Netflix シリーズ『ONE PIECE』©尾田栄一郎/集英社

写真拡大

 3月10日からNetflixで配信が始まった実写ドラマ『ONE PIECE』のシーズン2は、モンキー・D・ルフィたち麦わらの一味の前にバロックワークスという強敵が現れ、幾つもの死闘を重ねていく展開を、実写ならではのリアルでハードな表現も交えて描いていく。クジラのラブーンやトナカイのトニートニー・チョッパーとの出会いがあり、それぞれに感涙もののエピソードがあって、改めて『ONE PIECE』という物語が面白いものだと分からせてくれる。

参考:新田真剣佑、『ONE PIECE』撮影の裏側 「Zoro vs 100 assassins」で燃える刀を掲げる姿も

 相変わらず完璧だ。イニャキ・ゴドイが演じるルフィをはじめ、麦わらの一味の漫画やアニメから飛び出してきたような佇まいは、シーズン1の配信から2年半が経っていてもまるで変わらない。ジェイコブ・ロメロが演じるウソップは、登場した時から鼻が短くても表情や仕草でウソップらしさを見せてファンを喜ばせていたが、ローグタウンでトレードマークのゴーグルを手に入れたことで、そっくり度が跳ね上がった。

 続々登場の新しいキャラクターたちも負けていない。レラ・アボヴァが演じるミス・オールサンデーは、妖艶でミステリアスな雰囲気を放って目を引き付ける。驚きなのはローグタウンから出航したゴーイングメリー号に突然現れる漫画やアニメとは違って、冒頭から登場して海軍を相手に苛烈で冷酷な戦いぶりを見せること。ドラマで初めて『ONE PIECE』に触れる人は、原作以上に悪い奴だと思い込みそうだ。

 バロックワークスでは、麦わらの一味が「偉大なる航路(グランドライン)」に突入して最初に辿り着いた島「リトルガーデン」で出会うMr.3のとぼけたような表情と、ロウを自在に操る技がこれまた原作そっくりだ。日本語版ではアニメと同じ檜山修之によるとぼけた口調のセリフが乗って、テレビから飛び出してきたのかと錯覚させる。後にネフェルタリ・ビビだと分かるミス・ウェンズデーと行動していたMr.9も、王冠を被ったお坊ちゃま風なビジュアルが原作そのまま。Mr.5とミス・バレンタインを相手に「相棒だったから」とビビをかばうシーンは、原作にも増してその侠気が伝わってくる。

 顔立ちの似た役者に、それらしいコスチュームを着せたからそっくりだというわけ訳ではない。ビビはインド系のイギリス人で褐色の肌をしたチャリスラ・チャンドランが演じていて、キャスティングが決まった時から様々な意見が出ていた。だが、ドラマの中で見せる姿はビビそのもの。バロックワークスのエージェントとして行動していた時のふてぶてしさが、アラバスタ王国の王女だと正体を明かした辺りから消えて、深く祖国を愛する王女としての存在感を漂わせるようになる。魂を込めて役になりきる、生身の役者の凄みを味わえるドラマだ。

 太い葉巻を2本もくわえてふかすという漫画的なキャラ付けを、見事に再現してのけたスモーカーも良い。ケムリになって物理攻撃をかわす戦いぶりも、違和感なく見られるものになっていた。これならシーズン3に登場するだろう体を砂に変えて戦うキャラも、描ききってくれるだろう。漫画やアニメを通じて強く印象が刻まれているキャラを、3次元の存在として見せる上で一切の妥協はしないというポリシーを感じ取れるシリーズだ。

 それは、よりフィクションの度合いが強くなるキャラについても言えることだ。たとえばラブーン。偉大なる航路(グランドライン)へと向かう双子岬で待ち受ける巨大なクジラを、キャラとしてのフォルムと生物としての質感を共存させた姿で描いてみせた。リトルガーデンで100年前から決闘を続けて来たドリーとブロギーの巨人族の2人も、その巨大さを激突の迫力ともどもしっかり再現していた。これなら、いつか「エルバフ編」が実写化されても大丈夫だろう。

 そしてトニートニー・チョッパー。トナカイが「ヒトヒトの実」を食べて知性を持ち、二足歩行したり喋ったりするようになったキャラを、モフモフとした毛並みの質感を保ちつつ、マンガ的にデフォルメされた姿でしっかり描いてみせた。

 アクションでは、ロロノア・ゾロがウイスキーピークで繰り広げる100人斬りをどう描くかに注目が集まっていたが、期待通りかそれ以上の凄まじい剣戟を見せてくれた。悪魔の実の能力者たちによる現実離れしたアクションが目立って来る中で、新田真剣佑の肉体と技量が輝いて見える。ハリウッドでのオファーも増えそうだ。

 ドラマとしての見どころも、挙げればきりがないくらいに満載だ。ドラマが初見の人たちにはフレッシュな感動を与え、漫画やアニメでストーリーを知っている人には感動の追体験をもたらすだろう。ひとつ挙げるなら、まだドラム王国が存在していた時代に、銃で撃たれて傷ついていたチョッパーを助けたDr.ヒルルクが、ヤブでありながら医者としての使命に殉じるシーンだ。そのヒルルクの思いが花開く瞬間に、誰もが心打たれるだろう。

 先の先までストーリーを知っている『ONE PIECE』のファンが歓喜するシーンも用意されている。50年にわたってラブーンを見守り続けて来たクロッカスから、ルフィがラブーンの過去を聞かされる際に、原作やアニメではもっと先で描かれることになるルンバー海賊団が登場する。クロッカスの懐古には、船長のヨーキだけでなく、まだ生身だった頃のアフロ頭の音楽家が登場する。日本語版の声優はもちろんチョーだ。

 同様に、はるか先にドレスローザで闘技大会に出場してきた緑色の髪をした海賊が、ローグタウンのチンピラとして早くも登場して、ルフィの暴れっぷりを目の当たりにする。これらが、彼らの本格的な登場まではシリーズを描く覚悟を現したものなら、ファンとして嬉しい限りだが、単なるファンサービスだとしても十分に楽しい。作り手の『ONE PIECE』という作品に対する愛情と理解のたまものなのだから。

 冬島での騒動を経てチョッパーを仲間に加え、向かうはアラバスタ王国。シーズン2のラストで、アニメと同じ大友龍三郎による渋さ炸裂の声だけでなく、堂々とした姿も現したバロックワークスのMr.0。彼とルフィが繰り広げる死闘が今から楽しみだ。シーズン3での登場が予告されているルフィの兄のポートガス・D・エースが、どこまでそっくり度を上げて来てくれているかも気になるところだ。

 ミス・オールサンデーの正体と目的が明かされ、『ONE PIECE』という物語世界の根幹に迫るやりとりが繰り広げられた先にある、シリーズで屈指の感動を誘う出航のシーンが今から待ち遠しい。3年の時を経て濃さを増したように、これからも濃度を高め、尾田栄一郎が生み出した『ONE PIECE』の世界を描き続けてくれるだろう。(文=タニグチリウイチ)