なぜ日本は4強にも届かなかったのか 「主役」ではなかった侍ジャパン 井端監督の用兵・采配は「決定的敗因」ではない【WBC】

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大谷は打率.462、3本塁打、7打点と奮闘したが…(C)Getty Images

 言うまでもなく期待通りの結果ではなかった。第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)準々決勝で、日本はベネズエラに5−8で敗れ、連覇の夢は潰えた。過去5大会はすべて準決勝以上に進んでおり、大会史上最低の戦績。最後の打者になった大谷翔平も「優勝以外は負け、失敗」と唇を噛んだ。

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 とはいえ、まったく予想外だったわけでもない。そもそも東京ドームでの1次ラウンドでも、4戦全勝という結果とは裏腹に、戦いぶりはどこか危なっかしかった。初戦の台湾戦こそ13−0で圧勝したものの、続く韓国戦は6回まで5−5の同点、最終的には8−6の僅差。3試合目のオーストラリア相手にも苦戦し、6回まで1点も入らず4−3の辛勝だった。最後のチェコ戦も、準々決勝進出をすでに決めている心理的な余裕もあったかもしれないが、格下相手に7回まで0−0というまさかの展開だった。それほど強いわけでもない相手を圧倒できないまま、米国へ渡っていたのだ。

 しかも準々決勝の相手のベネズエラは、2023年に史上初の40−70(41本塁打、73打点)を達成しナショナル・リーグMVPに輝いたロナルド・アクーニャJr.や、昨年49本塁打のエウヘニオ・スアレス、22〜24年に3年連続首位打者のルイス・アラエスらスター選手揃い。投手陣の顔触れはそこまで豪華ではなかったものの、準々決勝でもアクーニャJr.の先頭打者弾を含む効果的な3本のホームランを日本投手陣に見舞い、力でねじ伏せた。実力は低めに見積もっても日本と互角であり、番狂わせでも何でもなかった。

 とはいえ、世界中で最もWBCに前のめりになっている日本のファンにとっては残念極まりない結末とあって、早速“戦犯探し”が始まっている。決勝の逆転3ランを打たれて敗戦投手になった伊藤大海や、3点差の8回裏、二死一、二塁の追撃機に凡退した牧秀悟らが槍玉に挙げられているほか、大会を通じ13打数0安打に終わり、ベネズエラ戦では先発から外れた近藤健介にも厳しい声が投げつけられている。

 伊藤は2年連続最多勝、昨年の沢村賞投手でもあるが、被本塁打15本はリーグワースト2位。韓国戦でも3回で6三振は奪いながらも、一時同点となる2ランを浴びている。しかもベネズエラ戦は速球が140キロ台といつもより走っておらず、強打者たちに打ち込まれてしまった。

井端監督の用兵・采配面で明らかなミスがあったとまでは言えないだろう(C)Getty Images

 となると、1次ラウンドでも打たれた伊藤を投げさせた井端弘和監督の投手起用が間違いだったのでは? との指摘が浮上するのは当然だ。だが、他の投手なら反撃を食い止められた保証があるわけではない。試合後の記者会見では、井端監督は「大谷が投げられていたら先発させていた」と語っていた。けれども、山本でさえ4回を投げ2点を取られていたのだから、大谷が登板可能だったとしても完璧に抑えられていたかどうかはわからない。「足を使った攻撃をしていれば」といった意見も聞かれるが、投手戦ならともかく、ホームランの飛び交う展開では大して意味はない。批判の大半は結果論で、用兵・采配面で明らかなミスがあったとまでは言えないだろう。少なくとも敗退の決定的要因ではない。

 優勝した過去の3大会も危うい場面はいくつもあった。第1回では1次ラウンド敗退が濃厚な展開から、メキシコが米国に勝ったことでタナボタ的に勝ち進んだ末の栄冠だった。前回大会でも、準決勝のメキシコ戦は9回表まで1点リードを許していた。今回も、ほんのわずか歯車が噛み合っていれば違う結果になっていたのではないか。勝負は時の運、可能な限りベストメンバーで臨んでも必ず勝てるわけではない。前回のWBCはあらゆる意味で日本が主役だったが、今回はそうではなかったのだ。

[文:出野哲也]