体制のいびつさを象徴しています」

 1年が経過して、ようやく公表された調査報告書。その内容を見ると、「あさひ法律事務所」の弁護士3名が「公益監察員」として、2014年から現在までの間に新病院の誘致および補助金交付を担当した職員や副区長など97名に対してアンケートを実施したことがわかった。そこに記されていたのは、衝撃的な内容だった。

「近藤区長は、2015年から岩本被告と高級ホテル『ホテルニューオータニ』などで複数回の会食に同席していたのです。さらに、東京女子医大側から高級焼酎『森伊蔵』の一升瓶や、理事長就任祝賀会の返礼として高級ブランド『フェラガモ』のスカーフを受け取っていたことも発覚しました」(前出・政治担当記者)

 だが、同報告書のなかでは、焼酎は儀礼の範囲内で、スカーフは相応のお礼の品として、社会通念上許される飲食と贈答品だとしている。こうした判断に首をかしげるのは、「是々非々の会」に所属するへんみ圭二議員だ。

「区長は、議会の質疑にて、フェラガモのスカーフについて、そもそも岩本被告サイドに私費で会費3万円と花代約1万円を支払ったことを説明したうえで、

『当時の私は “とんとん” かなという判断でございました』『昨今の政治とお金の問題を考えれば、そうした考え方が私自身甘かったのかな言わざるを得ないと大いに反省しているところでございます』

 と回答しています。ただ、問題はそこではありません。副区長も同席し、同額を支払っていますが、フェラガモを受け取ったのは区長だけなんですよ。

 補助金交付が予定されていた時期であるにもかかわらず、岩本被告とかなり深い “個人的な付き合い” をしていたと疑われてしまう行動ではないでしょうか」(へんみ議員)

 おぐら修平議員が、今回の問題点をこうまとめる。

「まず、深い付き合いがあると考えられるなかで、区が補助金を支出したことの適法性は問われるでしょう。また、土地貸付条件の妥当性も疑問です。記録管理のあり方、区長を含む行政トップの説明責任と統治責任も厳しく追及されるべきでしょう。たんなる法的な問題だけでなく、政治的・道義的責任が残されていますよ」

 さらに、調査報告書の “詰めの甘さ” を富田議員は指摘する。

「報告書では、ホテルニューオータニでの会食費やスカーフの型番すら特定されていません。公益監察員はスカーフについて『2〜3万円程度』としていますが、当時のファッション誌に掲載されていた実売価格は4〜5万円という記録もあります。要するに、支払った対価を大きく上回る返礼を受けていた疑いが拭えないのです」

 おぐら議員は、「区議会議員すら贈り物を断った」と明かす。

「じつは、過去に女子医大側からは、我々議員に対しても物品が送られてきているんです。2019年12月、同病院の建設式典に出席した10数名の議員宛てに、一斉にカタログギフトが届きました。おそらく、5000円〜1万円のものだと思います。

 しかし、議会事務局からすぐに連絡があり、『補助金を出している事業者から物をもらうのはおかしい』と、届いた議員をリスト化して、すべて回収・返品しているんです。我々議員は『今時こんなことがあるのか』と呆れ、当然の処置として返却しました。記録も残っています」

 区長の “フェラガモいただき” と同じ時期、同じ事業者から届いた物品を、議会側は「アウト」と判断して退けた。対して、行政のトップである区長は、ブランド品や高級焼酎を「とんとん」という理屈で受け取っていたことになる。おぐら議員の追及は、会食の「不自然な会計」にも及ぶ。

「区長は、フェラガモを受け取った式典とは別に、ホテルニューオータニの高級料亭『千羽鶴』で会食をしたようですが、総額いくらかかったのか報告書には書かれていない。あそこは最低でも個室であれば1人3万円以上はする店です。しかし本人は会食の参加費として『1万円払ったからいい』と説明しています。これは政治家なら公職選挙法に問われかねない禁じ手です。我々なら必ず領収書をもらって割り勘を証明します。それが政治家の常識です」

 実際に、この不透明な関係を正そうとする区民の動きも加速している。2月末には区民から住民監査請求がおこなわれた。本誌は4月26日、公務後の近藤区長を直撃。一連の “フェラガモ騒動” について確認した。

ーーFLASHです。東京女子医大・元理事長との関係について区長のご見解をうかがいたいです。

「今日はちょっと……すみません。急いでいるので」

 そう言うと、記者の名刺を受け取らず車に乗り込んで去っていってしまった。その後、改めて本誌が足立区に確認すると、

「スカーフ受領当時、利害関係者から区長への物品の受領に適用される指針(基準)はなかった」としたうえで、それらの値段について

「森伊蔵(一升瓶)は(定価は 3,000 円程度であるが、現在の取引相場は約1万5000円〜2万円であり、当時の相場は不明。)。スカーフは(当時の価格は不明ながら 2〜3 万円程度か。)森伊蔵、スカーフともに現在は廃棄済み」

 と、調査報告書から引用する形で回答。さらに、

「区長は、『報告書では、社会通念上許される範囲とあるが、誤解を生むような状況になってしまったことについては、自分の倫理感が甘かったというふうに言わざるを得ない、今後はさらに自分を律していく』旨、委員会などで答弁している」

 とした。富田議員が、こう指摘する。

「たしかに区長は予算特別委員会でも『襟を正す』と口にしましたが、区民の疑念を招いたことへの謝罪や自らの責任については一切言及がありませんでした。

 問題の前提として、相手は巨額の補助金を受けている利害関係者であり、接触にあたっては高度な倫理性が求められる事業者です。

 高級ホテルでの複数回に及ぶ会食、ブランド品などの受領が、本当に『社会通念上、適切』と言い切れるのかが焦点であって、実際に癒着があったかどうかではなく、区民から見て癒着があるように見えないか、公務に対する信頼を損なっていないかが重要であり、この問題の本質です」

 足立区のトップでありながら、平然と高額プレゼントを受け取るその姿勢。“いただき女帝”を区民が支持するとは思えないが……。