24時間通報止まず「対応力を超えた」…極限の中「コールトリアージ」に無力感 熊本市消防局 “助け続けるための変化” 【熊本地震10年】
「対応力を超える災害」その時、指令室は
熊本地震の発生から4月で10年です。
観測史上初めて2度の震度7を記録したあの地震で、被災者が助けを求めた先でも未曾有の事態が起きていました。
一人でも多くの命を守るために。消防の記憶と教訓です。
熊本市消防局 情報司令課 作田悦也 副課長「我々、消防の対応力を超える災害だった」
2016年4月の熊本地震では、県内で8600棟の建物が全壊し、死者と負傷者は合わせて2800人を超えました。
熊本市消防局は、熊本市と益城町、西原村を管轄し、指令管制室では通常、1日に約140件の119番通報を受けています。
助けを求める声を聞き、現場の隊員に指示を出す。救助や救急の要となるこの場所も、10年前に被災しました。
震災直後の指令管制室は…「24時間鳴りやまない音」
作田 副課長「天井からの落下物。粉塵が舞ったような感じで真っ白くなったことを記憶しています」
情報司令課の作田悦也 副課長はあの日、管制室の職員に指示を出す指令管制長を務めていました。
作田 副課長「指令管制員に対して指示を出したいんですけど、指示の声が通らないような状況」
作田 副課長「24時間ずっと音が鳴っている。音が鳴りやむ暇がない」
4月14日に発生した前震の直後、90分間で入ってきた通報は約320件。1日に受ける件数の2倍以上の通報が、わずか90分の間に集中したのです。
あいまいな基準の中 “断る”という決断
その結果、作田さんたちが直面したのは「助けを求める全ての声には応えられない」という受け入れがたい現実でした。
作田 副課長「断るしかない。救急車、消防車が出尽くしている。でも鳴りやまぬ通報が入ってくる」
そうした極限の状態で選択したのが『コールトリアージ』。
通報に優先順位を決め対応することです。
しかし、当時はまだ通報を選別する基準が明確には定められていませんでした。
作田 副課長「お断りをせざるを得なかったという部分に関しては、大きな葛藤、無力感。やはり、そういう局面に立たされたということが本当に辛かったですね」
教訓生かした「コールトリアージ」「持ち運べる指令システム」
熊本市消防局は、地震後に「コールトリアージ」の基準を設けました。
「どこをけがしたのか」「けがした人が歩けるか」「家族の有無」などによって緊急度を判断します。
熊本市消防局 情報司令課情報管理班 中田浩一主幹「119番通報をきちんと受けることができて、その状況から必要な消防力を、市民が必要とされている場所に向ける。よりスピーディーに的確にやっていけるシステムづくりと操作能力の向上を継続的に進めていきたい」
こう話すのは、システムの管理や更新業務を行う中田浩一主幹です。
さらに、地震で一時業務停止に陥りかねないほど被災した指令管制室を移転し、2020年に全国で初めて「持ち運びができる指令システム」を導入しました。
熊本市消防局 情報司令課情報管理班 中田浩一主幹「実際に119番を受ける建物が被災してしまったときに、場所を被災していない消防署に移して119番を継続して取れる状況を作り出す」
「繋がらない」「助けに行けない」という最悪の事態に陥らないために。熊本市消防局の10年を経た変化です。
「避難所どこ?」と119…情報発信を改善
地震の発生直後に対応できないほどの通報があったということですが、同時に消防を悩ませたのがこのような通報でした。
「この先の道路は通れるのか」
「今後も揺れるのか」
「どこに避難所があるのか」
避難所については、当時、熊本市が開設に関する情報を市民に公開していなかったということもありました。
そのため市は、現在ではホームページで避難所の情報を公開しています。これにより、119番通報を本来の役割に集中させることもねらいです。
また、熊本市消防局は「公助には限界がある」ことを認め、効果的な人命救助のために、次のようなことを求めています。
1.場所・状況・人数の簡潔な通報
2.出血時の圧迫・保温など応急手当を学ぶ
3.防災アプリやラジオなど複数の手段で情報を得る準備
これらを災害が起きる前から備えてほしいと話しています。
