「60代の血圧」で再検査の数値とは?高血圧・低血圧の自覚症状も医師が解説!
60代の血圧で再検査が必要な数値はどのくらいでしょうか。メディカルドック監修医が再検査の基準や気をつけたい病気について解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「60代の血圧正常値」はご存じですか?高血圧・低血圧における注意点も医師が解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
監修医師:
伊藤 陽子(医師)
浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。
60代の血圧の特徴は?
60代の血圧の特徴は、収縮期血圧(上の血圧)が上がり「正常値」に収まらない方が増えてくることです。厚生労働省の調査によると、60代の平均血圧は132.1/77.3mmHgとされており、50代よりも収縮期血圧は大きく上回ります。
年代ごとの血圧の平均値は、以下のとおりです。
年代 血圧の平均値
20代 109.3/67.8mmHg
30代 112.1/71.8mmHg
40代 116.4/73.3mmHg
50代 125.8/79mmHg
60代 132.1/77.3mmHg
70代以上 136.5/74.2mmHg
血圧が年齢とともに上昇するのは、加齢によって血管の弾力性が失われ、硬くなる「動脈硬化」が関係しています。動脈硬化により収縮期、拡張期共に徐々に血圧は上昇しやすくなります。しかし、高齢者では大動脈の伸展性が低下するためにむしろ拡張期は低下することが多いです。
健康診断の60代の血圧正常値とは(診察室血圧)
血圧には、医療機関で測定した際の血圧である「診察室血圧」と、家庭で測定する「家庭血圧」の2種類があります。そのうち、診察室血圧の正常値は、「収縮期血圧120mmHg未満かつ拡張期血圧80mmHg未満」です。また、「高い」とまでは現状では言わないものの、将来的に高血圧になる可能性が高い「正常高値血圧(収縮期血圧120~129mmHgかつ拡張期血圧80mmHg未満)や「高値血圧(収縮期血圧130~139mmHgかつ/または拡張期血圧80~89mmHg)という値も存在します。
血圧の基準値は、性別や年齢に関係なく定められており、60代に関わらずすべての年齢で共通です。まずは、診察室血圧の正常値や男女別の傾向について順番にみていきましょう。
60代男性の血圧正常値
60代男性の血圧正常値は、120/80mmHg未満(収縮期血圧120mmHg未満かつ拡張期血圧80mmHg未満)です。
血圧の平均値は133.5/78.7mmHgであり、同じ年代の女性よりやや高い傾向にあります。
60代女性の血圧正常値
60代女性の血圧正常値も、男性と同じく120/80mmHg未満(収縮期血圧120mmHg未満かつ拡張期血圧80mmHg未満)です。
また、血圧の平均値は130.8/76.1mmHgと、男性よりもやや低い傾向にあります。これは男性が比較的若い年代から徐々に血圧が上昇するのに対し、女性は閉経を迎える50代頃まで女性ホルモンである「エストロゲン」の影響で血圧が低めに保たれるためです。ただし、閉経にともないエストロゲンが減少すると、女性も血圧は大きく上昇しやすくなります。
また、女性は男性よりも低い血圧で脳や心臓などの病気が起こるリスクが高いという報告もあります。そのため、「血圧はちょっと高いくらいだから大丈夫」と思わず、しっかりと血圧をコントロールすることが大切です。
健康診断の血圧の再検査が必要な数値とは
健康診断で再検査が必要になる血圧は、140/90mmHg以上です。
健康診断での血圧が140/90mmHg以上であった場合、診察室血圧が高かったと判断されます。その場合、家庭での血圧を測定し、必要に応じた治療を開始します。
ただし、健康診断での血圧が140/90mmHg未満でも、血糖値や腎臓の値に異常が見られた方は再検査や受診をすすめられることがあります。
健康診断の血圧の異常値・再検査基準と内容
健康診断で異常を指摘された場合、受診先はかかりつけ医もしくは近所の内科・循環器内科です。家庭で朝晩の血圧を測定し、結果を記録したものを持参します。
高血圧は自覚症状がないケースも多く「忙しいから」と受診を伸ばしがちですが、1ヶ月以内の受診が望ましいです。ただし、もし頭痛や息切れ、ふらつきなどがある場合は、すぐに受診しましょう。
医療機関でおこなう代表的な検査は、以下のとおりです。
検査 確認する代表的な内容
問診
持病の有無
家族に高血圧の方がいるか
家族に心血管系の病気の方がいるか
運動習慣
食生活など
身体所見の確認
診察室での血圧や脈拍数
血圧の左右差
身長・体重
心音に雑音がないか
見た目で分かる血管の異常、甲状腺の異常やむくみの有無など
臨床検査
尿検査
血液検査(クレアチニン・尿酸・コレステロール・血糖値・ホルモン検査など)
臓器障害の検査
眼底検査
心電図、胸部レントゲン検査
頸動脈超音波検査など
ただし、血圧の数値や持病の有無、症状などにより、おこなう検査は異なる場合があります。必要な費用は、おこなう検査によって異なります。健康診断で調べた項目がそのまま使えるかによっても費用が変わるため、受診前に医療機関へ費用の目安を確認すると安心です。
また、すぐに薬物療法を開始するか生活習慣の改善で様子をみるかは、その方の高血圧にどの程度のリスク(脳や心臓への影響)があるかによって決まります。詳しくは受診時に医師へ確認してみてください。
高血圧・低血圧は自覚症状がなくても注意が必要
高血圧と低血圧はどちらも自覚症状が無く、検診で指摘されてはじめて気づく方が少なくありません。
ただし、症状が重い場合や人によっては、以下のような症状があらわれることもあります。
病名 代表的な自覚症状 放置するリスク
高血圧
めまい
ふらつき
頭痛
耳鳴り
心筋梗塞
脳梗塞
動脈硬化の悪化
腎臓への悪影響など
低血圧
めまい
ふらつき
だるさ
疲れやすい
手足の冷え
ふらつきによる転倒
生活の質の低下
高血圧は放置すると、動脈硬化を悪化させ、心筋梗塞や脳梗塞などの重い病気になるリスクが上がる恐れがあります。そのため、自覚症状がなくても治療が必要です。一方、低血圧は自覚症状や生活への支障がなければ、様子をみるケースがほとんどです。ふらつきによる転倒のおそれや、だるさ、めまいなどにより生活に支障が出る場合は治療を検討します。健康診断で血圧の異常を指摘された場合は、必ず受診して治療が必要な状態なのかを確認するようにしましょう。
健康診断の血圧の異常で気をつけたい病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「血圧」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
高血圧
高血圧とは、診察室血圧(医療機関で測る血圧)が140/90mmHg以上または、家庭血圧(家庭で落ち着いた状態で測る血圧)が135/85mmHg以上が持続する状態です。甲状腺や副腎などの病気が原因のケースもありますが、日本人の大部分は原因が特定できず、以下のような複数の因子が関わって発症するとされています。
・食塩の過剰摂取
・肥満
・飲酒
・運動不足
・ストレス
・遺伝
以前よりは健康に対する意識が高くなっているものの、食塩の過剰摂取は今でも日本人の高血圧に大きく関わっています。治療の基本は生活習慣の改善と薬物治療です。まずは減塩、運動、節酒、禁煙といった生活習慣の見直しを行います。それで目標値に達しない場合や糖尿病など他のリスクが高い場合は、将来の合併症予防のために降圧薬(Ca拮抗薬、ARB、利尿薬など )を服用します。
健康診断での血圧が140/90mmHg以上、家庭で測る平均血圧が135/85mmHg以上の場合、もしくは健康診断で異常を指摘された場合などはかかりつけ医もしくは近くの内科・循環器内科を受診しましょう。
低血圧
低血圧とは、高血圧とは逆に血圧が低い状態を指します。日本において一定の基準は定められていませんが、一般的に100/60mmHg以下程度になると低血圧とされるケースが多くみられます。症状がなく、日常生活に支障もなければそのまま様子をみるケースがほとんどです。ただし、めまいやふらつき、だるさなどがある場合は、治療を検討します。
治療では、バランスのよい食生活の指導や運動といった生活習慣の改善や、血圧を上げる昇圧薬などを使用します。ただし、病気や薬の副作用などが原因となっている場合は、原因となる病気の治療が必要です。
血圧が低く、体調に不安がある場合は内科や循環器内科を受診しましょう。
脳梗塞
脳梗塞は、脳の血管が詰まって酸素や栄養が行きわたらなくなり、詰まった先の脳細胞が壊死する病気です。高血圧は脳梗塞の最大の危険因子で、高血圧を完全に予防できれば日本人の脳梗塞は約半分に減るともいわれています。脳梗塞の代表的な症状は、以下のとおりです。
・片側の手足や顔半分の麻痺、しびれ
・ろれつが回らない
・人の言葉が理解できない
・視野が欠ける
・激しい頭痛
・バランスが取れなくなる、歩けなくなる
・意識を失う
発症から数時間以内に治療を始められれば、血栓を溶かす薬(t-PA)やカテーテル治療によって、後遺症を最小限にできる可能性があります。気になる症状があらわれたら、すぐに救急車を呼び専門的な治療ができる医療機関を受診しましょう。診療科は、脳神経内科です。
狭心症
狭心症は、心臓の筋肉(心筋)に血液を送る「冠動脈」が動脈硬化で狭くなり、心筋への血流が一時的に不足する病気です。状態によって、以下2つに分類されます。
労作性狭心症(安定狭心症) 不安定狭心症
特徴
冠動脈の一部が動脈硬化によって狭くなっている状態
心臓に負荷がかかると、栄養が足りなくなり発作が出る
発作の出るタイミングは安定している
動脈硬化のプラーク(粥腫)が破綻し、そこに血栓(血の塊)ができて血管が詰まりかけている状態
心筋梗塞へ移行するリスクが高く、早急な対処が必要
発作が起こるタイミング 階段を昇ったときや、速足で歩いたときなど 安静時
発作の持続時間
数十秒から数分程度
少し休むと治まる
数分~20分程度だが、繰り返し痛みがあらわれる高血圧は、喫煙、脂質異常症と並び、狭心症の3大危険因子とされています。狭心症の治療には、薬物治療(血管を広げる薬、血液をサラサラにする薬)、カテーテル治療(ステント留置)、バイパス手術などがあります。突然の締め付けられるような胸の痛みがあらわれた場合は、速やかに循環器内科を受診しましょう。また、痛みが数分以上続く場合は心筋梗塞や、心筋梗塞へ移行する可能性が高い「不安定狭心症」の可能性があるため、救急車の利用も検討してください。
心不全
心不全とは心臓のポンプ機能が低下し、全身に必要な血液を送り出せなくなった状態です。以下のようにさまざまな病気が原因となって起こり、高血圧も心不全を起こす原因の一つです。
・高血圧
・弁膜症
・心筋症
・不整脈
・動脈硬化
・先天性心疾患
心不全になると、初期は息切れやむくみが起こり、症状が進むと尿量の減少やむくみによる体重の増加、呼吸が苦しくて横になって眠れない(起坐呼吸)などがあらわれます。放置すると心臓はどんどん疲弊し、さらに機能が低下してしまいます。そのため、利尿薬や心臓を保護する薬(ACE阻害薬、ARB、β遮断薬)などで、心臓の負担を減らす治療をおこないます。また、高血圧や狭心症など、原因となる疾患の治療も欠かせません。
息切れやむくみ、突然の体重増加などがあらわれたら、できるだけ早く内科や循環器内科を受診しましょう。
「60代の血圧正常値」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「60代の血圧正常値」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
血圧を下げる薬は、正常値を超えたら飲んだ方が良いでしょうか?
伊藤 陽子(医師)
正常値を超えても「高血圧」と診断されるほどでない場合は、生活習慣の改善で様子をみるケースも多いです。ただし、高血圧によって心筋梗塞や脳梗塞などが起こるリスクが高い方は、早いタイミングで薬を開始することもあります。心臓や脳へのリスクが高いとされる要素を、以下に紹介します。
・65歳以上
・男性
・脂質異常症
・喫煙
・脳や心臓の病気の既往
・心房細動
・糖尿病
・腎臓病
血圧についての不安がある場合は受診し、ご自身の体調を医師に確認してもらうことをおすすめします。
正常値を維持するのに効果的な方法は何でしょうか?
伊藤 陽子(医師)
60代の方が正常値を維持するために最も効果的なのは、生活習慣の改善です。具体的には、以下の内容を心がけると良いでしょう。
・食塩は1日6g未満に抑える
・肥満にならないよう、適正な体重を維持する
・運動習慣をつける
・お酒は控える
・禁煙する
・十分な睡眠をとる
・ストレスをためない
また、血圧が正常値に収まっているかを確認するために、家庭用の血圧計を購入して毎日測定することも大切です。測定した数値は、日付や測ったタイミング(朝もしくは夜)とともに記録しておくと、体調変化を知るのに役立ちます。
60代は50代よりも血圧の数値を気にすべきですか?
伊藤 陽子(医師)
60代は、動脈硬化の進行とともに収縮期血圧(上の血圧)が上がりやすくなります。そのため、50代の頃よりも血圧の数値を気にすることが望ましいです。
また、とくに60代後半の方は、退職にともなって毎年勤務先で受けていた健康診断がなくなり、ご自身の体調変化に気づかないケースも少なくありません。60代になったら少しずつ血圧を測る習慣を身につけ、ご自身の血圧を把握しましょう。持病がない場合、家庭での血圧が115/75mmHg以上(高血圧ほどではないものの、正常値よりは高め)になる日が続くようになったら生活習慣を見直し、135/85mmHg以上(高血圧)が続く場合は、一度内科や循環器内科を受診してみてください。
60代で高血圧気味の場合、何科の病院で治療できますか?
伊藤 陽子(医師)
高血圧の治療の専門は「循環器内科」や「腎臓高血圧内科」です。しかし、それ以外の内科(一般内科、消化器内科、呼吸器内科など)でも、血圧がやや高い程度であれば、一般的な治療は問題なくおこなえます。かかりつけの内科があれば、一度相談してみましょう。もし、狭心症や心不全、不整脈などの心臓合併症が疑われる、複数の薬を使っても血圧が下がらないなどの場合は、かかりつけ医が循環器内科に紹介し、詳しい検査をするのが一般的です。血圧が気になる場合は、近所の内科クリニックを探してみてください。
まとめ 60代は血圧の上昇に注意
60代になると、血圧が上がって「正常値」に収まらない方が増えてきます。正常値を少し上回った程度では、生活習慣の改善で様子をみるケースもありますが、持病や生活習慣の状況によっては早めから薬物治療を開始するケースもあります。
高血圧は放置すると、脳梗塞や心筋梗塞などの重い合併症を引き起こすリスクが高まります。
「血圧」の異常で考えられる病気
「血圧」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
循環器系の病気
心筋梗塞不整脈心不全動脈硬化脳神経系の病気
脳梗塞脳出血高血圧は放置すると、血管が傷み脳や心臓などの重大な病気を引き起こす要因となります。健康診断で高血圧を指摘されたら、自覚症状がなくても放置せずに、内科を必ず受診しましょう。
「血圧」の異常で考えられる症状
「血圧」から医師が考えられる症状は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する病気
頭が痛い
ふらつき
めまい耳鳴りだるさ
手足の冷え
高血圧、低血圧のどちらも自覚症状が無いケースが多くみられます。しかし、症状が強い場合、高血圧なら頭痛やふらつき、めまい、耳鳴りなど、低血圧ならふらつきやめまい、だるさ、手足の冷えなどが出ることもあります。気になる症状がある場合は内科へ相談してみましょう。
参考文献
高血圧治療ガイドライン2019|日本高血圧学会
令和5年国民健康・栄養調査報告
