収賄罪の小田原市部長、茶封筒の中身を問われ“甘~い”返答…剣道七段が脇の甘さ露呈【裁判傍聴記】
市役所の部長が建設会社関係者から商品券20万円分を受け取ったという、古典的で単純な収賄事件だ。収賄罪に問われた神奈川県小田原市の環境部長(当時)、H被告(59)に対する被告人質問が、横浜地裁で開かれた。
1989年に入庁し、約37年となるH被告。秘書室長などを経て2024年7月から環境部長の任にあった。贈賄側にあたるM建設の営業部長(当時)、E氏(62)=贈賄罪で起訴=とは約10年前に職務を通じて知り合った。H被告は、剣道七段という“凄腕”でもある。H被告が指導する道場にE氏の妻が通っていた縁で、E氏ともプライベートで親交を深めていったようだ。
「『剣道』というキーワードが、僕の人生の大半を占めてきた」。剣道の最高段位は八段で、七段はそれに次ぐものだ。段位について弁護人に問われたH被告は、「七段の取得は最速でも38歳くらいですが、それは警察官とか専門的に剣道に取り組んでいる人たち。(被告が)42歳で取得したのは、そうした方々を除けば早い方だと思います」。剣道に対する自信と誇りがうかがえる。
ただ、法廷にたたずむ被告の姿からは、「剣道」でイメージできるような気迫や剛健さはみられない。やつれて、疲れたような表情はやはり事件で“一本取られた”影響だろうか。
H被告は2度にわたり商品券を受け取ったとして起訴された。1度目は24年8月。市役所の執務室でE氏から1000円の商品券100枚が入った茶封筒を受け取った。2度目は25年2月。この時も同様に1000円100枚で、ともに後日、換金して自宅の修繕費などに費消した。
1度目はM建設が請け負った住宅新築工事に絡む下水道の延伸、2度目はM建設社長の息子が取得予定の土地近くにあるゴミ集積場の移動について、E氏がH被告に相談。H被告が担当部局に働きかけて延伸や移動を実現させたことへの謝礼の趣旨だとされる。
「封筒を差し出されて、何度か断ったのですが、執ように受け取りを懇願されて、『個人的にお世話になっているから』と言われて、受け取ってしまいました」。H被告は1度目の受け渡し状況について、こう説明した。
「忙しくもあり、その週末に剣道の八段審査もあって追い詰められて」いたため、すぐには封筒の中身を確認することなく机の引き出しにしまった。昇段審査を終えて中身を確認したら商品券だったため「まずいな、と感じて」返却しようと思ったものの、「日が経ってしまっていて、今から(返すの)では申し訳ない。Eさんを裏切るような形になってもいけない」と考えて、商品券は約1か月後に金券ショップで換金した――というのが法廷でのH被告の言い分だ。
商品券100枚が入った封筒は、厚さ1センチほどだった。検察官が追及する。
検察官「最初、茶封筒の中身は何だと思ったんですか」
H被告「その時に推測したことはないです」
検察官「お札とか券とかを容易に想像できると思うのですが」
H被告「券だろう、という発想にはなりませんでした」
検察官「なぜ中身をすぐに確認しなかったのですか」
H被告「なぜ?……なぜ……まあ、本人の目の前で開けることは失礼かなと。なぜ、と言われても理由はないのですが、忙しさと剣道の昇段試験が控えていましたので」
検察官「お札や券でないとしたら、どういうものが考えられますか」
H被告「可能性の一つとしては、簡単なお菓子ということもあるかと…」
「お菓子」という意外な回答にピクッと反応した検察官は、上半身をさらに前のめりにして「厚さ1センチのお菓子って、どういうものですか」と問いかけた。H被告は次のように応じた。
「バレンタインデーでもらうようなものかな、と」
こんなやり取りを聞いていた裁判官は、検察官による被告人質問が終わると自らH被告に問いただした。
裁判官「職場の人からお菓子とかもらったことあります?」
H被告「あります」
裁判官「どんな形でもらいますか」
H被告「まあ箱もありますし、中のものを(個々に)渡す形ですとか」
裁判官「茶封筒でもらったことあります?」
H被告「はい」
裁判官「何を」
H被告「バレンタインのチョコレートですとか」
この“甘い”答えに、裁判官は明らかに引きつったような笑みを浮かべながら「エッ?小田原市役所ではバレンタインのチョコを茶封筒で渡すことがあるんですか」とたずねた。
H被告「市役所では使いまわしの封筒に入れて物を渡すようなことはありますので」
裁判官「フンフン、分かりました」
あくまでも現金や商品券とは思わなかったとの苦しい弁解に終始したH被告。検察官や裁判官の“突き”を食らい続け、凄腕の面影は見られなかった。剣道については「もう子どもたちに『道』を指導する立場にない。やめようと思っています」。最高段位まであと一歩、職場でも役職定年まであと1年のところで、道を踏み外してしまった。判決公判は3月17日に開かれる予定。
文/篠田哉 内外タイムス
