「童貞でバズって、ネットミームにされて、世界中で笑われて…」ぐんぴぃが語る『バキ童』街頭インタビューという“挫折経験”と、挫折が人生に与えた影響
人材育成・組織強化のサポートを専門とし、ビジネスメディアを中心に今最も注目されている起業家・坂井風太さんと、YouTubeチャンネル登録者数200万人を誇る大人気お笑い芸人「バキ童」ことぐんぴぃさん。
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異色のコンビが、会社や仕事にまつわる「理不尽」の対処法を指南する『理不尽仕事論 「クソが!!」と思った時に読む本』(文藝春秋)より一部を抜粋して紹介します。坂井さんが考える“良い苦労と悪い苦労”の違い、そしてぐんぴぃさんが明かす、“2つの挫折経験”とは?(全4回の1回目)

坂井風太さん、ぐんぴぃさん ©平松市聖/文藝春秋
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街頭インタビューは挫折経験でしょう!
坂井 今日は「挫折経験は本当に必要なのか」を理論的に考えます。「若手のうちは苦労を積んだ方がいい」とか「修羅場が人を強くする」という言説があるじゃないですか。多分、そのような流れは「Z世代はメンタルが弱い」「あいつらぬるいよな」といった世代論の文脈の中でさらに強まってきたんだと思うんですよ。
ぐんぴぃ 強まってきてるんですね。
坂井 最近、そうなんですよ。「挫折経験が必要かどうか」は世代間の対立におけるひとつのテーマかもしれないです。グラデーションがあるので「どっち派か」という単純な話でもないと思いますが、ぐんぴぃさんは人生において挫折経験は大切だと思いますか?
ぐんぴぃ 挫折はした方がいい気はしますけどね。人間として幅が広がる、みたいなイメージはあります。
坂井 ちなみにあの「ABEMA NEWS」の街頭インタビューは挫折経験になるんですか?
ぐんぴぃ 街頭インタビューは挫折経験でしょう! 童貞でバズって、1枚の画像のフレームに収められて、ネットミームにされて、世界中で笑われて……。
坂井 ぐんぴぃさんのこと、最初あれで見たもんな。
ぐんぴぃ 僕、当時はコールセンターのバイトリーダーで頑張っていて。大学生のバイトが全然働かないから、「お前ダメだぞ、おい!」って叱ったんです。そしたらそいつが「いいんですか? 僕のことを叱って。あの街頭インタビューのこと、みんなに言っちゃおうかな」って言ってきて。
坂井 (笑)。
ぐんぴぃ 弱みを握られたから、「あ……いや、いいんだよ……君のやりたいようにやればいいんだよ……」って言うしかなくて。挫折しかないっすよ!
坂井 その時には、周囲は、すでにその弱みを握ってた可能性はないですか?
ぐんぴぃ そんなことないですよ! まだ童貞ってバレてないと思ってましたから。
坂井 そうなんだ(笑)。でも、その挫折経験って今は役に立っていると思います?
ぐんぴぃ うーん、同じ辛さを抱えている人には寄り添ってあげられるのかな? って気もするんですけど。逆に挫折経験のない優秀な人がいたら、それはすごいとは思いますけど、なんか信用できないというか。「お前は温室育ちで環境に恵まれてるだけだろ!」なんて言いたくなっちゃうかもしれないです。
苦労には“良い苦労”と“悪い苦労”がある
坂井 他に、ぐんぴぃさんに実は影響を及ぼしている挫折経験はありますか?
ぐんぴぃ なんだろう……『研修テレビ!!』[テレビ朝日]に一緒に出ていた令和ロマンが面白すぎたことですかね。「こんなに令和ロマンが面白いなら、もう俺は終わりだ……」って思いました。M-1も獲っちゃうし。そういう芸人としての挫折はあるかもしれないですね。
坂井 くるまさんって、冷蔵庫でいう“リッター量”が尋常じゃないもんな。
ぐんぴぃ 言語化する能力もすごいし。僕も令和ロマンも、わーっとたくさん喋りたい派の人間なんですよ。でも、僕よりも令和ロマンの方が語彙が出てくるのが早いし、番組の筋に合わせたことを言える。いやあ、すごいな、こんな人が現れるんだなと思っています。
坂井 それは「ロールモデルストレス」ってやつなんですよね。
ぐんぴぃ なにっ!? ロールモデルストレス!?
坂井 簡単に言うと「あの先輩がすごすぎる」とか「自分と同じ時期に同じ仕事をしていた後輩が早く出世した」みたいなことなんですけれども。
ぐんぴぃ 全然ありますよね、弟がすごいとか。
坂井 あるあるです。でも逆に言うと、くるまさんはくるまさんで、自分よりもぐんぴぃさんの方がすごいと思っていることも、多分あると思うんですよ。
ぐんぴぃ なにっ!?
坂井 組織の悩みって、だいたいあるあるだったりするわけですよ。
ぐんぴぃ へえ、すでに理論化されて言葉ができているんですね。
坂井 そうなんです。今の話にもつながってくるんですけど、やっぱり挫折経験をちゃんと深掘りしたいと思っているんです。私が気になっているのは、どこまで本当の話かわからないですが、「Googleに入社して活躍する社員は、実は学歴が高い社員ではない」といった話です。「学歴が高い奴じゃなくて、苦労した奴が一番成果を出している」という話が出てくると、“苦労界隈”の人たちが「そうだそうだ」って同調してくる。でも、これって本当なのかな?と思うわけですよ。というのも、挫折経験や苦労話って、一歩間違えると武勇伝や不幸マウントになるし、「最近の若者は辛抱が足りん」という話につながるじゃないですか。
ぐんぴぃ 「俺の時代はこうだったぞ!」と。
坂井 「理不尽に人を追い詰める道具にもなるな」と、ずっと思っていたんですよ。だって苦労には“良い苦労”と“悪い苦労”があるじゃないですか。
ぐんぴぃ 良い苦労と悪い苦労!? そんなふうに考えたことなかったけど。
坂井 良い苦労と悪い苦労があるというよりは、「あれは良い苦労だった」と解釈できるパターンと、悪い苦労に解釈してしまうパターンがあるということなんです。さらに言えば、恩師がいるかどうかによって、良い苦労になるか、悪い苦労になるかが左右されるんです。
ぐんぴぃ 恩師、メンターがいるかどうかってことですね。
坂井 そうなんですよ! 面白いんですよね。挫折経験ってポジティブにもネガティブにも転ぶじゃないですか。そしてもうひとつ私が気になっているのが、「苦労人ほど人に優しい」論です。
ぐんぴぃ M-1で最下位になっていた千鳥さんだからこそ、終わった後の打ち上げで負けた芸人たちに「いやわかるよ、俺らもあの時スベったもん」って言ってあげられる。そういうことじゃないですか?
坂井 そうですね。もちろんそっちに転ぶパターンも当然あるのですが、ネガティブに転ぶパターンもあるんですよ。苦労人だけど、めっちゃ性格悪い人っていないですか?
ぐんぴぃ いるなぁ〜!!(笑)
坂井 挫折経験をポジティブに捉えられた人は、他者の悲しみを理解できるようになり、相手の気持ちを考えて行動できるようになる――研究では「対人配慮」って言うんですけど――、そういう共感性が育つこともあるんです。でも逆に挫折をネガティブに捉えると、まず「人はすぐに手のひらを返すものだ」という他者不信に陥って、人間関係を避けるようになる。さらには「お前も俺と同じような苦労を積めよ」とか「あいつは俺を裏切ったからな」みたいに、他者への敵意や報復心を持つようになっちゃうパターンもあります。
ぐんぴぃ 苦労で心が折れて“闇堕ち”みたいなことですか?
坂井 まさにそうですね。聞いていいかわからないですけど、今までそういう人いました? 具体例で。
ぐんぴぃ なんで具体例を言わなきゃいけないんだよ!(笑) 闇堕ちでいいだろ!
坂井 闇堕ちでいいか(笑)。まあそれぞれ想像していただければと思いますけど、ちょっと1回理論を説明させてください。
ぐんぴぃ 理論の説明の時間だ! みんな、聞け!
挫折をダメージと解釈すると人を信用できなくなる
坂井 先ほども言った通り、大切なのは“解釈”なんです。挫折経験は大別すると2パターンに分かれるんですね。1パターン目が自己成長と捉えるパターンです。要は「挫折経験は生きていく上で必要で糧になるな」と解釈するパターン。こちらの解釈をした場合は、他人への配慮ができるようになる。
ぐんぴぃ さっきの『研修テレビ!!』の例で言うと、「令和ロマンはすごいけど、俺は俺でこのネタを頑張ろう」と考えて自分のエンジンにできれば、まあまあ良い解釈ってことですかね。
坂井 もしくは「あの時の困難を乗り越えてきた自分なら大丈夫」「これが自分の将来きっと役に立つはずだ」と学習して“苦境耐性”をつけるパターン。これは「自己成長パターン」としてOKです。逆に危ないのは、挫折経験をダメージと捉えるパターン。「令和ロマンと比べて自分はダメだと思った」というように、自分は他人よりも劣っている、自分は何をやってもダメだと解釈してしまうと、「人を信用してはいけない」という思考になるんですね。
ぐんぴぃ 確かに。
坂井 この解釈によって、他人に対して優しさを持って配慮ができる人になるか、あるいは「人間は裏切るから信用するな!」と考える人になるか分かれるということです。
ぐんぴぃ へえ〜! 解釈で分かれちゃうんだ。
他者を軽視して自分の有能感を満たす「仮想的有能感」
坂井 そうなんです。そして、私が一番気になっている概念が「仮想的有能感」というもの。これはSNSの誹謗中傷について説明できる概念です。挫折経験をダメージと捉えた場合は、この仮想的有能感を持ちやすくなりますが、これは他者を軽視することによって自分の有能感を満たすということなんです。SNSで目立っている人や動画に出ている人に対して、「あいつは大したことない」と誹謗中傷する人がいるじゃないですか。あの現象が仮想的有能感なんですよ。
ぐんぴぃ 誹謗中傷する奴も普段は辛い気持ちを抱えているんだけど、ラランドのニシダを見て「あいつクズだよな」って優越感を持っていたり。「それに比べて僕は! 童貞ではあるけれども! 女に厳しいところは全くないわけで! その点ニシダよりは上かな! よし! 今日は寝るか」みたいなことかも。
坂井 それも仮想的有能感の例ですね。自分を上げるよりも、人を下げる方が手っ取り早い。これはすごく良くないという話ですね。
ぐんぴぃ 嫉妬でもあるんですかね。嫉妬は自分の地位を下げる行為だと言いますけど。
坂井 まさに嫉妬です。人は自分が欲しいと思っているものを持っている人を攻撃するからなんでしょうね。名誉が欲しい人ほど名誉ある人を攻撃するし、人気が欲しい人ほど人気者を攻撃する。つまり、攻撃している相手こそ自分が執着しているものを映し出しているわけです。そして話を戻すと、やはり挫折経験を味わった方がいいという話ではないんですよ。「挫折経験も糧になってるからいいじゃん」という解釈のトレーニングをしてあげないと、「あいつ裏切るじゃねえかよ」という嫉妬と攻撃の思考になってしまうわけですよね。
ぐんぴぃ おもしろ!! 自分の受け方次第なんですね。挫折という大きな岩を、どう加工するか学ばなきゃいけないんだ。
〈父親に“タコ殴り”にされ、骨を折ったら「自転車で転んだと言いなさい」と…『バキ童』ぐんぴぃが明かす、つらい記憶の中で“唯一救われた瞬間”とは〉へ続く
(坂井風太,ぐんぴぃ)
